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森永卓郎の「経済“千夜一夜"物語」 ★すでに新たなバブルに突入

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提供:週刊実話

 5月8日に4月分のアメリカの雇用統計が発表された。景気動向を反映するとされる非農業雇用者数は、前月比2050万人減で、世界恐慌以降で最大の落ち込みとなった。さらに失業率も3月の4.4%から4月は14・7%となった。これまで戦後最悪だった1982年11月の10・8%を大きく上回って、戦後最悪を更新した。リーマン・ショック後の2009年10月でも失業率は10・0%だったから、今回のコロナショックは、リーマン・ショックよりもはるかに大きな衝撃を経済に与えたと言える。トランプ大統領は、新型コロナ対策で300兆円もの財政出動を実施したが、焼け石に水だった。

 ところが、5月8日のニューヨークダウは、前日比455ドルも上昇して、2万4331ドルになったのだ。ノーベル経済学賞を受賞したシラー教授の開発したシラーPERが25倍を一定期間超え続けると、バブルが崩壊するというのがこれまでの経験則だ。シラーPER25倍は、ニューヨークダウに当てはめると2万3000ドルになる。米国の株価はすでに新たなバブルに突入したことになる。

 リーマン・ショックの際は、’08年9月の1万1790ドルから、半年後の’09年3月に6470ドルまで、45%も下げた。だから私は、コロナショックで半額くらいには株価が下がるだろうと予測していた。ところが今回は2月の2万9569ドルから、翌月には1万8218ドルへと38%下げた後、5月には底値から34%も上昇したのだ。正直言って、私はこの戻しをまったく予測していなかった。

 実は、株高の揺り戻しは日本も同じだ。1月の2万4116円(日経平均)の高値から3月には1万6358円へと32%下落したが、5月8日にはその底値から23%値を戻している。

 もちろん、日本経済も最悪の状態だ。そもそも昨年10月の消費税率引き上げで10〜12月期のGDPが年率7.1%下落したことに加えて、今年1〜3月期は大和総研の見通しで年率5.8%下落、4〜6月期は、5月3日に産経新聞が発表したエコノミスト予測の平均で21・8%のマイナスとなっている。これらが正しいとすると、現在、日本のGDPは1年前よりも9.0%減っていることになる。日本のGDPが最も減ったのは、’09年のマイナス5.4%だから、いまの日本経済は空前の危機に立っていることは間違いないのだ。

 一体、何が起きているのか。表面的には、株価は半年後の景気を織り込むから、投資家が半年後のV字回復を織り込んでいるのだと言えるだろう。ただ、本質は2月のバブル崩壊で痛手を負った投資家が、損失を取り返そうと、マネーゲームを繰り返しているというのが実態なのではないか。

 ただ、リーマン・ショック後は、中国が10年間で500兆元(8000兆円)にのぼる莫大な固定資本投資を行って世界経済を回復させたのだが、今回、その力が中国にはない。だから、私は今後の世界経済と日本経済が二番底に向かうのではないかと考えている。どんなバブルも実体経済を完全に無視することはできないからだ。

 コロナショックを、バブルを繰り返すことで経済を繁栄させる仕組みを見直すきっかけにしなければ、世界が払った大きな犠牲は報われないだろう。

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