芸歴は長いものの、広田絵美の名で活躍していた女子高生時代はブルマーやスクール水着姿など、お菓子系雑誌でのグラビアも披露していた麻生。もちろん大きな仕事もなく、高校卒業後の進路について彼女は、2007年に発売された文芸誌『hon-nin vol.03』にて「べつに風俗でもいいかぐらいに思ってて。(略)それだったらお金も稼げるし、家にお金入れられるから」と当時の思いを激白している。
彼女の家は芸能界の夢を追えるほど余裕のある家庭ではなかった。それほどまでに実家は貧しく、幼少期から同じ服ばかり着ていたことでイジメにもあっていたという。同じくインタビューで「『また同じの着てる。あいつん家、貧乏だからしょうがねえよ』みたいな、そういう延長で石とか投げられたことがあって、それで額にまだ傷があるんですけど」と子供の頃は貧しさが原因でイジメの標的にされていたと語った。
また2009年の『週刊現代』(2月2日発売号)では母親がインタビューに答えており「久美子はただ貧乏だというだけでよくイジメられてたの。石を投げられたり、突然、道路で押されて、車に轢かれそうになったりね」と、麻生はイジメで命を落とす危険すらあったという。そんな下積み時代や過酷な貧乏生活が、彼女の女優としての表現力の地盤を築き上げたのかもしれない。
そして麻生久美子の極貧時代を語るエピソードの中でも、特に有名なのがザリガニを食べて生活していたという話だ。麻生は「友達はちゃんと水槽に入れて飼ってたけど、ウチは鍋に入れて。美味しいんですよ!」と子供の頃からザリガニフリークであると語る。ここにこそ彼女を落とす糸口がある。
まずは川でザリガニを大量ゲットし、まるごとお弁当箱に詰め込む。あとは新幹線などで移動中の麻生を見つけたら、すかさず隣に座り込み。弁当箱からザリガニを取り出そう。そして彼女にアピールするために殻ごとブキャリ! ブキャリ! と食べること。その時点で麻生は“あ、ザリガニ食べてる〜”と心の中で想い、こちらに親近感を抱いてくれる。だがザリガニといえば寄生虫の巣窟。ひたすら食べ続けることで…
「オ、オ、オェェェェエエエエエエエエエーーーーー!!」
麻生の隣で嘔吐、吐血が訪れればチャンス到来。ここまで来れば、「大丈夫ですか!?」と彼女の方から話しかけてきてくれるだけでなく、親身に介抱してくれるはず。「ザリガニ…、おいしいですよね」と、お互いが言葉を交わし、ザリガニを通じ2人の関係はぐっと深まっていくはずだ。
以上のように、好きな人に近づきたければ、その人の好きなものをなんでも食べること。それが生き物だろうと寄生虫だろうと関係なく食べるという男気を見せることが、大切なのである。
(文・柴田慕伊)