Jリーグ・ヴィッセル神戸は、次期社長にプロ野球楽天の球団社長である立花陽三氏(46)が就任すると発表した。立花社長は外資系証券会社勤務を経て、'12年8月から東北楽天ゴールデンイーグルスを運営する『株式会社楽天野球団』社長に就任。'15年3月からはJ1神戸を運営するクリムゾンフットボールクラブ(当時)の副会長も兼務していたが、今回の人事により、楽天と神戸、両球団の社長を兼任することになる。
「今回の人事から透けて見えるのが、2020年東京五輪・パラリンピック後の“新国立競技場”の獲得です。楽天グループの総帥である三木谷氏は、ここにJ1神戸の本拠地を移すとともに、世界的なビッグクラブを設立する戦略を立てていると言われます。そこで、懐刀である立花氏の投入を決めたのです」(経済誌アナリスト)
スポーツ庁は7月26日、東京五輪・パラリンピック後の新国立競技場について、大会後はサッカー・ラグビーの球技専用競技場にする方針を決めた。
これにより、読売グループが狙っていた巨人の新国立競技場への本拠地移転計画は消滅。「築地は守る、豊洲は生かす」という小池百合子都知事の動向を探りながら、築地に新ジャイアンツ球場を建設する構想に方向転換した。
ともあれ、新国立競技場は国が所有権を持ったまま、民間企業に運営を委託する「コンセッション方式」が有力で、今後1〜2年かけて事業者を選ぶこととなったわけだ。その新国立競技場は五輪後、陸上トラックを残さずに観客席を増設。収容人数を6万8000人から8万人に増やす。このキャパシティーを満たすことができるのは、サッカーの日本代表戦と、J1の有力クラブしかない。
サッカーファンの間では、東京FCや鹿島アントラーズなどが候補に挙がっているが、いずれも平均観客数は2万人程度('16年)。新国立競技場を埋めるには力不足で、世界的なビッグクラブとはとても言い難い。
平均観客数3万6000人('16年)と断トツの人気を誇る浦和には埼玉スタジアム、かつて一時代を築いた横浜F・マリノスには日産スタジアムがあり、どちらも移転は至難の業だ。
そこで、一気に浮上してきたのが、資金力に長けた三木谷氏がオーナーを務める神戸なのだ。
楽天は、今季から4年総額約320億円という破格の条件でバルセロナの胸スポンサーとして契約。世界的チームのユニホームに“RAKUTEN”の文字が入ることになった。あのメッシやネイマールを招いて派手は契約会見を開き、その模様は欧州はおろか世界中で話題になっている。
「楽天は今夏に元ドイツ代表のスター選手、FWポドルスキを3年総額6億円で神戸に入団させました。さらに8月11日には、成績不振を理由にネルシーニョ監督との契約を解除し、世界的名監督を招へいする方針を打ち出しています。今や三木谷氏は、ロシアの石油王から英プレミアリーグの名門、チェルシーのオーナーになり、世界有数のクラブに育て上げたロマン・アブラモッチ氏のような存在になりつつあるのです」(スポーツ紙デスク)
新国立競技場を本拠地とする新しいクラブを作るとなると、J1昇格まで最短でも数年かかるため、現実的とは言い難い。その点、既存クラブの本拠地移転ならば手っ取り早い。三木谷氏がプロ野球に続いて、サッカーでも読売グループを打ち負かす日はすぐそこまで来ているのだ。
前記した立花氏の社長就任には、東北楽天を含めたクラブ組織としての『RAKUTEN』の株式上場の計画が秘められているという。日本では初の試みだが、欧米では珍しくない。そこには、あのホリエモンこと堀江貴文氏が一枚噛んでいるという情報もあり、兜町雀も興味津々だ。
「'15年8月にJリーグのアドバイザーに就いた堀江氏は、すぐさま東京に世界的なビッグクラブを作る構想をぶち上げました。これを高く評価したのが三木谷氏。脳裏にあったのは、株式上場です。堀江氏の旧友でもある立花氏はゴールドマン・サックス、メリルリンチ日本証券などで実績を残した証券のプロ。ファンに株主になってもらえば、経営が安定するし、集客にもつながります。2年前から描き始めた構想が、いよいよ実現へ向けて動き出したということです」(J1クラブ首脳)
新国立競技場への本拠地移転となれば、バルセロナの日本ツアーが毎年恒例となるはずだ。さらに、来年は独ドルトムントに所属する香川真司や、メキシコ・CFパチューカへ移籍した本田圭佑ら現日本代表の主軸獲得にも乗り出すという。
夢は膨らむばかりというわけだ。