妖怪「ザシキワラシ」とは、柳田国男の名著「遠野物語」以来、我々日本人に親しまれてきた妖怪である。この妖怪「ザシキワラシ」は、東北地方を中心に伝承されているのだが、その家の守護神的な存在であり、それがいる限りその家は繁栄し続けるが、いなくなるとたちまち没落してしまうというやっかいな妖怪である。
いくつかの別名があり、蔵にいると言われる「おくらぼっこ」、童子ではなく親父スタイルの「座敷坊主」、関東地方に伝わる「まめいちぼっこ」なども近い種類の妖怪であると思われる。大概は、その家の先祖にあたる人物のうち幼少の頃、亡くなった子供がザシキワラシになるとされており、異説では、間引きされた子供の霊や、流産してしまった子供の霊がなるとも言われている。従って、男子であるとも、女子であるとも言われているし、中には双子の女の子の「ザシキワラシ」もいると言われている。
この「ザシキワラシ」は丁重に扱わねばならない。「ザシキワラシ」が出て行ってしまうと没落してしまうのだ。言わば、「ザシキワラシ」は富の象徴なのである。
だが、この現代日本にも「ザシキワラシ」がいるとしたら、皆さんはどう思うだろうか。
日本の数ある旅館なかで「ザシキワラシ」がいるとされているのが、岩手県二戸市金田一温泉郷にある緑風荘、柳田国男に協力した語り部・小笠原謙吉の子孫が経営する盛岡市にある旅館菅原別館、遠野駅前で現代の語り部・佐々木オーナーが経営する御伽屋、この三軒には、今も「ザシキワラシ」が棲みついているという。
ところが、現代の東京にも「ザシキワラシ」がいたという奇妙な話があるのだ。この不思議な話をどう思うであろうか。まず下の写真を見てもらいたい。この写真は数年前に匿名希望の方から提供を受けたものである。撮影された場所は、都内の一戸建ての中古住宅であるが、座敷の真ん中に透明な球が写り込んでいる。俗に心霊研究家たちがオーブと呼ぶ存在である。このオーブは人間の魂とも、幽霊そのものとも言われているが、正体はわからない。デジカメに写りこんだ埃であるという説も根強いが、埃が飛ばない雨中や夜間でも撮影される場合があり、謎に包まれている。
このオーブが写った奇妙な写真を、筆者のホームページで一時期公開していたところ、その住宅にかつて住んでいたという人からメールを頂いた。その方は数年間、家族でその家に住んでいたのだが、度々子供の霊を目撃したという。だが、奇妙なことに恐怖感はなく、むしろ親しみさえ覚えたというのだ。不思議なことだと思っていると、家族の仕事は順調になり、小さいながらも幸運が連続して入ってきたというのだ。ひょっとしたら、あの子供の霊は「ザシキワラシ」ではないかと、家族でよく話しあったりもしたらしい。数年後、違う家にこの一家は移っていったのだが、今も家族の全員が幸運に恵まれているという。
このように丸い球(=オーブ)に変化(へんげ)し、「ザシキワラシ」が出現する事例は他にもある。お笑い芸人の爆笑問題が司会を務めたテレビ朝日の番組「不思議どっとTV」の撮影中、東北の緑風荘に設置された暗視カメラに、コロコロと移動するオーブが複数写りこんだことがあった。撮影現場は、亀麻呂と呼ばれる「ザシキワラシ」が出ると言われている部屋である。やはり、「ザシキワラシ」はオーブに姿を変え、出現するのであろうか。
もっとも、幸運になる「ザシキワラシ」なら、いつでも来て欲しいと思っている家庭も多いかもしれない。