鳩山会館は首相の祖父・一郎氏が大正13年に建てた鉄筋コンクリート造りの洋館。1995年に改修工事が行われ、一般公開された。幾多の政治決断の舞台となった応接室などが見学できるとあって、同じ時代を生きた高齢者や歴史ファンなどが立ち寄る。鳩山首相も「お花見の会」や、主催する「鳩山友愛塾」の講義などで年に数回は訪れるという。
敷地内は静寂に包まれ、都会の喧騒を忘れるにはもってこいの場所。鳩山政権誕生で観光客が増え、万々歳のはずが、困っていることもある。
「8月14日は大変でした。就任前ですし、鳩山首相が住んでいるわけでもないのに、街宣車が会館の周囲をぐるぐる走り回ったんです」(同職員)
鳩山氏の政治的スタンスに抗議する街宣だったよう。首相就任で今まで以上にさまざまな組織と軋轢を生む心配がある。
また鳩山会館の入り口には不思議な注意書きがあった。「ゴシック・ロリータ&パンクブランドBOOKの洋館・名邸コーナーに記念撮影を奨励するような記載がございましたが、(中略)このような服装での館内撮影はお断りしています」
会館でのゴスロリファッションは禁止とされている。なぜなのか?
「以前、(ゴスロリを扱った)雑誌に鳩山会館で写真を撮るとかわいく写ると紹介され、(ゴスロリの格好をした)若い女性とアマチュアカメラマンの男性がいらっしゃったことがあるんです。ところが着替えはトイレでされ、館内には三脚が立てられ、他のお客様から『迷惑だ』との苦情が来ましたもので…」(同職員)
写真撮影さえしなければ、ゴスロリファッションでも入館できるのか?
「(ゴスロリファッションの人は)必ずカメラマンと来ますので…。お断りします。他のお客様にゆったりくつろいでもらいたいんです」(同職員)。最近でもときどきゴスロリファッションで撮影目的の人が来館するが、その場合には退館してもらっているという。
かようなまでに会館のゴスロリに対する不信感は大きい。そこで、解決策を見い出すべくゴスロリファッションを扱う複数店舗にこのことを問い合わせると、「ノーコメント」「コメントはありません」との回答。残念ながら具体的な感想や意見はもらえなかった。
ならばゴスロリ本人たちはどう考えているのか。原宿・竹下通りでゴスロリファッションを身にまとう2人組をキャッチ。「鳩山会館のことで…」と話を切り出すと「出た〜!!」とのリアクション。ゴスロリの間では有名な話らしい。
「ゴスロリは生活の一部だから、家から出て帰るまでこの格好です。トイレで着替えたということなら、コスプレイヤーの方たちでは」(都内在住の20歳大学生)と“冤罪”を主張。さらに「私たちは何もしなくても奇異の目で見られてしまうので、マナーには十分注意しなければいけないと仲間うちでも話し合っています。実際、マナーの悪い人は排除されていく傾向にあります」と自らが置かれている現状を真摯に語った。
果たして鳩山会館がゴスロリ軍団を受け入れる日は来るのか。一部ゴスロリの謙虚な姿勢を知って、鳩山首相が「友愛精神」を発揮すれば、和解の日は遠くないかもしれない。
◎ゴスロリとは?
正式にはゴシック・アンド・ロリータ。本来は異なるゴシックとロリータの要素を結びつけた日本独自のファッションスタイル。90年代の終わりごろから原宿で話題になり、2004年に嶽本野ばら原作「下妻物語」が深田恭子主演で映画化されたことでファッションとしての市民権を得たといわれる。愛好者は主に20代の女性が中心。
◎アクセス
東京メトロ有楽町線江戸川橋駅から徒歩7分。休館日は毎週月曜日(月曜日が祝日・振替休日の時は開館)。開館時間は10時〜16時、入館料は一般500円、学生300円、中小学生200円。東京都文京区音羽1-7-1