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米中貿易戦争の折も折「量子物理学の権威」に米国がビザを発給しなかったワケ

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提供:週刊実話

 世界的な量子物理学者、潘建偉・中国科学技術大教授が、米政府からビザが発給されず、2月17日までワシントンで開かれた学会に参加できなかった。米国では米中摩擦の影響を受け、中国への知的財産流出の懸念が高まっており、科学交流の場にまで制限が加えられた格好だ。

「潘氏は16年に中国が打ち上げた世界初の量子(クォンタム)通信衛星『墨子号』プロジェクトの中心人物です。この原理を応用した世界初の衛星暗号通信を成功させた功績が認められ、17年に発表した論文は、世界最大級の科学者団体『米科学振興協会』が発行する科学誌のサイエンス分野におけるその年の最優秀論文に中国勢として初めて選ばれています」(サイエンスライター)

 米国が警戒するのは、量子科学は暗号分野のほかにもパソコンの処理能力やネットの通信速度を飛躍的に高めたり、ステルス機を覚知するレーダーなどの開発につながったりする点である。

 中国と同分野でせめぎ合う米連邦議会は昨年末、量子科学に今後5年間で12億㌦支出する法律を作ってリードを許さない姿勢を示している。そのため技術流出の懸念から米商務省が検討するハイテク製品の輸出規制の14分野に指定されている。

 米通商代表部(USTR)は昨年3月、米通商法301条に基づき、中国の不公正な貿易慣行に関する調査報告書を出し11月に改定した。表向きは現在勃発中の貿易摩擦の是正に関するものだが、核となるのは中国のサイバーエスピオナージ(サイバー空間の諜報活動)についての詳細なリポートだ。

「中国によるサイバー諜報におけるクォンタム・コンピューティングがこれ以上進化すると何が起こるか。中国がサイバー攻撃を行ったことを絶対に割り出せないようにできるのです。現在のネットは、サイバー攻撃をすると必ず痕跡が残る。だが、コンピューティングでは跡は消せるのです。つまりスパイ行為をやりたい放題を許すことになりますから、米国はこれについても非常に脅威に思っているのです」(国際ジャーナリスト)

 諜報活動は国家統制の強い国が有利だ。この問題では、国が情報を統括する中国やロシアと民主主義と自由の恩恵にあずかる日米、欧州連合(EU)とでハッキリ線引きされ、互いに折り合えない。

「中国共産党にはユナイテッド・フロント(統一戦線工作部)という組織があり、海外向けのインフルエンス・オペレーション(影響工作)を担っています。サイバー部隊の数は10万とも言われるが、本当の数は分かりません。また予算に糸目を付けません」(同)

 米国の共和党も民主党も“チャイナパニック”の渦中にあるが、実効性のある手を打てないのが現状だ。

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