【不朽の名作】麻雀に全てを賭けた男達の生き様が見れる『麻雀放浪記』

まにあっく 2017年04月15日 12時00分

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 1984年公開の『麻雀放浪記』は、阿佐田哲也原作の同名小説の第1巻「青春編」を映像化したものだ。イラストレーターの和田誠が初監督した作品で、当時は伊丹十三監督と共に異業種から映画監督になった人物として知られることとなる。

 作品の特徴としては、全編モノクロな点がある。ミニチュアを使った、冒頭の焼け跡のカットや、セットや古い建物の質感が、この演出により強調されており、戦後間もない頃の空気感を演出するためにいい味を出す。

 作品のメインの登場人物たちは、賭博麻雀に人生を賭けている博徒たちだ。その博徒達の生き様が、学生から賭博の世界にのめり込んだ青年・哲(真田広之)を中心に描かれる。

 内容は細かい配牌などの描写はなく、賭博をしている人々の様子を描写することに重きを置いているため、麻雀を知らなくても楽しめる。しかし、麻雀を知っている方がより楽しめるかもしれない。いや、他の麻雀系の作品を知っていた方がいいという方がより正確か。

 当時は自動卓などなかったので、自身が有利になるようにツミコミをしたり、サイコロに細工をしたり、出目を偏らせる振り方をするなどは当たり前。本編中にも「燕返し」を始めとしたイカサマが飛び交う。漫画『哲也-雀聖と呼ばれた男-』やVシネマの雀鬼シリーズでよく見る光景がこの作品でも展開される。これを映画でやってしまうところが、多種多様なジャンルの作品が登場した80年代の魅力的な点か。アクション俳優出身である真田の動作の早さが、イカサマをするときに活かされる。

 ちなみに主要な登場人物は、今の基準でいえば全員社会不適合者と言えるだろう。しかし、登場する人物の誰もが、どうしょもないが魅力的だ。勝負事にイカサマは付き物。見破られない方が悪いとばかりに、悪びれもせず2連続天和(親の配牌の時点で既に上がっている状態。確率は33万分の1)で上がる出目徳(高品格)。カモを見つけると、それにつけこみ徹底的にかすめとるドサ健(鹿賀丈史)。哲に麻雀やチンチロリンなどの賭博を最初に教えた上州虎(名古屋章)など、個性的な人物が、公営ギャンブルではありえない、違法賭博だからこその殺伐さを出している。

 他にも進駐軍相手の賭博麻雀場を経営するママ(加賀まりこ)や、死んだ父親の店を引き継いだが、ドサ健の行き過ぎた勝負師としての本能に振り回される愛人のまゆみ(大竹しのぶ)など、女性陣も、しっかりとストーリーに関わり花を添える。

 この作品の主要登場人物の間では、生き死にを含め、全ての事柄が賭博、特に麻雀で決まる。あらゆる決め事が麻雀賭博という絶対的な価値感で動いているのだ。この点は、最近のカードゲームを題材とした映像作品などにも通じるものがあるだろう。「何でカードゲームで命賭けるの!?」というツッコミが、この世界では「何で麻雀に命賭けるの!?」で成立する。しかも、この作品のような賭場の世界は、雀鬼シリーズが雀士・桜井章一の実体験を元に作られているように、誇張は多少あるものの、戦後日本の世界に確実に存在したものなのだ。

 その点を考慮すると、劇中で哲は、賭博をまだ教わっている途中の立場の人物なので、作中で博徒たちに振り回されはするが、まだ勝負師にはなりきれていない印象を受ける。他の登場人物達がむきになりながら賭博麻雀に挑むなか、一歩引いたテンションでいることが多いのだ。という訳で、この作品の中では特に出目徳やドサ健に魅力を感じる人が多いだろう。正直主役を喰うレベルだ。

 勝ちつつも、これではむしり取り足りないと青天井ルール(麻雀の採点方法の一つで超ハイリスク・ハイリターン)を提案する出目徳。それをまゆみ家の不動産権を賭けて挑むドサ健。そんな全てを失いかねない緊迫した場面で、ツミコミで出目徳が淡々と「ちょっと待ってくれ。上がってんだよ」と、天和で上がる無茶苦茶さ。描写はないものの、しくじると指や命が飛びかねない修羅場をくぐってきた様子がこのシーンだけでわかる。

 ドサ健も普通の作品ならば確実にダメな部類の人間なのだが、この作品では、博徒としてのプロ意識のようなものが感じられ、どの台詞も印象に残る。「あいつは俺の女だ。俺は死んだって手前っちに甘ったれやしねえが、あいつだけには違うんだ。あいつと死んだおふくろと、この2人だけには迷惑かけたってかまわねえんだ」という自己中に振り切った発言も、らしいなと好感が持ててしまうほど。

 ラスト対局では、人買の女衒の達(加藤健一)と哲が同じ卓を囲んでいるものの、ほぼ傍観者のような状態で、出目徳とドサ健のやり取りが中心に描かれる。最後は出目徳が発作に倒れ、終局となるが、ドサ健が「死んだやつは負けだ」と根こそぎかっぱぐ姿がなんとも言えない。最後は出目徳の自宅近くの土手に遺体を転がり落とすが、この時もドサ健「いい勝負だったな、おっさん」と清々しい顔。麻雀の魔力に取り憑かれた男達の生き様がひしひしと伝わってくる。

(斎藤雅道=毎週土曜日に掲載)

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