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【不朽の名作】「ゴジラ」と双肩をなす怪獣映画は?

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 色々異論はあるかと思うが、「ゴジラと双肩をなす怪獣映画は?」と問われた怪獣映画好きは、同じく長寿シリーズとして続いていたガメラシリーズをあげる方が多いだろう。しかし、平成に入りシリーズ作品が量産されたゴジラに比べ、ガメラはというと、いまいち存在感が薄い。しかし、「平成ガメラシリーズ3部作」と呼ばれた3作品は、出来として日本特撮映画史上においても、かなり面白い作品だ。今回はそんな平成ガメラシリーズの3部作の中から1996年制作の2作目、『ガメラ2 レギオン襲来』について解説したい。

 作品の特徴についてだが、作中で戦う「自衛隊」、敵怪獣である「レギオン」、演出面での「火薬」3つの大きなポイントに注意して鑑賞すると楽しめるはずだ。

 まず、自衛隊について。とにかく「強い」の一言につきる。強いとはいっても、怪獣映画の主役である怪獣を圧倒する強さではなく、我慢強く、持てる力を極限まで発揮する、「タフネス」の面での強さだ。よくゴジラ映画などで防衛の当たる自衛隊やGフォースは、「メーサー戦車」や「スーパーXシリーズ」などのスーパー兵器、果ては「メカゴジラ」や「モゲラ」といった、対ゴジラ用兵器まで持ち出して戦うが、この作品にはそんな都合のいい装備は一切ない。あるものといえば74式戦車や90式戦車など通常兵器の戦車や、高射砲などが精一杯。それなのに自衛隊はガメラ不在の間にレギオンを市街地に入れまいと、圧倒的な力の差があるのにも関わらず、必死に戦い、レギオンが電磁波を頼りに行動していることを利用した、現実的な作戦プランを立てて健闘。ガメラとレギオンの最終決戦時には、必死の抗戦でガメラの援護をするなど、ガメラに負けない大活躍を見せる。

 それはガメラが「地球の守護神(決して人間そのものを守っている訳ではない)」的な立場なので、ガメラを支える存在に終始出来るので、成立する話かもしれない。しかし、この頑張りは、ただ蹂躙されるだけの他作品の防衛戦力とは違い、かなり印象の強いものとなっている。

 続いてレギオンの話だが、この怪獣、名前の由来も怪獣の造形も、かなり凝っていて格好いいのだ。まずこの怪獣、なぜ名前が、「レギオン」というと、名付け親となった自衛隊の花谷一等陸尉が、クリスチャンだったのか、ちょっとイタい趣味の人だったのか定かではないが、聖書のマルコの福音書から、キリストが悪霊に相対した時の一節「主が、『名は何か』とお尋ねになると、それは答えた。『わが名はレギオン。我々は、大勢であるがゆえに』」から引用して怪獣の名前としているのだ。

 名前の由来だが、聖書で悪霊のレギオンは最後、憑依していた墓場の男から2千頭の豚の群れに乗り移り、崖から落ちるが、映画の本編で、怪獣のレギオンも最初は数千体の群体生物だったことが大きな理由となっている。始めは体調3メートルほどの小型怪獣で、かなり多数の個体が存在していたが、体の構成組織がケイ素という、集積回路の化け物みたいな存在なので、通信し合い意志の統一や、大きな危機が迫った時に、各個体が、共生関係の頂点に君臨する、「マザーレギオン」という体長120メートルの巨大怪獣に格納されて、統一的な行動をとることができる。まさに個であり大勢。「レギオン」という名前がふさわしい怪獣といえる。

 この小型怪獣の時も、体を維持するために、食料となるガラスや半導体を求めて次々と人間を襲うので、パニック映画のような面白い要素もあるのだが、それは置いておくとして、この巨大化した完全体のレギオンは、日本の特撮史上でもかなり上位にくる造形の怪獣だと個人的に思っている。まず生命体とも人工物ともとれるような、突起物の造形が素晴らしい。しかもこれCGではなく、着ぐるみで、本編中ではかなりゴテゴテした造形にも関わらず動きまくるのだ。しかもビーム発射時は特徴的な左右の角が大きく開く。現在だったら確実にCGを追加してなんとかしようと試みるところかもしれないが、96年のCG技術ではそれは望めないと判断したのか、CGは一部触手の演出などで使うだけに留まっている。着ぐるみは数人がかりで動かしたそうだが、どう動かせばこんな生物っぽくなるのか謎だ。何度動きを見てもかなりの迫力で、「すげえ」とつぶやいてしまうほどの完成度。個人的にはゴジラシリーズの「ビオランテ」と並んで、CGを使わない造形の限界に挑戦した怪獣だと思っている。

 最後に「火薬」だが、これは平成ガメラシリーズに通じて言えることなのだが、事あるごとに火薬を使った派手な爆発が起きる。しかも、一作目となる、『ガメラ 大怪獣空中決戦』のヒットにより資金が潤沢になったおかげか、この作品はシリーズ中最大規模で、遠慮なしに爆発を繰り返す。

 なかでも凄いのが、自衛隊の戦車をレギオンがビームでなぎ払う場面で、有名なところではジブリ映画の『風の谷のナウシカ』での巨神兵の「なぎ払え!」の時の演出だろうか、アニメではよくある、ビームでなでた地面が次々と火柱をあげる演出を実写でやってしまっているのだ。他にもガメラとの対決シーンなどで効果的に爆発が多用されており、怪獣映画ファンが「こういうのを見たかった」と思うような迫力あるシーンを演出している。

 俗に「パート2」と呼ばれる作品には3タイプある。1つは『ゴッドファーザー PARTII』や『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』のように、ファンの要望にも答えつつ、従来の作品の世界観を広げて、さらに作品に奥深さをつけるタイプ。2つ目が『ランボー/怒りの脱出』や『エイリアン2』のように、「コレジャナイ感」はあるが、これはこれで面白くて楽しめるタイプ。3つ目は『スピード2』、『ジョーズ2』のように、あまりに微妙すぎて続編のナンバリングをつけないで欲しいタイプ。この作品は個人的な判断にはなるが、多分1つ目のタイプの作品だと思う。「人間ドラマ」、「怪獣の造形の美しさ」、「演出の迫力など」怪獣映画に必要な要素が全て揃っており、怪獣映画の面白さを知りたいという人は、この映画を手始めに見ても良いかもしれない。あと、ちなみにだが、前半の北海道のシーンで、当時は知名度がそれほどなかった大泉洋がチョイ役で出演したりしている。

(斎藤雅道=毎週金曜日に掲載)

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