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『隠密八百八町』第7話、江戸時代の習俗を反映する娯楽時代劇

 NHK土曜時代劇『隠密八百八町』の第3回「駆け込み人 孫七」が、2月19日に放送された。『隠密八百八町』は神谷又十郎(舘ひろし)を中心に結成された隠密組が悪事を暴く痛快時代劇である。今回は米倉家屋敷に駆け込んだ水野忠成(前田吟)の家来・池田孫七(ダンカン)の逃走を手助けする。

 史実でも大御所時代に権勢を振るった老中・水野がドラマでは黒幕的存在である。その水野の密談を聞いた池田を無事に逃がすことが隠密組の使命となる。勧善懲悪のストーリーとしては筋が通っているが、池田のキャラクターが異彩を放っている。
 暇を持て余した池田は趣味の絵描きにのめり込み、屋敷の物品を勝手に換金して絵筆や紙の購入資金にした。しかし、盗みが露見したために屋敷を逃げ出して、米倉家屋敷に駆け込んだ。当時は屋敷に駆け込んできた人がいたら、武士の体面としては匿わなければならなかった。
 屋敷に匿われたならば水野家としても踏み込めない。屋敷の外で監視し、屋敷から出てきたところを捕らえるしかない。娯楽時代劇ながら、江戸時代の習俗を反映している点は『隠密八百八町』の魅力である。時代劇と言えばチャンバラであるが、現実の江戸時代は世界史上稀に見る平和な時代であり、今回のような話はリアリティがある。
 池田の所業は現代で言えば横領犯であり、善悪で言えば悪である。しかし、本人はあっけらかんとしている。虐げられた善良な人々を助けるという勧善懲悪のパターンから少し外れている点がドラマを面白くしている。

 『隠密八百八町』では紅一点・おとき(釈由美子)の活躍も見どころの一つである。おときは逃走の手引きのために女中として屋敷に入り込む。おときと池田は絵の話題で盛り上がり、最後に池田は、おときの絵を描きたいと頼み込む。言葉にすると大したシーンではないが、池田の危なそうな性格と、釈の反応で妙に色っぽく感じられる。インターネット掲示板の実況スレッドではヌードモデルを連想する書き込みが続いたほどである。
 前作『隠密秘帖』で主人公の父・神谷庄左衛門に佐野善左衛門事件の調査を命じた米倉丹後守(秋野太作)も再登場したが、すっかり呆けており、笑いどころとなっている。それでも又十郎には反応し、又十郎に父親の謎を再認識させるきっかけとなった。このようにコミカルなシーンとシリアスなシーンがテンポよく進み、楽しめる内容になっている。
(林田力)

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