たとえ与党であっても、失政は失政としてマスコミが報道すべきではないだろうか。日頃、国民の皆さんに「マスゴミ」と呼ばれお叱りを受けている我々メディア側の人間が、いまこそ“宮崎県で起きている事実”を報道すべきである。“ゴミにはゴミなりの良心”というものがあるはずである。今ここで闘わずして、マスコミ人といえるのか。
宮崎県の口蹄疫報道では、数々の国民感情に訴えるようなシーンが、番組やメディアによってはカットされている。東国原英夫知事の涙声の会見や、プロゴルファー横峰さくらによる1200万円の賞金寄付発言などを、お上のご威光を恐れて流さない媒体が幾つかある。
確かに、メディア系の企業に勤務する人たちも、組織の一員たる会社員であり、及び腰になるのはわかる。政治家に睨まれて、自社の上層部に電話でもしたら、昇進や査定に悪影響を及ぼすのかもしれない。
だが、“事なかれ主義で無難で生きたい”と思うなら、表現や報道の世界で生きるのを辞めればよいのだ。曲がりなりにも情報発信ができる立場の者ならば、この国難に立ち上がり声をあげるべきではないか。今や口蹄疫問題は、個人や企業の支持政党や理念といった、党派・派閥などは関係がない大問題となっている。日本人として、この国の畜産を守るために、真実の報道をすべきである。筆者のことを「オカルト作家風情が」と笑う暇があるならば、己のできることをやるべきだ。
民主党政権が、韓国産豚や韓国産牛の輸入を解禁した途端にこの始末である。しかも、宮崎県と自民党議員が「種牛だけでも特例措置で避難させてほしい」と、5月の上旬に要請を出したのもかかわらず、赤松農水大臣が許可を出さなかったため、結局種牛の避難が遅れ、種牛さえも処分の対象とされている。これでは、日本の和牛は壊滅状態に追い込まれる。このまま宮崎県だけで収まるとは思えないのだ。
一方で2007年に、宮崎県畜産試験場から、和牛の品種改良に使う冷凍精液の入った容器143本が盗まれていたことが明らかになった。これは何を意味するのか。
あくまで仮定の話と断っておくが、日本の畜産業界が壊滅状態となった時、どこぞの国から“和牛そっくりな牛”が日本に向けて輸出されるとしたら、大問題である。この口蹄疫問題こそ、マスコミの姿勢が問われる正念場である。各社にいるはずの“良心”の決起に期待したい。
(山口敏太郎)