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【コンピューターゲームの20世紀 54】ファミコン最後のミリオンタイトル『星のカービィ 夢の泉の物語』

 家庭用ゲーム機の歴史は意外に古く、初めて商品化されたのは1972年に発売されたマグナボックス社の『ODYSSEY』である。その後は様々なハードが登場し、スマッシュヒットを記録したハードもいくつか存在するが、ゲームの歴史を変えたマシンと聞いて誰もが真っ先に思いつくのは、1983年登場の『ファミリーコンピュータ』であろうことは疑いの余地がない。事実、ファミコン登場以後、ゲーム業界は加速度的に進化を続けていくこととなったのだ。

 ファミコンはとても息の長いハードで、20年に渡って生産され続けた。上位機種である「スーパーファミコン」や、ライバルの「PCエンジン」「メガドライブ」などが発売されてもなお、戦い続けたのである。無論、古いハードなのでそれらに比べると性能は格段に劣るわけだが、長年研究され続けたハードだけあって、後期にはマイナーだが良質のゲームが多数発売されている。

 その代表格ともいえるのが、かつて当連載でも紹介したことのある『メタルスレイダーグローリー』であろう。ファミコン唯一となる最大容量8MbitのROMを採用した本作。従来のゲームとは比較にならないほどの美しいグラフィックと豊富なアニメーションパターンで、多くのゲームマニアを唸らせた。

 本作を手掛けたのは、先日急逝した任天堂の岩田社長も在籍したあのHAL研究所である。マイコン(この単語の響きも懐かしい)時代からの老舗メーカーだが、後に任天堂ハード向けのゲーム開発へとシフト。懐かしの名作『マッハライダー』や『バルーンファイト』、スーパーファミコン『MOTHER2』など、様々なゲームの開発に携わった。1992年には経営危機に直面したものの、任天堂の支援を受けた直後に発売した『星のカービィ 夢の泉の物語』がファミコン最後のミリオンセラーを達成。同社は見事再建を果たしたのである。

 前置きが長くなったが、今回紹介するのはファミコン版の星のカービィ。初代は1992年にゲームボーイ用ソフトとして発売された。ゲームボーイらしからぬ軽快なアクションに加え、その愛らしいキャラも支持され、世界中で大ヒットを飛ばす。そして満を持して発売したのが、ファミコン版というわけだ。

 前述のメタルスレイダーグローリーほどではないものの、本作もファミコンのハードの限界にチャレンジした作品として知られ、キャラの動きは非常に滑らか。また、擬似3D表示や多重スクロールなど、ファミコンとはとても思えないようなあっと驚く仕掛けもたくさん用意されているにもかかわらず、ほぼ処理落ちしないという抜群の安定感を誇る。また、ゲームボーイ版では「吸い込む」「吐き出す」のみだったカービィのアクションにも、新たにコピー能力が付与。この能力は以降のシリーズにも継承され、実質上、カービィ第二弾となる本作で、シリーズの方向性が確立されたといっても過言ではないだろう。さまざまな敵の能力をコピーしまくるだけでも楽しい本作。アクションゲームとしての難易度は低いので、難しさを求めている人には少々物足りないかもしれないが、ゲームバランス自体はシリーズ最高峰。ゲームボーイ版から大幅に増えたステージも好印象で、長く遊べる一作に仕上がっており、ミリオンヒットも納得の完成度であった。

 しかしながら、本作のミリオンヒットもハード寿命の延命には繋がらず、翌1994年の発売本数はたったの1本。一方、後継機のスーパーファミコンは1992年に『ドラゴンクエストV』『ファイナルファンタジーV』、さらにはあの『スーパーマリオカート』を発売し、ミリオン続出の大盛り上がりを見せていた。こうして長きに渡ってゲームファンに愛されたファミコンは、静かにその役目を終えたのである。が、Wii(WiiU)や3DSでバーチャルコンソールの配信が始まると、本作を始めとする時代を彩った名作たちが手頃な価格で楽しめるようになり、ファミコンブームが密かに再燃している。

 ちなみに夢の泉の物語については、2002年にゲームボーイアドバンスで『夢の泉デラックス』としてリメイクが行われ、また2012年からは3DSで『3Dクラシックス版』がダウンロード配信されている。ファミコン版と比べてゲーム内容に大きな違いはないものの、細かな調整が行われているので、その違いを探してみるのもまた一興だ。

 今や任天堂を代表するBIGタイトルの1つとなった星のカービィは、これからも世界中で愛され続けることだろう。そしていちゲームファンとして、これまで数多くの作品で我々を楽しませてくれた岩田社長に、哀悼の意を表します。

(内田@ゲイム脳=隔週月曜日に掲載)

DATA
発売日…1993年
メーカー…任天堂
ハード…ファミコン
ジャンル…アクション
(C)1993 HAL LABORATORY,INC.
(C)1993 NINTENDO

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