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たけし軍団の芸名(後)

 長州力。言わずと知れた、有名ベテランプロレスラーだ。彼をパロディにした長州小力は、一発屋芸人として売れた。しかし、この“長州”シリーズにいち早く目をつけていたのは、ほかならぬビートたけしだった。

 たけしはまず、たけし軍団のある男性に、「九州力」と付けた。のちに「本州力」、「満州力」に変化して、「イリノイ州力」で落ち着いたが、彼は翌日から来なくなった。

 同じく、2週間で辞めてしまったのは、「元日本兵」。おそらく、この先テレビに出られないであろうことを見越したのだろう。

 「頭突き王」という芸人は、「ただ額が広いだけ」という理由で命名された。しかし、空手の経験がないにもかかわらず、出演するイベントや番組のほとんどで瓦割りをさせられ、ただ血だるまになるという芸人人生に危機感を感じ、リタイヤした。

 芸名変遷がもっとも著しいのは、「ダイオウイカ夫」だ。デビューしたころは、そのハッキリした目鼻立ちから、「ルビー浅丘モレノ」と名づけられた。女優・浅丘ルリ子と、お騒がせハーフタレントのルビー・モレノをパロったものだ。ここから、たけしの悪乗りが止まらなくなった。

 まずは、「大神クヒオ」。犯罪者ふたりの名前を組み合わせたシリーズものは、「犬神グヒオ」、「太神ダヒオ」と続いた結果、今年までは「東京名物大神本舗5百年」で落ち着いていた。ところが、7月に放映された『水曜日のダウンタウン』(TBS系)内で急きょ、現在の芸名に改名させられた。

 現在は、「〆さばアタル」となった彼も、パクリの歴史。ダチョウ倶楽部ではない「ダッチョ倶楽部」。ウッチャンナンチャンではない「ウッチャソナンチャソ」、ダウンタウンではなく「ダウソタウソ」(いずれも「ん」が「そ」になっている)。さんざん変えられた挙げ句、いまだに売れていない。

 ほかにも、国際指名手配犯や病原菌、街娼や販売停止のメニューを立て続けに付けられた者もいる。彼は現在、「シェパード太郎」に落ち着いた。理由は、たけしの愛犬であるシェパードの世話をしているからだ。

 たけしにとってたけし軍団は、おもちゃであり、息抜き。みずからの会社・オフィス北野が手掛けるバラエティ番組や映画には、必ず売れない軍団員を出演させるのは、せめてもの罪滅ぼしか。(伊藤由華)

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