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甲子園ダークサイト情報2011年版(4) 「素質のある子は学生寮に入れろ」

 「ねえ、何で地元の高校に行かなかったの?」
 この時期になると、夏の甲子園大会で活躍したプロ野球選手にインタビューをする機会も増えてくる。その際、郷里を離れて地方の高校に進み、そこで甲子園出場を果たしたプロ野球選手に「地元の高校に進まなかった理由」を質問してみた。他意はない。特待生問題が表沙汰になる前は「他県から有望選手を集めなければ甲子園に行けない」くらいの風潮もあった。しかし、近年、都市部に生まれ、近隣に強豪校もあったのに、わざわざ地方の田舎町の高校に進む選手も目立ち始めた。ダルビッシュ有は大阪府の出身なのに宮城県の東北高校へ、兵庫県出身の坂本勇人は青森県の光星学院、田中将大も北海道苫小牧市へ…。
 ある選手は「その学校の校風、監督さんの考え方に共鳴したから」と答えてくれたが、本当だろうか。

 中学の硬式野球チームの指導者はこう説明する。「言葉は悪いけど、隔離ですよ」−−。
 どういうことかと言うと、将来、プロに進む選手はやはり中学時代から光っている。だが、『天才球児』である彼らは、本人にそのつもりがなくても、同級生たちをナメたところがある。努力しなくても、結果を残せるからで、練習で「全力疾走しろ」と怒られても、70パーセントくらいの力しか出さない。性格的にもヤンチャだから、遊び仲間も多い。
 そういう天才球児たちに努力と挫折を教え、「野球に専念せざるを得ない環境」を周囲が勧めるのだと言う。
 「遊び仲間のいない遠い地方に行かせ、寮生活をさせれば、野球に専念するしかありません。近隣の高校に通えば、帰宅途中で遊びまわるだろうし、それではせっかくの才能も錆び付いてしまう…。だから、地方の学生寮のある高校を勧めるんです」(中学指導者)

 『地方高校での寮生活』と『近隣の強豪校』のどちらかに決めるのは、本人である。高校側の引き抜きでもなければ、関係各位に金銭的なやり取りが発生していない点は強調しておきたい。
 一般論として、現代っ子は寮生活を嫌う。「自由がない」からだ。高校では野球と趣味を両立させたいと思う生徒の方が多い。しかし、「オマエはもっと上(のレベル)を目指すべきだ。プロに行ける素質を持っている」と中学指導者に言われたら、近隣の強豪校を選択したとしても、どんな高校生活を送るべきか、真剣に考えるはずだ。
 「球児たちは、高校指導者との相性みたいなもので学校を選んでいるように見受けられます。若いアニキ的な監督の下でやりたいと思うヤツもいれば、年長でも、分かりやすい指導をする監督を好むヤツもいます。あと、全日本大会メンバーで選ばれた際、仲間同士で申し合わせて学校を決める者もいます」(前出・同)
 高校野球ファンの大多数は、地元出身者のみで構成された高校に好感を持つ。そういう学校の方針を否定するつもりはないが、「将来は野球で生計を立てたい」と、親元を離れて行った球児も応援してあげたい。彼らには人生の明確な目標がある。練習に明け暮れている彼らと、コンビニの前でたむろしている高校生のどちらが充実した学園生活を送っているかは、答えるまでもないだろう。

 20代前半のプロ野球選手の母校を取材したことがある。起床時間はそれなりに早く、寮、教室、グラウンドを往復するだけで、テレビは寮の居間で限られた時間のみ。野球以外の日課といえば、勉強、メシ、洗濯、仲間たちとのお喋り。会話は当然、自ずと野球のことが中心になる。外出できたとしても、コンビニまで2キロ以上歩かなければならない。長い人生のなかでこういう3年間があってもいいのかもしれないが、彼らがそれ相応の覚悟を決めて地方に出向いたのは間違いなさそうだ。(スポーツライター・飯山満)

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