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特選映画情報『屋根裏の殺人鬼 フリッツ・ホンカ』〜“ヘアまで見せる”死体損壊場面がエグい!

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提供:週刊実話

配給/ビターズ・エンド ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開
監督/ファティ・アキン
出演/ヨナス・ダスラー、マルガレーテ・ティーゼルほか

 まだスマホもパソコンもない1970年代のドイツが舞台で、70〜75年に4人の女性を殺害した男、フリッツ・ホンカの殺しの手口と平凡な日常を“独自の切り口”で描いている。あえて、味もそっけもない描写に徹しているところが、逆に“味がある”と言わざるを得ない。

 70年代ドイツ。安アパートの屋根裏部屋に住むホンカ(ヨナス・ダスラー)は行きつけのバーで、女に声を掛けても、容姿が冴えないせいか、いつも顔をしかめられるだけ。街で見かけた金髪美人ペトラ(グレタ・ソフィー・シュミット)を見つめるが、もちろん高嶺の花だ。バーで、無一文の中年女ゲルダ(マルガレーテ・ティーゼル)に一杯おごると、彼女はホンカと一緒に外に出るが…。

 同じく、実在の殺人鬼を描いた作品でも、昨年暮れの『テッド・バンディ』はハンサムなシリアル・キラーで、犠牲になったのは若い美女ばかりというのに対して、こちらのホンカは、見た目が対照的なためか、ターゲットは中年娼婦ばかりなのがなぜか哀しい。嗚呼、殺人鬼業界(そんなのあるのか?)にも歴然と格差はあるのだなあ、とヘンに痛感した。冒頭のジャーマン・パツキン美女は、ホンカに煙草の火を借りただけなのに、奴の妄想の誘発装置となってゆくわけだ。このホンカ役のヨナス・ダスラーはまだ20代の若手俳優で、素顔はかなりのハンサムなのだが、20歳年上の冴えない中年男の曲がった鼻、乱杭歯、特徴的な斜視などを特殊メークを施して大変身。凄まじい役者根性を見せてホンカに成り切っている。

“凄まじい”といえば、冒頭間もなくから始まる死体の損壊シーンだろう。ベッドに横たわる女性の遺体。ドレスと下着を脱がし、ノコギリを持ち出し、首に歯を当てギーコギーコと切断しようとするホンカ。遺体はヘア丸出し…シリアル・キラーの多くはどこか殺人をアートのように考えているフシがあるが、このホンカはそんな素養(?)もなく、死体処理にしても実に雑でデリカシーのかけらもない。ゆえに、観ている間の不快感はかなりのもの。ありのままで〜、って歌がはやったが、ここまで理不尽な殺人鬼の、身もフタもない“ありのまま”を描いた作品は希有だと思う。
 ファティ・アキン監督は『女は二度決断する』(17年)でも復讐のヒロインを過激に描いたが、今回の過激度もかなりのもの。あえて不快になる映画を観る、というのも一興ではないか。
 《映画評論家・秋本鉄次》

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