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「リアル・ミッション」気分は戦隊ヒーロー

 爆発地帯をバイクで駆け抜け、ヒラリと敵のパンチをかわす。そんなヒーローにあこがれて、子供のころはままごとセットよりも変身ベルトをねだる子だった本紙記者がカースタント、爆破、ワイヤーアクションなどあらゆるスタントを企画から行うスタントマン事務所・養成所の「オフィスワイルド」に突撃取材を敢行。スタントマンの卵たちとともにトレーニングに参加。体力勝負の記者稼業だが、運動不足に悩む今日このごろ。果たしてあこがれのヒーローへ一歩でも近づけたのか!?

 「ダイ・ダイ・ダイ・ダイ・ダイナマ〜ン♪」この印象的なフレーズ。記者と同じアラサー世代なら聞き覚えのある読者もいるのでは?
 1993年2月から84年1月まで、テレビ朝日系で放送されていたスーパー戦隊シリーズの「科学戦隊ダイナマン」のオープニング主題歌だ。子供のころ、この曲を歌いながらやたらめったら爆発シーンの多いオープニング映像を見て興奮していた記者…。と、前置きが長くなったが、この「オフィスワイルド」を設立したのが何を隠そうダイナマンのダイナイエローのスーツアクターを務めた柴原孝典さんなのだ。
 大好きだったヒーローがいるところで取材できるなんて、記者冥利(みょうり)に尽きるとテンションが上がりっぱなしになりつつ、今年4月に入ったばかりのスタントマンの卵さんたちが体育館で行っているというトレーニングに参加させてもらった。
 講師を務めてくれたのは角秀一さん。現役スタントマンとして、現在は某バラエティ番組のキャラクターのスーツアクターも務めている。「渋谷のど真ん中で自転車で車にひかれる」スタントが印象的だったという角先生に「体操経験などはなくても大丈夫。教えられたことを素直にできるタイプがいい」という心構えを聞き、トレーニング開始。

 まずストレッチから。近ごろまったく運動していないが、体だけは柔らかいので出だしは好調だ。そしてマット運動。基礎の前転から始まり、後転、倒立前転、側転、バク転など徐々に難易度が上がっていく。初っ端の前転で、連続4回転して立った瞬間に目が回ってまともに立って歩けない。正直これにはショックだった。好調だったのはストレッチだけとは何とも情けない。トホホ…。
 次はトランポリンを使い、素跳び(真っ直ぐ上に跳ぶ)から始め、跳んで背中から落ちるポセイドン(映画・ポセイドンアドベンチャーのシーンから取った名前らしい)、腹落ち、前宙返りとひたすら黙々と基礎的な動きを体に染み込ませていく。

 そのほとんどが受け身の所作。一見地味な動きも、マット運動のひとつは殴られた人が吹っ飛ぶシーンでよく見られる動きだし、受け身が取れなければ何も始まらないのがわかる。そういえばプロレス担当のとき、あるレスラーが「受け身が取れれば車にひかれても大丈夫」なんて言っていたっけ。何て無茶なと当時は思ったが、やはり受け身はすべての基本。これができないと華やかなアクションシーンがいまいち決まらないし、安全性も欠いてしまうのだ。
 「スタントは命にもかかわる仕事。プロとして監督の要望に応えられるものと無理なもの、その判別を自分でしなければならないし、危ないものは危ないとしっかりわかっていないとできない」という角先生の言葉が響く。
 迫力あるアクションシーンを支えるスタントマンやアクション俳優の仕事。CG全盛の最近でも、やはり生身の肉体が生み出す緊迫したスリル感は欠かせない要素だ。だが、決して表舞台で目立つ存在ではなく、「一人で現場に行って使い物になるまでには3年はかかる」という厳しい世界。
 ヒーローを縁の下でしっかり支える存在になるためには、地道なトレーニングが必要と身に染みて実感。努力の上に手に汗握るアクションシーンが生まれ、あこがれのヒーローは格好いい存在として私たちの前に現れてくれるのだ。

◎突撃後記
 2時間のトレーニングでへとへとになりながらも、なんとか取材終了。優しい角先生から「いい動きでした。合格。来週から来てもらえれば」とお褒めの言葉をいただき、ホクホクと帰路についたが、翌日はものすごい全身筋肉痛に。「でも次の日に来るってことは、まだまだ若いわ」なんて開き直るアラサー記者でした。
 柴原さんはバイクやカーアクションも自らこなした映画俳優のスティーブ・マックイーンにあこがれてスタントの世界に入ったそうで「皆で作り上げていく充実感や達成感が一番のこの仕事のやりがい」と話してくださった。現在も井筒和幸監督の最新作や某ビッググループのミュージックビデオ(秘密とのことで具体的に言えないのが残念)に出演するなど第一線で活躍中。あこがれのヒーローも48歳ですが、まだまだ十二分に格好良かったです。

◎夢追う新人たち
 この日、一緒にトレーニングをしたのは今年4〜7月に入った10代から20代前半の新人さんたちと、ヨーロッパで活動中のケフィ・アブリックさん。ケフィさんはウルトラマンゼノンとして外国人では初めてウルトラマンのスーツアクターを務めた。
 新人メンバーは紅一点の岩井佑夏さん。演技を学ぶ専門学校に行きながら、こちらにも通っている。「アクションも何でもできるマルチな女優さんになりたい」という。ジャッキー・チェンにあこがれ、将来はアクション監督になりたいという中島輝明クン、ヒーローやハリウッド映画が好きで体を動かす仕事がしたかったという近藤知行クン、映画や時代劇を見てスタントをやってみたいと思ったという内山大輔クンら10人が、互いにアドバイスしながら、仲間として、夢に向かって一心にトレーニングに励む日々だ。

◎問い合わせ
 オフィスワイルドでは一般・初心者からプロを目指す人まで、それぞれのペースに応じた指導を行うアクションスクールを開いている。アクション俳優研修生・スタントマン専門研修生の募集からジュニア体操教室などの活動も。女優の天海祐希も映画「黒の天使」の撮影前にここでアクション指導を受けたという。問い合わせは、ホームページ(http://www.studio-wild.com/)からもできる。

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