選挙戦で「おわび」を余儀なくされる首相は本格的な遊説日程が組めない状況。25日に仙台市内のホテルで開かれる党宮城県連主催の政経セミナーで講演することが23日決まったが、市長選中のため街頭演説は行えず、一般の有権者を対象にした「第一声」は後日に譲ることになった。
首相周辺は自民党両院議員懇談会での“涙の訴え”が好感され「約50カ所から応援要請が来ている」と強調するが、党内では「反麻生で動いた議員の選挙区に応援に行き、票を減らして落選させればいい」(党幹部)などと際どい冗談も飛び交うのが実情。永田町関係者は「反麻生派の滑り込みセーフ(当選)だけは許せないはず。どこまで本気か分からないが、実行すれば歴史に残る“妨害工作”になるだろう」と指摘した。
確かに、反麻生派はさんざん首相をコケにしておきながら、最後は腰くだけに終わった。中川秀直元幹事長は首相に握手まで求めたほど。麻生降ろしを仕掛け、政権支持率を低落させた責任はきっちり取らせたい。その気持ちは分からないでもないが、首相にはこれ以上ない屈辱である。
選挙戦をめぐる自民、民主両党トップの動きは対照的だ。押せ押せムードの民主党、鳩山由紀夫代表は地方遊説で政権交代を訴える空中戦を展開。逆風に苦しむ麻生首相は街頭に立たず地道に業界団体回りを続けている。
鳩山氏は23日も埼玉県所沢市で街頭演説。「こんなに大勢の皆さんに期待をもってお集まりいただいている。この国の政治を変えようじゃありませんか」と精一杯の声を張り上げ、演説後は詰め掛けた聴衆の握手攻めにあった。
一方、首相は前日に続き、午前から都内の日本電機工業会や日本船主協会などを訪問。全国漁業協同組合連合会幹部との懇談では、原油高対策に取り組む考えを示し「浜の小さな一票一票が助けてくれるんだ」と支持を求めた。
鳩山氏は自身の政治資金収支報告書虚偽記載問題を抱えているとはいえ、衆院解散直前まで「麻生降ろし」の内紛を続ける自民党を横目に香川、徳島、沖縄、神奈川などを遊説。追い風を実感しながら今週後半も埼玉や大阪で支持を訴える。