地下戦士養成基地という色合いも持つ会場である、ここCORE STADIUMにおいて、とりわけこれまで強烈な試練を課せられてきたのが“求道妖怪”入道と“タックル将校”竹嶋健史。昨年11月15日の『EXIT-58 CORE:R』で入道と竹嶋は、両者疲労困憊になりながら異例のシングルマッチ3連戦を強制された。入道に至っては、一昨年にシングルマッチ五人掛けというとんでもない苦行まで強いられ、その闘いは地下フリークたちの間で今も語り草になり、その都度、二人の逞しさは増してきている。
なぜ彼ら二人に、ここまで試練が課せられ続けるのか。もし“地下の女神”なるものが存在するならば、彼らは特別に愛されているということなのか? そうだとしても、これはあまりにも激しすぎる愛情表現な気もするが…。
いつものように、第1試合にコールされる竹嶋。続いてリングに招かれたのは紅闘志也、富豪2夢路、高岩竜一…。竹嶋以外は言わずと知れた“地下の顔”が居並ぶ。しかしタッグ戦と思いきや、赤コーナーに三人が並び、青コーナーには竹嶋ただ一人。ま、まさか…このメンバーでハンディキャップマッチ!? CORE STADIUMに静かなどよめき、そしてこれから始まらんとする残酷ショーの予感に、重々しい緊張感が走る。
かくして、史上最大のハンディを背負ったハンディキャップマッチが幕を開けた。地下のトップ三人の力をもってすれば、若い竹嶋を瞬殺することなど朝飯前だったはずだ。
ところが彼らは、竹嶋をすぐに“解放”することを許さず、グラウンド戦を中心に竹嶋を三人がかりでじっくりと料理する道を選んだ。得意のタックルとグラウンドで何度も必死に食い下がる竹嶋だったが、トップ三人衆の責め苦は20分近く続き、最後は高岩のデスバレーボムと逆片エビ固めの殺人コンボに沈められた。
続く第2試合、青コーナーに導かれたのは入道。しかし今回もまた、赤コーナーに陣取るのは高岩、矢野啓太、日龍の三人…。竹嶋に続き、入道も一対三のハンディキャップマッチを強いられる。この試合でも高岩、矢野、日龍は、第1試合同様に入道を時間かけてサディスティックに責め立てる。特に地下世界でも有数のグラウンドテクニックを誇る三人の責めはねちっこく重々しく、そして果てしなく辛く苦しい。最後は世界最大の仏教国タイ遠征で仏の力を一身に宿し、現地で大ブレイクしまくった日龍が、「日龍スリーパー」で入道を沈めた。
そして入道と竹嶋に、最後の試練が課せられる。気まぐれで残酷な地下の女神は、最後はお前ら二人で決着をつけろとばかりに、すでに肉体も精神も限界を超えた入道と竹嶋に、シングル戦を強要したのだ。しかもこの試合は、入道が身を削って勝ち取り、守り抜いてきた地下日本阿吽選手権「阿の帯」が懸かるタイトルマッチとなる。
高岩の掌底(!)により口の中をザックリ切り、鮮血を噴き出している入道が歯を食いしばりながら、阿の帯を肩に掛けてリングインする。入道はすでにボロ雑巾のように消耗しているが、王者たる者、常に誇りを胸に抱いていなければならない。息も絶え絶えながら竹嶋をきっと睨みつける姿に、その矜持が窺える。
しかしながら、この日の試合内容もさることながら、入道の心身もすでに異常事態に突入していた。竹嶋の突進をかわしながら、過呼吸に陥ったかのように、大きな声をあげながら切れ切れの呼吸を繰り返す入道。小柄で機動性に優れた竹嶋の肉体に比べ、入道はスタミナで彼に大きく劣る弱点をさらけ出してしまったのだ。
死力を尽くすどころか、死力を超えた状態で闘いを強制される二人の闘いは、一種異様なものとなった。取り憑かれたように入道に頭突きを繰り返し、自らを大流血に追い込んでしまう竹嶋。入道の口から噴き出す鮮血と、竹嶋の額からの流血が混ざり合い、両者の上半身はあっという間に赤黒い血液にまみれた。それにしても自らを手負いに追い込む竹嶋の闘いぶり、これこそが彼が身をもって学んできた“地下魂”の回答のひとつだったのか。
息も絶え絶えの入道は、一瞬のチャンスに懸けていた。試合開始わずか2分過ぎ、竹嶋に覆い被さった入道は、竹嶋の上半身をネジ切らんばかりの渾身のキャメルクラッチ。竹嶋がたまらずタップアウトし、入道が阿の帯を文字通りに死守した。
試合後、リング上に長い時間倒れ込んだままの入道と竹嶋。漆黒のマットは、両者が流したおびただしい血に染まっていた。そして入道のもとに、ふたたび還ってきた阿の帯。王者の帯は、二人の全身から滴る血によって赤く染まって、新しい命を吹き込まれたようにも見えた。そして帯に刻まれた「阿」の面は、血に染まりながらなおも厳しく入道を睨みつけるのだった…。
入道と竹嶋健史のあまりに長い一日は、こうして幕を閉じた。
この史上最長の一日を体験したことに対して、彼らがどのような成長を見せるかは、今後のファイトに懸かっている。
◆地下プロレス『EXIT-71 CORE:V』
2011年4月10日(日)18:00開始
会場:東京・新宿歌舞伎町二丁目「CORE STADIUM」
<第1試合>
紅闘志也、富豪2夢路、○高岩竜一(18分17秒 逆片エビ固め)●竹嶋健史
<第2試合>
高岩竜一、矢野啓太、○日龍(14分11秒 日龍スリーパー)●入道
<模範演武>
PRIMAL、Ishtaria RIE
<メインイベント 地下日本阿吽選手権>
○[王者]入道(2分15秒 ラクダ固め)●[挑戦者]竹嶋健史
※入道が保持する「阿の帯」が懸けられる。
※王者・入道が防衛に成功。
※試合はすべて時間無制限一本勝負。KO、ギブアップのみで決着。
地下プロレス『EXIT』公式サイト
http://www7.plala.or.jp/EXIT/
梶原劇画で伝承された「地下プロレス」が、この日本に存在した! 闇の闘いを伝える『EXIT』とは何か!?
http://npn.co.jp/article/detail/97320773/
果てしなく続く「入道 vs 竹嶋」…地下の聖地CORE STADIUMに、また新たな伝説が加わった
http://npn.co.jp/article/detail/67554880/