そこで、著者であり、『嫌韓流』シリーズで韓流ブームに冷や水をぶっかけた山野車輪氏にインタビューを行った。今回の前編では『「若者奴隷」時代』誕生のきっかけなどを中心に、後編では人間“山野車輪”に迫る。
Q.本書を書こうと思ったきっかけは?
A.今の若者がずっとかわいそうだと思っていました。同世代の友人と話していても「若い頃に戻りたいけど、今の時代の若者に戻るくらいなら戻らなくてもいい」という会話もしていました。今の若者は金を持っていないし、そもそも金を稼ごうにも雇用情勢がよくないです。また筋違いの若者バッシングや多額の年金保険料まで課せられています。
このような中で、次回作は格差問題でいこうと思い雇用問題からシナリオを固めていきました。でもシナリオを作っていくうちに“高齢者”という要素が入ってきました。これまで雇用問題が語られる時は「若者」と「会社の上層部」という枠内でしか語られてなかったのですが、もっとその上に若者から搾取している“高齢者”があるじゃないかと気づいたんです。しかし、これは誰も指摘していないんです。犯罪が起こっているのに警察がないとか、火事が起きているのに消防署がない状態と同じことです。これは誰も手を汚したくないということではないでしょうか。でもそれじゃいけないと思うんです。高齢者は今後、ますます増えていきますので、今のうちに高齢者批判の舞台やレールを作っておかなければいけないのです。今回の本はその第一歩だということです。たぶん誰も続かないと思いますけど…。直接高齢者批判をすると、高齢者を敬わなければならないと考えている若者からさえもバッシングを受けますから(笑)。
Q.ある意味、過激な本書ですが、販売することに反対などはされませんでしたか?
A.当初は編集サイドも乗り気ではなかったんです。なぜなら“高齢者批判本”が少なく販売データがなかったから。なぜ少なかったといえば“高齢者批判”というのが日本人のメンタリティに反しているからだと思います。それに「若者もいずれは高齢者になるんだから」ということで批判はしづらいですよね。あと誰でも親族に高齢者がいるんで…。そこは結構大きいと思います。さらに高齢者は弱者と認識されているので、批判すれば差別のレッテルを貼られて潰されてしまいます。これは在日や同和問題の構造と同じだと思います。
Q.タイトルも過激ですが?
A.版元からは販売のために『嫌老流』というタイトルを強く勧められました。でもこれはないと思いました。『嫌老流』というタイトルでいくということは、結局「嫌〜流」という流れにのってしまうということなのです。これはすなわち過去の成功した既得権に乗るということです。既得権に反対している私自身がやってしまうというバカみたいな話になってしまいます。それに『嫌老流』というタイトルでは“若者”というキーワードが入っていません。一番私が伝えたいのは「若者がかわいそうな状態に陥っている」ということなのです。ですからタイトルにはなんとしても“若者”というキーワードを入れないといけなかったんです。それで最終的に『「若者奴隷」時代』になりました。
Q.本書には直接、高齢者から抗議されるシーンがあります。『嫌韓流』シリーズなど今までの作品で、実際に抗議を受けたことはありますか?
A.私はマンガ家という立場ですので、顔出しすることに違和感があるんです。多くのマンガ家は表に出ないじゃないですか。なので顔はあまり出さないです。自分の顔やプロフィールじゃなくて、作品の内容で勝負するべきだと思いますし。そういうスタンスなんで、私の顔はあまり知られていないので、直接抗議されることは少ないです。ただ去年は元在日韓国人に訴えられて、裁判で係争しました。これは完全勝利しましたけど。あとは私の事務所に脅迫状が届きました。なんで私の事務所の住所を知っているのかということは今でもナゾです。文面は「隠し撮りした写真と事務所と実家の住所と写真を押さえているぞ」というものでした。
Q.本書は高齢者批判の内容になっていますが、あえて山野先生の心温まる高齢者とのエピソードを教えてください。
A.私は長男で、小さい頃は祖父や祖母にかわいがられました。父方の祖母にはマンガや玩具をたくさん買ってもらいました(笑)。頭があがらないです(笑)。この時買ってもらったものが今の私の根っこの部分にあるものになっています。祖父や祖母に関しては感謝しています。また、『嫌韓流』シリーズを描く際も、祖父や祖母の世代の歴史が歪められていて、ただしたいという思いがモチベーションになっていました。
Q.本書はどんな人に一番読んでもらいたいですか?
A.テーマは“世代間格差”と“高齢者問題”です。これは日本国民全員に考えてもらいたいものです。読者としては日本国民全員なのですが、若い人向けには作っています。若者たちが「ムキー!!」となって若者党でも何でも作るような行動力が欲しいですね。僕は若くはないですけど、バックアップはしていきたいと思っています。
Q.読者の方に一言お願いします。
A.立ち読みでもいいので、とにかく手にとって読んで頂けたらありがたいです。私たち日本人はこれまで高齢者に対してノーを突きつけることを避けてきていました。でも、この先、高齢者はますます増えていきます。現在でも65歳以上の高齢者は人口の2割を超えています。2025年には3割を超え、2050年には4割を超えるということは、ほとんど確定していることなのです。世代間格差の実態を知って、一刻も早く超高齢社会に適応するようにしなければならないのです。日本が滅亡する前に、この問題について、みんなで一緒に理解を深めていきましょう。
(後編へ続く)
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