search
とじる
トップ > その他 > 名医・博士の健康術 ★今週のテーマ 咀嚼の重要性

名医・博士の健康術 ★今週のテーマ 咀嚼の重要性

 「早く食べる」「残さな_い」習慣が肥満を育てる&不調につながる!なかなかできない“よく噛む”ことは、認知症の予防にも!!

 体に悪いと分かっていてもやめられない、なかなか改善できないことに早食いがあるのではなかろうか。
「早飯、早○○、芸のうち」「早飯、早○○、早算用」(○○は排泄に関する言葉)などといわれ、早食いが美徳の1つとされた時代に育ったシニア世代なら、なおのことだ。しかし、もはや早食いは推奨されない。「消化に悪いから?」と漠然と思っていたら、それは大きな過ち。時間をかけて、よく噛んで食べることを軽視すると、肥満の原因になるだけでなく、思わぬ不調を招くことにもなりかねない。

★内臓型肥満とさまざまな病気

 中性脂肪を貯め込んだ内臓脂肪型肥満の危険性を指摘し、それを防ぐ“糖質ちょいオフ”を提唱してきた、栗原クリニック東京・日本橋の院長・栗原毅先生は次のように言う。
「早食いは中性脂肪を増やし、内臓型肥満を招く危険な生活習慣です。一気にたくさんのものを食べて、血糖値が急激に上昇すると、膵臓からインスリンというホルモンが大量に分泌されます。インスリンは血糖値を下げるとともに、摂取した糖質や脂質を脂肪に変えて体に蓄える働きがあるため、中性脂肪が増える結果を招くことになるのです」

 つまり、同じ量の食事をしていても、早食いの人は中性脂肪が増えやすく、太りやすいというわけだ。

 血液中に中性脂肪が増えすぎる状態が頻繁に起こると、動脈硬化などの血管の病気の原因となり、エネルギーとして消費されなかった中性脂肪は内臓脂肪や皮下脂肪として蓄積される。

 生活習慣病のリスクが高いのは内臓脂肪型肥満で、高血糖、高血圧、高中性脂肪、高コレステロールの症状を複数あわせもった状態がメタボリックシンドロームだ。放置すれば、糖尿病や動脈硬化が進行し、心筋梗塞、脳梗塞などの原因となる。
「脳の満腹中枢が食事によって刺激されて、食事を抑制する信号を発するのは、食べはじめから20分程度。早食いをすると、なかなか満腹感が得られないため、食べすぎる傾向があります」(栗原先生)

 これは以前から指摘されていたことで、早食いは二重の意味で中性脂肪の増えすぎや、肥満につながりやすいということになる。
「当たり前のことですが、大事なのはよく噛んで時間をかけて食べること。これだけで血糖値の急激な上昇を防ぎ、中性脂肪の増加や、内臓型肥満を招くリスクを低減できます」(栗原先生)

★他にもある咀嚼の効用

 よく咀嚼して食べることには、この他にも複数のメリットがある。

 まず、よく噛むことによって唾液の分泌が促される。唾液は食事の消化吸収を助けるだけでなく殺菌、発がん性物質の発がん作用の抑制などの働きがあり、むし歯や歯周病など口腔内の病気、歯周病菌による糖尿病や動脈硬化、さらにがんも予防する働きがあるのだ。

 咀嚼の効用の2つめは、噛むことによって交感神経が刺激されるとともに血流がよくなり、体温が上昇して免疫力が高まること。

 また、顎から脳に至る血管の血流がよくなり、脳の「海馬」という部位が刺激されて認知症の予防につながることも分かっている。

★食習慣をどう変える?

「ひと口ごとに30回噛むのが理想ですが、無意識に早食いしてしまう方は、ひと口ごとに箸を箸置きに置いて、30回噛んだら、またひと口食べるとよいでしょう。最初は無理せず、気がついたときだけでもやってみてください」(栗原先生)

 早食いになりがちな麺類や丼ものはできるだけ避けるのもポイント。特に、麺類を日常的に食べるのは避けたほうがよい。

「麺類をよく噛んで食べる人はあまり見かけませんよね。どうしても早食いになります。高血圧の原因になる塩分が多すぎるラーメンは特におすすめできません」(栗原先生)

 食べる順序にも工夫が必要だ。まず、野菜や海藻などの食物繊維が多く、消化吸収の遅いものから食べ、主菜・主食に進めば、血糖値はゆるやかに上昇する。同じ理由で、ご飯なら白米は避け玄米や雑穀米、パンなら食パンではなくライ麦パンなど、食物繊維が多いものを食べたほうがよい。

 ここで栗原クリニック東京・日本橋を受診し、よく噛むことで糖尿病を克服した患者さんの例を紹介する。

 40代男性のBさんは、糖尿病と脂質異常症(中性脂肪値とコレステロール値の異常)で同院を受診。食事内容に大きな問題はなく、よく噛んで食べ、ご飯をひと口残すように指導された。
「忙しい仕事の合間の昼食で、よく噛んでゆっくり食べるのは大変でした」

 その苦労の甲斐あって、1カ月後には中性脂肪値、血糖値を表すHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)、脂肪肝の目安となるALTが大幅に改善した。

 食べものを粗末にしてはいけないが、体のためには食事を適度に残すことも重要と考え直す必要がある。それでも抵抗がある人は、外食の場合は「少なめ」と注文すればよい。

 栗原式食事法のポイントをまとめると、(1)外食の場合は品数の多い定食を選び、食べすぎないように少なめと注文、(2)主食は精白されていないものを選ぶ、(3)糖質の少ない野菜や海藻類から食べる、(4)できるだけひと口30回噛む、となる。

 咀嚼の効用を噛みしめながら、ゆっくり食事を楽しみたい。

◎よく噛むメリット

*糖質の吸収をゆるやかにして血糖値の急な上昇を防ぐ
*満腹感が得られ、食べすぎの防止に
*食事中・食後の消費エネルギーが増えて太りにくくなる
*食べたものが噛み砕かれるとともに唾液の分泌を促し、胃腸の負担が減る
*免疫力の向上、唾液の作用によって、歯周病だけでなく全身の病気の予防につながる
*脳の血流をよくし、認知症の予防につながる

◎早食いのデメリット

*満腹感を感じる前に食べすぎる
*急激に大量の糖質が吸収される
内臓脂肪のもとである「中性脂肪」を増やす原因に!

◎栗原先生推奨ゆっくり食べるコツ

*ひと口食べたら、箸を置く
*「普段より10回多く噛む」ことを意識
*隙間時間の早食いを避ける

***************************************
監修/栗原 毅先生
栗原クリニック東京・日本橋院長。医学博士。日本肝臓学会専門医。前慶應義塾大学特任教授、前東京女子医科大学教授。主な著書・監修書に、TJ MOOK『決定版! 内臓脂肪を落とす名医のワザ』(宝島社)など多数。

その他→

 

特集

関連ニュース

ピックアップ

新着ニュース→

もっと見る→

その他→

もっと見る→

注目タグ