浅草六区は、国際観光都市「浅草」を象徴する浅草寺と隣り合う地区で、1883年に造成完了した浅草公園が、翌年1884年1月に六区画に区分けされたことで誕生した。1886年には浅草六区で初となる劇場「常磐座」が開業。以来、興行街としての歴史を重ねる。2013年に浅草公園造成完了130周年、2014年に浅草六区誕生130周年と、今年、浅草六区での劇場誕生130周年を迎えた。東京一の興行街として人々が集い、現在は浅草の新たな西の玄関口として浅草観光の拠点を担っている。
「浅草六区オープンカフェ2016」では、浅草六区の街全体を劇場として捉え、「六区ブロードウェイ」の愛称で親しまれているメインストリートの一部区域に、道路空間も利用して、オープンカフェやマルシェ、パフォーマンスステージなどを設置する。六区ブロードウェイを、浅草六区のホワイエ(応接間、ロビー)と位置づけ、国内外を問わず浅草を訪れた観光客を“おもてなし”しようというもの。観光客は、オープンカフェでくつろぎ、パフォーマンスや浅草観光を楽しむことができる。
浅草六区では、浅草六区誕生130周年記念事業として「浅草六区再生プロジェクト〜For the future of the “Rock”〜」を3か年事業として推進している。「浅草六区オープンカフェ2016」では、東京オリンピック・パラリンピック大会が開催される2020年も見据えている。
「浅草六区オープンカフェ2016」の初日となる16日には、六区ブロードウェイ商店街振興組合が「国家戦略特区事業認定へ向けた社会実験開始会見〜浅草六区再生プロジェクト〜」を、浅草ROX(台東区浅草)前の六区ブロードウェイステージにて開催した。
会見では冒頭、14日から発生した熊本地震の犠牲者、被災者、関係者へ哀悼の意とお見舞いの意が表され、六区ブロードウェイ商店街振興組合の熊澤永行代表理事から、浅草六区の歴史や、今回の実験の趣旨が語られた。
浅草六区では、2011年3月16日に「浅草六区地区 地区計画」として都市計画決定・告示、建築条例公布・施行された。地区計画に沿う形で既に、シアターレストランを備える「ドン・キホーテ浅草店」(2013年12月)、スポーツ練習場などを備える「ROX・3G」(2015年3月)、全国各地の魅力が集積する地域振興の総合拠点「まるごとにっぽん」(2015年12月)がオープン。劇場を備える「マルハン松竹六区タワー」(オープン日未定)の開業も予定されている。
熊澤代表理事は、「浅草六区オープンカフェ2016」を実験として実施することを強調した。今回の成果を踏まえ、将来的には、オープンカフェを六区ブロードウェイ全域に広げ、さらに、国が定めた区域において規制改革等を推進する「国家戦略特区」の認定を目指したい考えが語られた。「これから先を楽しみにして頂きたいです」と、浅草六区のさらなる賑わいに意欲を見せた。
続いて、服部征夫台東区長が登壇。浅草に多くの観光客が訪れている現状が語られた。「このスペースをますます活用して、六区ブロードウェイを大いに活性化して頂き、観光客の皆さまにも喜んで頂ければと思います」と取り組みへの期待が語られた。
浅草六区にゆかりのある演者を代表して、落語家の林家正蔵(浅草演芸ホール)、昭和歌謡のリバイバルをコンセプトにショーを行う虎姫一座(アミューズカフェシアター)、大人から子供、外国人でも楽しめるセリフのない芝居を上演するGilles de Rais(ジル・ド・レ/浅草六区ゆめまち劇場)が登壇し、「浅草六区オープンカフェ2016」の開幕を祝った。
正蔵が「こういうカフェができることは大賛成です。カフェでゆっくり、飲み物、お召し上がり物、下町の美味しい味を味わって頂き、そのあとはぜひ、演芸ホールで落語を聞いて頂ければと思います!」とあいさつすると、沿道に詰め掛けた観客から大きな拍手が沸き起こった。
虎姫一座は「街の皆さまと一緒に、私たちも微力ながら、エンターテインメントの力で浅草を盛り上げて行きたいと思います」と声を弾ませ、Gilles de Raisは「浅草のひとつの舞台として頑張って行きたいと思います」と目を輝かせた。
世界最大のWi-Fiサービス「FON」と共同で浅草六区に無料Wi-Fiを提供している株式会社ワイヤレスゲート代表取締役CEOの池田武弘氏は、個人情報を特定することなく、無料Wi-Fi利用者の情報を統計情報として取得し、それを活用することで「浅草地区のさらなる復活により貢献していきたいと考えています」と展望を言葉にした。
また、同日から、六区ブロードウェイに、新施設「六区セントラルスクエア」がオープンした。
「六区セントラルスクエア」の建物正面には、公演情報などを表示する巨大電子看板が設置されている。さらに、パフォーマンスを行う野外ステージも併設。1階には、チケットの販売カウンター、外貨両替所、そして、「JAPANKURU コンシェルジュデスク」の名称で展開する訪日外国人向けの浅草の観光案内所などが入っている。
「JAPANKURU コンシェルジュデスク」を展開する株式会社グローバル・デイリー常務取締役・中原宏尚氏からは、昨年、日本には1946万人の外国人が訪れ、浅草には450万人を越える観光客が世界から来たことが紹介された。同社が世界に持っているネットワークとノウハウを駆使し、「誠実に、そして情熱を持って浅草の再生プロジェクトの一端を担えるように精進していきたい所存でございます」と意気込みを語った。
会見の後、「六区セントラルスクエア」前に場所を移し、お祓いと関係者によるテープカットが行われ、「浅草六区オープンカフェ2016」の開始と「六区セントラルスクエア」のオープンを盛大に祝った。