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「福良さんみたいな人になりたい」“松坂世代”オリックス小谷野栄一引退会見で涙

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小谷野栄一

 オリックスバファローズの小谷野栄一内野手(37)が、今シーズン限りでの引退を決意した。27日の試合前に記者会見を行った。

 小谷野は2002年にドラフト5位で創価大学から北海道日本ハムファイターズに入団。つなぎの4番として主軸を任されるなど、主力として3度のリーグ優勝に貢献。2010年には打点王、ベストナイン、ゴールデングラブ賞を受賞するなど輝かしい実績を持つ小谷野だが、パニック障害に悩まされたこともあった。2004年の秋に行われたフェニックスリーグ(秋季教育リーグ)で当時日本ハムの二軍監督代行だった福良淳一監督に「何分でもいいから」と打席に送られるなど親身に接したことが、のちに活躍するキッカケになったのはテレビ番組でも紹介されたほど有名な話。

 「福良さんがいなかったら僕は今、ここにいないですから。福良監督を男にするためにオリックスを選びました」

 2014年のオフにFA宣言し、西武との争奪戦になったが、小谷野の気持ちは当初から決まっていたという。2015年からオリックスに移籍した小谷野だが、死球によるアクシデントなどけがの影響で、1年目は56試合、2年目は50試合の出場にとどまった。本人も「何もできなかった」と悔やんでいたが、昨年は130試合に出場。打率.277、47打点と“頼れる男”として他球団から嫌がられる本来の小谷野が復活した。

 会見前に恩師・福良監督からは「よくやった」と声をかけてもらったそうで、会見では「福良さんを男にできなかったのが心残り。僕も福良さんのような人になりない。僕が大変なときには近くにいてくれた。僕も人に対してああいう存在になりたいですね」と口にした。

 また小谷野はファンに対してもアツイ気持ちを持つ。ヒーローインタビューでは「皆さんも一緒に戦いましょう」とたびたび呼びかけ、ファンもチームメイト同様、小谷野の言葉を信じて応援していた。昨年、東京ドームで行われた巨人との交流戦で3連勝を飾ったのだが、関東にもかかわらずファンの声援がすごかったことを本人に話すと「すごかったね。やっぱりああいう声援が、こういう結果になったと思うし、うれしいよね」と語っていた。後に本拠地でヒーローインタビューを受けた際も「みなさんの声は聞こえています。みなさんの声援が僕たちの力になって、きょうのような結果につながるので、これからもご声援よろしくお願いします」と話している。

 会見では「移籍したときに素晴らしい応援歌を作っていただいた。でもオリックスファンには感謝より申し訳ない気持ちが強い。何もできなかったので。もっと体が動けたら…いつか必ず恩返しをするので、少し時間をください」と話している。

 春季キャンプは2軍スタートだったが、これは福良監督と話し合って決めたこと。「いつ上がるかは栄一に任せてある」と指揮官は話していた。その言葉通りキャンプ終盤に一軍に合流すると、シーズン序盤は昨年のような活躍を見せていた。しかし、打撃不振に陥ると珍しく死球に激高する場面もあった。8月7日に打撃不振により登録抹消。今シーズンで契約が切れることもあって、去就が注目されていたが、「1回目に抹消される前あたりから心と体のバランスにズレが感じて、最後に登録されたときは(右ひじのけがで)投げられなかったから、打ってやろうと思ったけど打てなかった。ファームでも動けなくて限界を感じた」という。

 現役通算成績は出場1393試合、打率.264、1260安打、71本塁打、566打点。松坂世代の小谷野だが、今年は中日との交流戦で松坂との対戦も実現している。巨人の杉内俊哉、DeNAのG 後藤武敏、独立リーグの村田修一と松坂世代の引退が続いており、小谷野も加わることになったのは残念。幼なじみである松坂には会見前日に電話で伝えたそう。「まだヒット打ってないじゃん」と笑いながら言われたそうだが、「もう限界なんだよ」と伝えると、労いの言葉をかけてくれたという。小谷野は「自分みたいな選手が松坂世代と言われたことが嬉しい。松坂世代と呼ばれることに誇りを持っているし、彼にはまだ頑張ってほしい」と松坂について語っている。

 会見前には律儀にオリックスベンチと古巣の日本ハムベンチを訪ねて、監督、コーチ、スタッフ、そしてマスコミ陣にまであいさつ回りをしていた。日本ハムの栗山英樹監督からは「これからは普通の先輩、後輩に戻るわけだから、飯に行こう」と言われたという。会見では日本ハムファンにも感謝の言葉を口にしていた。

 テレビカメラが10台も入り、報道陣も約60人詰めかけるなど、会場となった京セラドーム大阪のインタビュールームは人が入り切れない状態。小谷野栄一という選手がいかに愛されていたのかが分かる会見は30分を超えた。最後にサプライズで中島宏之が登場。彼は小谷野と同じ2015年にオリックスに移籍。小谷野を「栄ちゃん」と呼んで、ビジター試合ではホテルで一緒に素振りを見てチェックするなど仲良しだった。花束を持って登場する中島を見ると、「えっ?ナカジ?ズルイよー」と言いながら再び泣き顔に。報道陣からは盛大な拍手が送られ小谷野の引退会見は終了した。

 球団は来月5日に京セラドームで行われる本拠地最終戦のソフトバンク戦でセレモニーを行うと発表。もちろん小谷野もベンチ入りする。小谷野は「明日から舞洲で練習はしますと田口二軍監督に頼んできた」とやる気満々。「当日はお祭りなんで楽しみたい」と意気込んでいる。当日は福良監督の最後の挨拶も予定されている。ファンには温かく見送ってもらいたい。

 今後については「まだ白紙なんですけど、野球に携わる仕事をしたい」という小谷野。シーズンオフには園部聡ら若い選手に声をかけて合同自主トレを行っている。日本ハム時代から後輩の面倒見がいいことには定評がある。大谷翔平がメジャーで活躍していることに関しても「彼は人間的にも素晴らしいから成功するでしょう。翔平なら娘を嫁に出してもいいな(笑)。それぐらいいいヤツですよ」と笑顔で語っていた。

 小谷野は年下の選手に対する姿勢も口にしていた。「若い選手には教えるんじゃなく、見せることを考えて一緒にやってました。教えると押しつけるになっちゃうから」という持論を聞くと、指導者として選手の育成も期待したいところ。それに関しては「もちろん!そこを目指してやっていきたいです」と話しており、いずれまた違う形でオリックスのユニフォームを着る日が来るかもしれない。

 まずは10月5日の最後の打席を楽しみたい。

取材・文・写真 / どら増田

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