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〈企業・経済深層レポート〉パソナグループが本社機能を移転!

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提供:週刊実話

 このほど人材派遣大手の「パソナグループ」が、本社機能を東京都千代田区から兵庫県の淡路島に移転すると発表し、各方面に大きな波紋を広げている。

 昨今、本社機能を大都会から地方に移転する動きは、パソナに限ったことではない。サービス業や通信業をはじめ、各業種で活発化している。しかし、これらの動きが真の「地方創生」を進展させる呼び水となるかは、まだ定かではない。

 まずはパソナの本社移転について、大手紙の経済部記者が解説してくれた。

「パソナは4年後の2024年までに、本社機能を兵庫県淡路島に移転する。経営企画や人事、広報など管理部門の1800人のうち、1200人を移住させ、現地で業務を推進するという驚きの計画だが、主要幹部による経営会議なども淡路島で行うという」

 なぜ、淡路島なのか。それはグループ創業者にして、現在も代表を務める南部靖之氏が、淡路島とは目と鼻の先の兵庫県神戸市出身であることが大きい。

「これまでもパソナは淡路島を拠点に、高収入を得ることが可能な農業事業や東京ドーム28個分の規模を持つ体験型アニメパーク『ニジゲンノモリ』など、新規事業を展開してきた。コロナ禍を経て、さらに地方創生を活発化させようという意図でしょう」(同)

 パソナと言えば、かつて政権中枢にいた竹中平蔵氏を会長に戴く企業としても知られている。それだけに、国の政策推進にも陰となり日向となり参画し、大きな役割を果たしてきた。国が進める「地方創生事業」でも、積極的に旗振り役を務め、例えば、京都府京丹後市や岡山県久米南町などでは、「道の駅」の運営に携わり成果を収めている。
「新型コロナウイルスの感染拡大防止策として、多くの企業がテレワークを実施し、在宅勤務が一気に浸透した。テレワークで遠隔業務がスムーズに行われるのであれば、地方へ本社機能を移しても支障がないと判断し、東京から約600キロ離れた淡路島への本社移転を決断したようです」(同)

 本社機能を地方に移転する動きは、パソナだけではない。世界の紅茶や緑茶を扱う専門店の「ルピシア」は、本社を現在の東京都渋谷区から北海道のニセコ町へ移転することを決めた。

 経営コンサルタントが分析する。

「ニセコをグループ全体で100人規模の拠点とする計画で、ルピシアは以前からニセコに食品工場があったため、本社の移転先となったようです。国際的に知名度がある同地に移転することで、グローバル企業を目指す方向でしょう」

 東京都千代田区に本社がある情報サービス会社「インフォメーション・ディベロプメント」も、10月から本社機能の一部を山陰事業部(鳥取県米子市)に移転する。移転の理由は、自然災害が比較的少なく、新型コロナウイルスの感染者も少ないことで、システムの管理、運営業務などはまったく支障がないという。

 いずれにしても本社機能の地方移転が活発化する背景には、前述のようにコロナ禍でのテレワークの浸透がある。また、大規模災害への危機感から、企業間ではコロナ以前より、本社の地方移転でリスクを分散する動きが出ていた。

 2020年8月時点で、東京都の人口総数は1399万人。しかも、この20年間で約200万人も人口が増えている。東京より面積が広い鳥取県は、人口わずか55万人というから、いかに東京に一極集中が進んでいるかが分かるだろう。

 政府の地震調査委員会が、今後30年以内に70%の確立で起きると予想している首都直下地震の被害は、死者2万3000人規模、61万棟の建物が全壊または焼失、経済損失は97兆円と推計され、これまでも首都壊滅(=日本クライシス)と警告されてきた。

 また、帝国データバンクの調査によると、’19年に東京から地方に本社機能を移転した企業は629社で、転入した580社を上回っている。実は2016年から4年連続で「転出」が増えており、地方移転の気運が高まっているのがうかがえる。

「しかし、これらの転出も東京近郊がほとんどで、東京から遠く離れた地方に完全移転という動きは鈍かった」(経済アナリスト)

 今後はテレワーク容認の世論に押され、本格的な本社の地方移転が一気に進むのだろうか――。

 その気配はある。4月の緊急事態宣言後、テレワークの実態調査(パーソル総合研究所/約2万5000人調査)によれば、正社員のテレワーク実施率は東京では49・1%と半数近くにのぼっている。

「このデータを見ると、今や多くの企業においてテレワークが可能である。あとは資金調達や人材確保の面で、「脱東京」のデメリットがなくなることが課題だが、実際にそれも解消されつつある。高速ITインフラが全国津々浦々まで整備されれば、地方移転は加速するでしょう」(同)

 グループ全体で8000人近い人材を雇用するパソナの本社移転が、具体的にどう進められているか、大いに注目されるところだ。

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