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イスラム教で大揺れの『インドネシア』と『マレーシア』

 東南アジアの先進国マレーシアとインドネシアがイスラム教で揺れている。

 マレーシアで問題になっているのは一夫多妻が認められているイスラム教徒に「児童婚」が許されるのかという社会問題だ。41歳の男性と娘の親友だった11歳の少女が結婚したのだが、「愛し合っている」との男性の主張にマレーシア世論は反発し、これが発端となって「児童婚根絶」へ動き出したのだ。

「現地の報道によると、少女はタイ人で、両親は借金を抱えており、男性側から支払われた持参金は返済に充てられたということです。少女はまだ友達との遊びが楽しい年代ですが、学校にも通えないことから『そんな子供にまともな判断ができるわけない』と周囲は夫となった男性を批判しています。2人は国内で正式な手続きが取れないことからタイで結婚しましたが、マレーシア政府は結婚を非合法と認定しました。少女の両親はタイに帰国したため、マレーシア政府は少女を保護下に置いています」(マレーシア在日本人会社員)

 この結婚をきっかけに、政府は長年見送られてきた「児童婚」廃止に乗り出した。現行法は男女とも結婚最低年齢は18歳だが、州政府が承認すれば女性は16歳から認められる。政府は女性の最低年齢も一律18歳とする法改正を検討中だ。

「とはいえイスラム教徒は、法定年齢以下でも宗教裁判所が承認すれば結婚が認められるのです。政府によると一昨年までの10年間で、約1万5000組が児童婚をしており、その大半はイスラム教徒でした。16年には14歳の少女をレイプした男が、少女と結婚したことを理由に宗教裁判所で刑罰を免れるというひどい例もあります」(人権NPO)

 ただ事はそう単純ではない。
「児童婚が適切な解決策になることもあるのです。イスラム教は中絶を原則禁止です。ですから妊娠が発覚すれば、どんなに若くても結婚させてしまう。政府の調査によると性行為経験のある10代のうち1割しか避妊していないというデータもあり、望まない妊娠による子供の遺棄が過去8年で911件も起きています。ですから今回のような11歳の児童の場合は体が成熟していないから反対ですが、14歳なら全く問題ないと彼らは捉え、結婚年齢の18歳引き上げには反対なのです。要するに子供を捨てたり、未婚で子供を産んだりするよりは、幼くても結婚した方がよいという現実な考えで、政府の理想とは真っ向対立しているのです」(同)

 ここには日本の「幼な妻」などいう甘美な響きはない。

 一方、東南アジアの主要国でも特にイスラム教徒の割合が大きいインドネシアでは、一昨年5月、同国第2の都市スラバヤでイスラム過激派の一家が3つのキリスト教会で自爆テロを起こした。スマトラ島では昨年8月、イスラムの礼拝を呼びかけるスピーカーの音が大きいと苦情を言った仏教徒の女性に地裁が、宗教冒涜罪で禁錮1年6カ月の判決を下し、仏教寺院が襲撃される事件も起きた。ジャワ島などのヒンドゥー教寺院も何者かに相次いで破壊されている。

 熱心なイスラム教の一団が一昨年末某州で、カトリック教徒の埋葬を公共墓地で行おうとし、木製の十字架を持ち込んだ家族に対し、「キリスト教のシンボルを持ち込んではならない」と十字架をT字形に切断するという一件が持ち上がった。その切断写真がSNSで拡散し大きな議論となった。

「インドネシアには、デヴィ・スカルノ(デヴィ夫人)の夫初代スカルノ大統領が1945年の独立時、国是として憲法で定めた理念である国是『パンチャシラ』(建国五原則)があります。パンチャシラは、多民族国家で様々な宗教を持つ国民が共存するため特定の宗教を国教とせず、異なる宗教も尊重し合うよう求めたものですが、敬虔なイスラム教信者ほど自らの教義を優先して、パンチャシラや憲法に反しているのです」(同)

 今年4月の大統領選で再選を狙うジョコ大統領は、世俗派イスラム教徒で、パンチャシラを推進し少数派に配慮する政治を進めてきたが、昨年6月の統一地方選でイスラム勢力に支持基盤を崩され、副大統領候補に国内最大のイスラム組織の前総裁を指名した。イスラム勢力に配慮した政権運営をせざるを得ない状況だ。

 いまやGDP世界16位のインドネシアや同40位のマレーシアの抱える闇は深い。

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