プロ野球界では03年12月に「プロ野球暴力団等排除対策協議会」を発足させている。悪質な応援団等を通して球界に接近する暴力団を排除するため12球団、球場、警察庁、警視庁、日弁連の代表が集まり、「暴力団等排除宣言」を採択。暴力団絡みの悪質な応援団を球場に入れないようにしている。
さらには毎年、キャンプ終了後の3月初めに新人選手研修会を開き、その一貫として警察関係者から暴力団対策を語ってもらっている。が、親方の維持席の暴力団への横流し事件、大関・琴光喜の野球賭博事件など今回の相撲界の暴力団絡みの不祥事は、熊崎顧問が緊急で注意を促したように、決して対岸の火事ではない。
1969年から1971年にかけてプロ野球界を揺るがした八百長事件、いわゆる黒い霧事件は、消し去ることのできないものだ。永久追放処分を受けた元西鉄のエースがようやく復権したのは数年前のことだ。それなのに、八百長疑惑の選手は後を絶たない。
球界の活躍選手など、チーム内から疑惑をもたれた選手は少なくないのが現実だ。「あんないいピッチングをしていて、いきなり大量点を奪われるほど打たれるのはおかしい。絶対にやっている」と怒った監督が、そのエースを抑えに起用したりした。「いくらなんでも抑えなら、見え見えのことはやれないだろう」と。
そのものズバリの八百長疑惑までいかなくても、暴力団関係者との黒い交友関係疑惑を持たれている球界OBやユニホーム組もいる。監督候補に何度か名前が挙がりながら、いまだに実現していない球界OBに対して球界関係者はこう言い放つ。「誰が見ても堅気に見えない、その筋の人と平気でゴルフに行くような神経では監督にはなれっこないよ。どこの球団だって最後は尻込みするだろう」と。
現在ユニホームを着ている、ある球団のコーチは数年前のキャンプにその筋の人と一目でわかる人物を連れてきて一騒動。「お前はいったい何を考えているんだ!」と、当時の監督から一喝された事件もある。そんな危ない人物を今でもコーチにしている球団の不見識は非難されてもしようがないだろう。
さらには、ギャンブル好きが高じて、借金まみれになり、球界から追われ、暴力団に身を転じた例も少なくない。野球界と暴力団との関係は、黒い霧事件以降、表面的には目立たなくなっているが、水面下では完全に切れているわけではない。だからこそ「プロ野球暴力団等排除対策委員会」が必要だとも言える。
12球団代表が熊崎コミッショナー顧問の警鐘を右から左へ聞き流したら大変なことになる。野球界にとって、暴力団絡みの不祥事で揺れる相撲界は、対岸の火事どころではない。すぐに飛び火しかねない恐れすらあるのだから。