俺達のプロレスTHEレジェンド 第15R 過剰な肉体による最高のパフォーマンス〈ダイナマイト・キッド〉

スポーツ 週刊実話 2014年03月26日 15時01分

 昨秋、WWEの公式サイトに「ダイナマイト・キッドが脳卒中で倒れた」との報が掲載された。晩年のキッドといえばステロイド禍の話が付いて回るため、脳卒中との因果関係は不明ながら、まずそのことを思い浮かべた人も多いだろう。

 長きにわたってステロイド系筋肉増強剤などの薬物を常用していたことは、当人が自伝にも記している通り。1986年、WWEにおける試合中のアクシデントで椎間板に重症を負ってからは、痛み止めのため覚せい剤の類いも使用したという。
 その後の車椅子生活は、このときのケガが原因だというが、ステロイド剤の副作用として骨粗しょう症もあるそうだから、そちらの影響も拭い切れない。
 ただ、そうした不幸な話ばかりがクローズアップされるものの、キッド当人はインタビュー等で「後悔していない」と断言している。

 筋肉増強剤の副作用について、まだわかっていなかった当時のことである。ジュニアクラスの背格好で超ヘビー級選手に対抗し、見た目にもパフォーマンス的にも上質のものを提供するため薬剤を使用したことは、単純に道義に反したものとは言い難い。
 そしてそのときに、人間用では飽き足らず、競走馬用の筋力増強を使用するという“過剰さ”が、キッドのプロレスラーとしての持ち味であり、凄味でもあった。ダイビング・ヘッドバットを放つ際には、あえてリングに倒れた相手から遠い側のコーナーを選択して、「登るポストを間違っているんじゃないか?」と観客が戸惑うこともたびたび。その逆で近い方のコーナーから仕掛けた場合は、相手の肩口を狙うのではなくキッチリ頭同士を“直下”でぶつけるものだから、それで額が割れて流血に至ることもあった。
 ショルダータックルも、相手が倒れるまで二度、三度と間髪入れず連続してぶちかますから、特にヘビー級選手が相手だと自然とハイスパートになっていく。相手の技を受ける際にも防御は最小限に控えて、ド派手にやられてみせる。
 「ヒールは笑顔を見せてはいけない」と常にポーカーフェースを貫き、正月の全日本プロレス恒例だったサインボール投げの際には、リング上から観客に目掛けて剛速球でボールをぶつけにいったりもした。

 小橋建太が少年時代、キッドにサインを求めて色紙を差し出すと、問答無用で破り捨てられたというエピソードにも、その徹底した自己演出ぶりが見て取れる。
 しかしそうした態度も、いつのころからか「クールでカッコいい」と受け止められ始め、対戦相手に関係なくベビーフェースとしての人気を獲得していった。一にも二にも、キッドのリング上での優れたパフォーマンスゆえのことであった。

 そんなキッドのベストバウトはどれかといえば、常に全力で戦ってきただけに、すべての試合がベストと言っても過言ではない。日本では初代タイガーマスクのデビュー戦を取り上げられることが多いけれども、これも「あの強いキッドに完勝した」とタイガー神話の幕開けとはなったが、キッドにとってみればあれが平常運転だ。
 デイビーボーイ・スミスとのタッグ『ブリティッシュ・ブルドッグス』での試合も含め、どれが一番と決めるのは非常に難しいが、ここではあえて1991年の、全日での引退試合、ジョニー・スミスとのニュー・ブリティッシュ・ブルドッグスでジョニー・エース&サニー・ビーチと戦った試合を取り上げたい。

 キッドはすでにこのとき肉低的にボロボロで、首にボルトが3本も入った状態だった。
 試合はパートナーが全てお膳立てをして、キッドはそこに往年の“フェイバリットホールド”の数々を繰り出すだけ。まさに『ダイナマイト・キッド名場面集』の趣であったが、その最後、ダイビング・ヘッドバットからサニー・ビーチを押さえ込んだ瞬間のことだった。これまで常に無表情だったキッドの表情が、ふと緩んだのだ。
 全てが終わったことによる満足感なのか、あるいは引退の哀しみだったのか。その心境は知る由もない。
 ただ、このストイックに過ぎたレスラーの引退によって、一つ時代が終わったことに間違いはなかろう。

〈ザ・ダイナマイト・キッド〉
 1958年、イギリス出身。'79年、国際プロレスに初来日。'80年からは新日、'84年以降は全日に参戦する。デイビーボーイ・スミスとのコンビ「ブリティッシュ・ブルドッグス」でも活躍。みちのくプロレスにも参戦した。

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