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本好きのリビドー

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提供:週刊実話

悦楽の1冊『戦後最大の偽書事件「東日流外三郡誌」』斉藤光政 集英社文庫 800円(本体価格)

★新たな考察を加えた迫真ルポ

『魏志倭人伝』をはじめ諸史料を丹念に読み解き、“邪馬台国”ではなく“邪馬一国”の存在を説いた上で、近畿天皇家とは全く別個の王朝が博多湾岸を中心とした古代の九州に栄華を誇った…と唱える故・古田武彦教授の「多元史観」は、通説を大きく打破するものと70年代から80年代にかけて歴史学界のみならず多方面に強烈な反響を呼んだ。

 確か作家の小松左京やタレントの上岡龍太郎も当時ファンを公言していたはずで、かくいう筆者も『失われた九州王朝』『盗まれた神話』などで展開される明晰な論理に推理小説以上の面白味を覚えて興奮させられたクチ。

 その古田教授がやがてぶち当たっ(てしまっ)たのこそ、『東日流外三郡誌』だった。

 昭和20年代に青森・五所川原の個人宅で突如“発見”され、原本は江戸時代に先祖が書写したと称する厖大なその古文書の群れが語る内容によれば、大和朝廷による征服の遥か以前に東北蝦夷の地に王朝が実在し、福澤諭吉『学問のすすめ』冒頭の名文句“天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず”も、なんとこの文書からのパクリという衝撃的なもの。

 まこと真実なら日本史を一から書き変えねばならぬところだが、専門家の鑑定で、これが戦後にでっちあげられた偽書、しかもかなりお粗末な出来の代物であることが90年代に入り次々と明らかになってゆく。本書は地元紙「東奥日報」の記者だった著者がある裁判の取材をきっかけに、遂には「外三郡誌」真贋論争の深みへどっぷりと巻き込まれる過程(擁護派=本物と断じる古田教授との対決も含む)をスリル満点に綴る傑作ドキュメント。古田ファンには苦すぎる結末が待っているが、この良薬は心して口にせずばなるまい。
(黒椿椿十郎/文芸評論家)

【昇天の1冊】

 かつて少年誌などに連載されていた人気漫画には、現在は読むことができないものも少なくない。実話読者になじみある漫画としては『週刊少年ジャンプ』に連載されていた『ハレンチ学園』(永井豪)がエロ描写を大幅に削減された状態で、また『私立極道高校』(宮下あきら)は不祥事によって全41話中31話分が単行本化されず、流通している。

 これらは人権団体によるクレームや、または出版社の自主規制などにより、その一部が単行本に未収録となっているためだ。そうした封印され、“存在しなかったこと”になっている回や描写のある漫画全91作を取り上げ、「何が問題となったか?」を解説したのが『封印漫画大全』(鉄人社/750円+税)である。

 驚くのは、国民的漫画といわれた『こち亀』にも、単行本に所収できなかった回がある。そもそも『こち亀』は勤務中のお巡りさんが酒を飲む、キャンブルに興じる、拳銃をブッ放す破天荒な内容。現在であればとても連載できる内容ではなかったと、この本の著者・坂茂樹氏は指摘する。

 他にも『ブラック・ジャック』(手塚治虫)、『ゴルゴ13』(さいとう・たかを)といった名作にも、お蔵入りした回があるらしい。一方で、若かりし頃に股間を熱くさせてくれたエロ劇画誌の雄、ダーティ・松本の過激描写などは、今や完全に社会から抹殺されている。

「見るな!」と言われたら、なおさら見たくなるのが人の性。漫画の「裏面史」ともいえる本書、一気に読破できて面白い。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

【話題の1冊】著者インタビュー 山之内幸夫
山口組の平成史 ちくま新書 820円(本体価格)

★組の組織形態が_どう変わろうと存続する

――30年間続いた平成時代ですが、山口組はどのような変遷を辿ってきたのでしょうか?
山之内 平成の元号における山口組は、始まりがヤクザの天国、終わりは地獄と言えるほど環境が変わっています。平成元年に五代目山口組が誕生し、山一抗争の完全勝利とバブル経済が史上空前のヤクザ爛熟期をもたらしました。でも、この反動もまた強烈なもので、国は平成3年に暴対法を制定し、彼らのシノギを締め上げたのです。
 司六代目以降の後半は、日本経済の停滞と当局の取り締まり、加えて暴排条例の制定による大嵐の中、山口組は大分裂します。組員数は減り、体力を落とす中、平成の最後はヤクザでは食っていけない、生きていけないというほど環境が悪化しています。

――神戸山口組の分裂をどのように見ていますか?
山之内 急激な中央集権化と、五代目時代に肥大した山健組の弱体化に同調できなかった勢力が、組を割って出たと思います。背景には日本経済の減退と、ヤクザ社会のシノギ枯渇があります。分裂以外に手段がなかったのかというと難しいですが、取り返しがつかないことは間違いありません。新組織の解散消滅以外に終わりはないでしょう。

――髙山若頭の出所で山口組を取り巻く環境は、風雲急を告げる情勢ですね。
山之内 特定抗争指定が発動されなければ暴力の行使が続いたと思いますが、さすがに水を刺された格好です。六代目からは切り崩しという手段に戻りますが、それより神戸山口組の瓦解が考えられます。ヤクザ組織は組員の奉仕と犠牲で成り立っていますが、将来に展望がなく、現状が苦しいだけでは組織の求心力がなくなるでしょう。今、ヤクザ社会を取り巻く環境は最悪です。先が見えるのに時間はかからないでしょうね。

――令和時代の山口組はどうなるのでしょうか?
山之内 この暴排機運がどこまで続くのかが、一番大きいですね。ヤクザと関わることは道徳的に悪という観念が国民の中に常態化すると、公然たる日本ヤクザという組織犯罪集団も地球上から消えるでしょう。そうでなくても締め付けが強まるほどに否応なく潜在化しています。シノギも代紋の威力を笠に着た恐喝、強要から代紋に関係のない窃盗、詐欺、そして、麻薬へとシフトしています。
 ただ、組織存立の根幹が暴力に依存する点は変わりません。そして、山口組は組織形態がどう変わろうと存続します。それは永久に生まれ続ける社会の“はぐれ者”の受け皿として機能しているからです。
_(聞き手/程原ケン)

山之内幸夫(やまのうち・ゆきお)
1946年香川県生まれ。大阪府立成城工業高校(現・大阪府立成城高校)卒業後、早稲田大学法学部に進学。三代目山口組本部長だった小田秀臣組長の顧問弁護士となり、’84年に山口組顧問弁護士となる。’88年、小説『悲しきヒットマン』を発表、映画にもなり話題となる。

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