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本好きのリビドー(253)

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提供:週刊実話

◎悦楽の1冊
『オカルト・クロニクル』 松閣オルタ 洋泉社 1800円(本体価格)

★不可解な謎に迫るオカルト研究読本

 昭和から平成へと改まって少したった’89年の夏。埼玉県内のある地域で、低学年の小学生や幼稚園児の幾人かが急に普段通い慣れたはずの通学路で怯えた表情を浮かべ、硬直したまま一歩も前へ動けなくなり、泣きながら登校を拒否する現象が相次いだという。

 いずれのケースも医師の診断で健康状態に何の問題もなく、厳密な聞き取り調査の結果、いじめや虐待が理由でもない。そこで他に何らかの心因性の原因を推定した精神医療の専門家の判断で、子供たちに絵を描かせてみたところめいめい自分と同じ年格好の少女像を描き出したのだとか。ところが、何の相互に連絡のない各々の画用紙上に出現した少女の姿には、そろいもそろって首から上が欠けていた―。

 それから数カ月後に逮捕されたのが当時“今田勇子”を名乗り被害者家族宛てに遺骨と声明を送りつけた、連続幼女誘拐殺害事件の犯人・宮﨑勤で、件の子供たちの登校エリアはまさに宮崎の犯行圏内に丸々重なっていた…、とまで聞かされれば、いささか背筋が寒くなるのも致し方なかろう。

 と、ここまでは筆者があくまで怪談じみた都市伝説のひとつと釘を刺された上で耳にした余談にすぎない。とはいえ比較対象として不適当かも知れぬが、9・11テロをアメリカの自作自演によるものと断じたり、東日本大震災を某国機関が秘密裏に開発した地震兵器によって引き起こされたと真顔で語る向きよりは、妙に後ろ髪を引かれるごとき信憑性を感じさせる点、同列にして一笑に付する気にはなれない。

 本書はロシア史上最大の謎と呼ばれる「ディアトロフ峠事件」に始まり国内外の怪事件・奇現象の数々を徹底的に解析。“深淵を覗き込む者は、深淵から見つめ返される”思いが味わえる。
_(居島一平/芸人)

【昇天の1冊】
 現在放映中のNHK大河『いだてん』は、現代劇ということもあって視聴率が低迷しているというが、なかなかに楽しめるドラマだ。主人公の金栗四三(日本初の五輪マラソン出場者)をテーマとした書籍も多く刊行されており、その内の1冊が『復刻新装版 ランニング』(時事通信社/1500円+税)だ。

 四三がストックホルム五輪に出場した後の大正5年、長距離ランナーの育成とマラソンの普及を目的に刊行された。当時はマラソンはおろか、スポーツ上達のためのマニュアルなどは皆無だった。四三は、誰も「上達進歩しても、その方法なり、注意なりについて自己の意見を発表し、書き残すことをしない」ため、このままでは日本のスポーツがいつまでも発展しないという意を強くしていた。

 そこで「走るときの目線は3、4間前方を見る。手と足と呼吸は連絡して調和させる。一呼吸を4分割する」など、経験から導いた“極意”を記したという。

 呼吸を4分割、つまりスッスッと2度に分けて息を吸い、ハッハッと2度に分けて吐く。現在50代以上のオヤジ世代なら、学校の体育の授業で教わった記憶があるだろう。そう、この呼吸法を編み出した発案者こそ、今年の大河ドラマの主人公なのである。

 そうした四三の考えがそのまま“復刻”されたのがこの本。加えて、現代のマラソン理論との対比を増田明美さんが解説している。実際のマラソンはシンドいだろうが、読んだだけで走った気になる1冊だ。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

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