今年は北野武監督が2001年に公開された『BROTHER』以来となる北野バイオレンス映画(ヤクザ映画)の新作『アウトレイジ』を完成させて大きな話題となりましたが、約10年ぶりとなる北野バイオレンス映画の公開以上に、今年一番北野映画ファンを驚かせたことは、『アウトレイジ2』の公開が決定! というニュースだったのではないでしょうか?
これまで、北野監督は一度も自身の作品の続編を撮ったことがありません。映画のオリジナリティにこだわり、毎回違ったスタイルの映画を撮り続けてきた北野監督。北野映画のファンも毎回個性の違う北野映画をずっと観続けてきたせいか、『ソナチネ』に感激したからといって「ソナチネ2が見たい!」なんて要望を持つことはありませんし、次回はどんな個性的な作品が見られるんだろう? といった種類の期待をしてきたのではないでしょうか。
続編を撮るという発想自体が、これまで北野映画を追いかけてきたファンにとっては非常に意外なことであり、だからこそ大変な驚きをファンに与えたのです。
もっとも実際にこうして続編を撮ることになったのは初めてのことですが、北野監督が続編を撮ってみたいと口にしたことは、過去にまったくなかったわけではないのです。
北野映画の中でも興行的には最も成功した大ヒット作である『座頭市』(2003年公開)については公開前から、『座頭市2』について構想を話していました。作品が大ヒットした後となっては、監督だけでなく、多くの関係者やファンにとっても続編が求められている北野映画作品だといえるでしょう。
そしてもう1本、北野監督が続編について構想を話していたことがある作品が、『キッズ・リターン』(1996年公開)です。
本作は、数ある北野監督の映画の中でも最高傑作に挙げるファンが特に多い名作ですが、特にこの映画のラストシーンは、映画史上にも残る最高のラストシーンの一つともいわれるほど、多くの人たちに愛されています。私も何度観ても、『キッズ・リターン』のラストでは、感動と鳥肌と希望とアドレナリンが信じられないくらいに湧いてきてしまいます。
ですが、逆にここまで綺麗に終わった映画の続編を作るなんて話を聞くと、正直信じられないという気持ちを持ってしまう部分もあったりします。もちろん、この最高のラストを創造した北野監督なら、『キッズ・リターン』を超える感動を、『キッズ・リターン2』で生み出すこともできたのかもしれませんが、結果的に『キッズ・リターン2』は製作されることなく終わり、正直安心してしまったファンは私だけではないと思います。
今までに、北野監督が続編について構想があると語ったことのある映画はこの2本だけでした。
そして今回、ついに初めてとなる続編映画を撮ることになった北野武監督。
考えてみれば、続編を初めて撮るという行為が、今までの北野映画同様に、まったく新しい映画への挑戦なのかも知れません。
『アウトレイジ2』の公開は2011年の秋公開を目指して準備が進んでいるようです。北野監督が撮る続編映画とは一体どのような作品なのか? 北野映画ファンはいつものように、北野監督の新作にワクワクドキドキさせられてしまうのでした…。
(「作家・歩く雑誌」中沢健 山口敏太郎事務所)
参照 山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
http://blog.goo.ne.jp/youkaiou