社会 2025年12月03日 08時00分
マイナ保険証へ完全移行も登録率はまだ70.2% 政府は「医療DX」で新システム構築を目指す
12月1日で従来の健康保険証はすべて有効期限切れとなり、2日以降は新たに発行されなくなった。「マイナ保険証」を基本とする仕組みに移行した。マイナ保険証で政府が目指すものは何か。1日放送のテレビ東京系「ワールドビジネスサテライト」で解説した。マイナ保険証とは、健康保険証として利用登録されたマイナンバーカードのこと。10月末までにマイナ保険証に登録したのは全人口の70.2%で、利用率は37.1%程度に留まっている。マイナ保険証を持っていない人には「資格確認書」が交付されている。また、来年3月までは期限切れの保険証でも資格が確認できれば保険診療が受けられる。マイナ保険証のメリットはさまざまあるが、救急医療の現場ではとくに重宝されている。救急車で搬送される患者のマイナ保険証を救急隊員が端末で読み取れば、服用薬やかかりつけ医などを確認することができる。通常は患者本人や家族から聞き取り、手書きで記入するが、情報の正確さや確認に時間がかかるなどの懸念があった。薬の名前や細かな通院歴は患者本人でも把握していないことも多いが、マイナ保険証の情報があれば、救急隊員もすぐに救急処置の判断ができるというわけだ。マイナ保険証で政府が目指すのは医療のDX化だ。患者の診療情報を記録する電子カルテだと現場の作業時間は3分の2くらい短縮できるとされるが、政府は2030年までに電子カルテの情報を医療機関どうしで共有できる新しいシステムをつくる計画だ。各医療機関の電子カルテに記録された病名や検査結果などの情報をデータベースで管理し、これとマイナ保険証を連携させ、患者が同意した情報を他の医療機関でも共有できる仕組み。電子カルテの診療所での普及率は、2023年時点で55%となっており、2011年の2倍超となっている。政府は2030年までに100%の導入を目指している。あるメーカーでは導入をためらう高齢の医師のために手書きで書き込めるタブレットなども開発している。ただ、電子カルテ導入には課題もあり、現状では電子カルテの規格が統一されていない。政府はこれを統一していく作業を進めており、メーカーは対応に追われているという。また、医療機関のサーバーの安定性が重要で、過去には電子カルテを管理しているサーバーがダウンしたために、診療を一時的に止めざるを得ない病院もあったという。そのときは復旧までに2時間ほどかかったそうで、バックアップの問題もこれからだ。