金村ゆきひろ(当時)と対戦し、金村のキックが顔面を直撃。眼底部骨折という散々なデビュー戦であったと吉田は語っている。
「もうやめちゃおうかな?」。試合後控室に戻った吉田の心境はそんな感じであったという。しかし、その心を激しく動かしたのは一人の車椅子に乗った少年だった。
「やられてもやられても立ち向かっていく姿に勇気をもらいました」との少年の言葉に、吉田は考えを改める。そして自身の地元である栃木県小山市にアマチュア団体である『格闘技団体EAGLE』を発足させ、栃木県内の施設を様々回り慰問を続けていく。
ある日、島田宏、木村浩一郎との出会いにより「TEAM WOLF」に合流、PWC等様々なリングに上がった吉田は、EAGLEをプロ化するため島田にコーチ兼選手として賛同して欲しいと頼む。その願いが受け入れられ、島田宏の下プロレス団体『EAGLEプロレス・プロモーション』を旗揚げするに至る。
EAGLEは月に一回の興行を打ち、所属選手もビッグ石川、イーグル・ソルジャーというアマ時代からの同胞、峰浩也、近藤博之、山本拓(当時)等の若い力も加わっていく。その後末吉利啓(現プロレスリング・アライヴ)、柏渕理樹、そして女子選手である川田由美子、小川樹里がデビューを果たし台頭してきた事により、吉田はEAGLEを離れる。
2009年6月、自身の求める「子供たちに夢を与える」事をスローガンとした栃木エンターテイメントを発足し現在に至っている。
「実は俺、格闘技の経験ってあまり無いんですよね」
確かに学生時代、柔道を行っていた経歴こそあれ、吉田はプロレスを行うには線が細かった。
アイススケートをたしなんでいた吉田は軽量の中で、絶妙のバランス感覚という武器を持っている。そのバランスをプロレスに生かそうと考えたのは、小山で見たサーカスの興行。空中ブランコで華麗に宙を舞う姿を見て「これだ!」と思ったという。
吉田の主武器である一連の「スワンダイブ式」攻撃はここから生まれたといっても過言ではない。以来吉田は常人では考えられないほどのスピードとバランスでトップロープに飛び乗り、場外、リング内を問わず飛翔し続けてきた。
そんな吉田和則が、今年デビュー20周年を迎える。本来であれば10月に記念大会を行う予定であったが、8月末に行われた試合にて負傷し、期日を延期してしまっているのだ。
12月に決まった自身のデビュー20周年記念大会を前に、11月7日日曜日、吉田は盟友ビッグ石川のプロモートした「あくと祭り」に設置された特設リングで華麗に宙を舞った。
恩人の一人である木村浩一郎の重く鋭いキックを全身で受け止め、「ベストパートナー」である近藤博之とのタッグを結成し、アマ時代からの友であるイーグル・ソルジャーから雪崩式フランケンシュタイナーからのカズクラッチで勝利した吉田。場外に飛んだプランチャ・スイシーダ、近藤のスワントーン・ボムを呼び込んだパワーボムを見る限り、負傷からのブランクは感じさせない。
様々なゲストを小山に呼び、大人から子供まで会場に来た全員が楽しめるプロレスを目指して、吉田は飛び続けた。その一つの集大成を迎えるのが12月19日、小山市文化センター小ホールで行われる自身のデビュー20周年記念大会。
今回は強さの象徴である木村浩一郎、SMASHのJCBホール大会にも出場し話題となった大森隆男、天龍プロジェクトのリングでIJ王者となったHIROKI、空中戦からハードコアまであらゆるスタイルをこなす神威、そして西口プロレスをのし上げた張本人である長州小力が参戦する。
あくと祭りでの試合後、ゲスト参戦した渡辺宏志との会話の中で年齢を感じてしまったと言う吉田。しかし、まだ吉田和則の「夢」は果てることがない。あくまでもリングを縦横無尽に駆け回り、飛翔する姿を子供たちの前で魅せる事、それは「栃木の英雄」といわれている吉田の使命でもあるのだ。自分の大好きな言葉である『夢』の一文字を追いかけ、吉田和則は今日もまた大空へ飛び立つのである。
(Office S.A.D. 征木大智(まさき・だいち))
◆EAGLEプロレス『第8回あくと祭り特設会場』
2010年11月7日(日)
会場:茨城・結城市『あくと祭り特設リング』(観客1500人)
<メインイベント タッグマッチ 60分1本勝負>
○吉田和則【栃木エンターテイメント】&近藤博之【EAGLE】(14分16秒 カズクラッチ)木村浩一郎&●イーグル・ソルジャー【EAGLE】
<第2試合 ランパチプロレス提供試合決まるまで1本勝負>
○ジャイアント小馬場【ランパチプロレス】(10分19秒 片エビ固め)●ラブセクシー乙羽屋【西口プロレス】 ※スーパー16文キック
<第1試合 夢名塾プロレス提供試合 20分1本勝負>
○渡辺宏志【夢名塾】(11分05秒 逆エビ固め)●長屋亮治【夢名塾】
◆栃木エンターテイメント・プロレス12月大会『吉田和則デビュー20周年記念大会』
2010年12月19日(日)開場:12:30/開始:13:00
会場:栃木・小山『小山市文化センター小ホール』(JR線小山駅西口より徒歩7分)
【参戦決定選手】
吉田和則【栃木エンターテイメント】、木村浩一郎【フリー】、大森隆男【フリー】、HIROKI【フリー・第7代IJ王者】、神威【FREEDOMS】、近藤博之【EAGLE】、TA☆KU【EAGLE】、イーグル・ソルジャー【EAGLE】、ジャイアント小馬場【ランパチプロレス】、長州小力【西口プロレス】
※対戦カードは後日発表
【チケット料金】前売り3000円/当日3500円
※保護者同伴の小学生以下のお子様及び身体に障害をお持ちの方は無料にて観戦ができます。
お問い合わせは栃木エンターテイメント tochi_pro@yahoo.co.jp まで。
栃木エンターテイメント公式サイト http://totigienter.okoshi-yasu.net/