大特集 第100回全国高校野球大会 甲子園に棲む魔物(1)

スポーツ 週刊実話 2018年08月10日 13時03分

大特集 第100回全国高校野球大会 甲子園に棲む魔物(1)提供:週刊実話

 甲子園には「魔物」が棲んでいる。その魔物は気まぐれで、残酷でもある。観戦者が球児のプレーに見入っていた時、ふと、顔をのぞかせ、その一瞬が勝敗の明暗を決めてしまう。過去99回の大会でその魔物に取りつかれた球児は、決して少なくない――。

 昨夏、魔物は「史上初の快挙」を奪い去った。
 8月19日、史上初の2度目の春夏連覇を目指す大阪桐蔭が3回戦で消えた。精鋭を集めた強豪校は圧倒的な優勝候補であったが、ゲームセットまであと1人と迫った9回裏二死、仙台育英のベスト8進出を許してしまった。ランナー一、二塁。何の変哲もない遊ゴロが転がり、一塁に送球された。打者走者は頭から滑り込む。ファーストミットに送球が収まった、次の瞬間だった。
 「正直、終わったなと。ショートがセカンドに放ったと思ったら…」(仙台育英・佐々木順一朗監督)
 「(遊撃から二塁へは)タイミングが合わなかったんでしょうか。誰がどうこうではない」(大阪桐蔭・西谷浩一監督)
 捕球した一塁手は足をベースに付けていなかった。捕球後、右足でベースを踏み直そうとしたが、塁審は両腕を広げた。動揺した投手はその後、サヨナラ打を許してしまった。
 布石はあった。7回の守備で一塁手は打者走者と交錯し、右ふくらはぎを蹴られている。その痛みが蘇ったのだろうか。もっと言えば、その一塁手は大阪府大会中の練習で頭部にボールをぶつけるアクシデントにも見舞われていた。

 誰もが試合終了を確信した瞬間の“魔物降臨”といえば、92回大会('10年)の仙台育英対開星(島根)もそうだ。仙台育英は開星の右腕・白根尚貴を打ち崩せず、2点を追って9回表の攻撃を迎えた。敵失で1点は返したものの、二死。満塁とはいえ、白根の速球は衰えていなかった。力のない打球が中堅手の上空に舞う。白根は勝利を確信したが、まさかの落球。走者2人が帰還し、そのまま逆転勝ちした。

 非情と温情が交錯したドラマもあった。
 80回大会('98年)の2回戦、宇部商(山口)対豊田大谷(愛知)は延長15回に突入した。その熱戦に幕を引いたのは、黒子である球審だった。15回裏無死満塁、宇部商の左腕・藤田修平はサイン交換後、投球モーションに入ったが、また左腕をダラリと下げたのだ。球審がベース前に歩を進め、藤田を指差し、ボークを宣告。三塁走者に進塁を指示した。ボーク宣告によるサヨナラ負けは、この1試合だけだ。

 甲子園には、勝利校の主将に球審がボールを渡す慣例がある。藤田は整列後、試合球を球審に返そうとしたとき、気がつかないふりをした。
 「取っておきなさい。来年また…」
 小声で励ました。藤田が2年生であることを知っていたのだ。豊田大谷にはポケットから別のボールを出して渡した。
 甲子園の魔物は、もっとも冷酷な終焉をさせたが、「審判も血の通った人なんだ」と、教えたかったのかもしれない。

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