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「伝説の漢(おとこ)」中野巽耀、ガッツワールドのリングで復活! UWF魂を植えつけられたSTYLE-E勢!

 「燃える 燃える 燃える 俺の心が 血と汗に染まった 白いマットに」
 劇場版『あしたのジョー2』主題歌が新木場に流れた瞬間、背筋がゾクゾクするのを感じた観客もいたことであろう。
 遂にあの漢がリングに帰ってきたのだ。

 漢の名は「中野巽耀」(なかの・たつあき)。中野龍雄のリングネームで第2次UWFからリングに上がり、新日本プロレスのマットでは船木優治(現・誠勝)や野上彰(現・AKIRA)と名勝負を展開。伝説となった内藤恒人との試合で見せた逆片エビ固め、通称「しゃちほこ固め」は今でも語り継がれている。UWFインターナショナル時代、ベイダーとの最初のシングルマッチを戦った中野、見事な玉砕を果たし更に「漢ぶり」を上げる事になる。

 あれからどれだけの月日が流れたのだろう。
 12月4日、ガッツワールドvol.44のリングに中野は姿を現した。「中野巽耀」のリングネームで。

 対するは田村潔司の遺伝子、STYLE-Eの田村和宏、そして9月にここ新木場でデビュー戦を行った那須晃太郎。奇しくもUWFの魂を受け継ぐ者同士が相対する事となった当日の第4試合。
 中野のパートナーとなったのはバンジー高田、高田と田村は以前STYLE-Eのリングで幾度と無く対戦しているものの、「会うのも2年振りじゃないですかね」と高田が語った通り、ここ最近は疎遠となってしまっていた。
 歴史はまた繰り返す。この4人が同じリングに上がる事は必然だったのではないだろうか。

 先発した高田と那須がおもむろに見合うと、両者共にコーナーに下がる。中野と田村がリングに入ってくると異様な緊張感が漂った。お互いに牽制のローキックを放つとグラウンドに。中野がキュッと田村の足首を捻った瞬間、田村の表情が一変する。必死になってロープに手を伸ばす田村、ポーカーフェースで極め続ける中野。中野は田村潔司の遺伝子を体で感じていたのだろうか。
 続いて那須が中野巽耀を体感する。那須は他団体の選手が認める程の無鉄砲さ。レジェンドである中野相手に真正面から向かっていく姿は、昔の中野の姿を思い浮かばせる。
 那須の無鉄砲さに中野はマウントからの掌底で出迎える。上手くコントロールして上になった那須、しかし中野はすぐに切り返して逆十字固め。もがくようにロープに足を伸ばした那須。
 下手をすれば「蛇に睨まれた蛙」になってしまう恐れがあった。しかし那須のハートはそんなやわなものではなかった。臆することなく中野に向かっていった那須、館内からも賞賛の声が上がっていた程。
 再び中野と田村和宏が相対する。田村は奇襲の飛びつき逆十字を狙うが、どっしりと腰を据えた中野の前に不完全に終わってしまう。逆に足を取った中野はアキレス腱固め。クラッチした腕を外して脱出を試みた田村だったが、再度グイッと絞り上げるとまた田村は表情が変わる。
 スタンドになり強烈な膝を田村のボディーに叩き込んだ中野は、高速&低空のブレーンバスターに切って取る。「頭から真っ逆さまに落ちてDDTを食らったようでした」とは試合後の田村。見ただけでも背筋が凍る程の落ち方であった。
 田村をマウント掌底で攻撃する中野、その背後を那須の低空ドロップキックが襲う! 「何て事をするんだ!」と解説のミスター雁之助が叫ぶ程恐ろしい事をやってのけた那須。
 その後も中野に対して意識を剥き出しにする那須。田村が腕固めに高田を捕らえた時、カットに入らせんとばかりに中野の前に立ちはだかった。高田から中野に交代すると那須はわき目も振らずにダッシュ! 張り手、キックをこれでもかとばかりにぶち込んでいく。しかし、涼しげなポーカーフェースで受け流していた中野の表情が一瞬変わった瞬間、那須の側頭部を捕らえるハイキックが炸裂! ガクッと崩れ落ちる那須。
 フラフラとロープを掴み立ち上がる那須に対し、中野は高速のジャーマン・スープレックス。立ち上がる那須の足にローキックを打ち込み、その足を掴むと逆片エビ固めで絞り上げる。その絞り方は半端じゃない。伝説の「しゃちほこ固め」が今、眼前に蘇ったのだ!!!
 こうなってしまってはさすがの無鉄砲・那須もなすすべが無い。レフェリーの稲葉稲三があわててストップをかける程危険な角度で絞り込まれてしまっては仕方が無い。

 勝利の後、中野は両手を広げ、余韻を楽しんでいるようであった。四方に向かい両手を挙げてアピールするその背中に「漢」の文字が浮かび上がっている気がした。
 「年寄り扱いするんじゃねぇ! 俺はまだ生きているぞ!」。伝説の漢は「伝説」の中だけで生き続けているのではなく、現世に生き続けている。漢を魅せる為に。
(Office S.A.D. 征木大智(まさき・だいち))

◆『ガッツワールドvol.44』
2010年12月4日(土)
会場:東京・新木場『新木場1st RING』(観客236人=満員)

<メインイベント GWC認定シングル選手権試合 60分1本勝負>
○〔挑戦者〕ダイスケ(20分14秒 体固め)●〔王者〕ガッツ石島
※スライディングD 初代王者が二度目の防衛に失敗、ダイスケが第二代王者となる。

<セミファイナル タッグマッチ 45分1本勝負>
竹田誠志【STYLE-E】&○吉野達彦(11分12秒 アスリートジャーマン)星野勘九郎【大日本プロレス】&●山本SAN

<第5試合 GWC認定6人タッグ次期挑戦者決定戦 60分1本勝負>
○清水基嗣&小川内潤&ベアー福田【SECRET BASE】(13分02秒 片エビ固め)●梁和平&CHANGO&アミーゴ鈴木
※メスリカンドライブ 清水&小川内&福田組が次期挑戦者に決定。

<第4試合 タッグマッチ 30分1本勝負>
○中野巽耀&バンジー高田(12分10秒 逆片エビ固め)田村和宏&●那須晃太郎【STYLE-E】

<第3試合 アイスリボン提供試合 タッグマッチ 20分1本勝負>
みなみ飛香&○真琴(12分54秒 片エビ固め)志田光&●松本都 ※コーナーからのローリング・セントーン

<第2試合 ストリートファイトタッグマッチ 30分1本勝負>
gosaku&○マスクドミステリー(10分15秒 体固め)円華&●角刈海坊主 ※ミステリー技

<第1試合 シングルマッチ 20分1本勝負>
○松崎和彦(8分56秒 片エビ固め)●山田太郎【666】 ※垂直落下式ブレーンバスター

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