背景には深刻な人手不足があるが、この法案が通れば、これまで認められていなかった単純労働に従事する外国人の受け入れが解禁されることになる。政府の試算では、制度導入初年度に最大4万7550人、5年目までの累計で最大34万5150人を受け入れる見込みだ。
一部では「実質的な移民政策に舵を切った」と言われる政府の方針だが、これによって日本の裏社会にも激震が走るという。
入国管理局の関係者はこう断言する。
「政府肝入りの方針。法案は確実に通る。そうなれば、数年以内に不良外国人の数は2倍、いや3〜4倍に膨れ上がるのは間違いない。当然、治安も悪化する。我々入管関係者にとっては、確定事項のようなものです」
いったいどんな事態が待ち受けているのか。
警視庁組織犯罪対策部の関係者は、政府の方針に「大きな不安を感じる」と語り、次のように続けた。
「不良外国人勢力のマフィア化とその細分化、多様化はすでに始まっている。ほんの5〜6年くらい前までは、規模の大きな外国人勢力と言えば、準暴力団指定を受けたチャイニーズドラゴンくらいのものだったが、最近はベトナムやマレーシアといった東南アジア系の新たな犯罪集団が急速に台頭してきた。彼らの多くは、留学生とは名ばかりの、カネ目当ての“偽装留学生”だ。これに加え、単純労働の外国人が大挙して押し寄せることになれば、外国人マフィアの数はさらに増大し、現状の治安維持対策を根本から見直す必要が出てくるだろう」
警察には苦い経験がある。政府による中国人留学生の拡大方針によって、’90年代初頭から2000年代前半にかけて中国人留学生の数が急増。同時に、彼らによる犯罪が多発することになったのだ。
その背景には“警察の弱点”があったと、組対部の関係者は続ける。
「当時、外国人犯罪を管轄していたのは国際捜査課(現在は組織犯罪対策部2課が担当)だが、予算的にも人員的にも、暴力団を担当する4課に比べ、圧倒的に不足していた。そのため情報収集もままならず、結果的に中国系不良集団の跋扈を招いてしまったんだ」
では、組対2課ができた現在は改善されているのか。
「正直、まだまだだね。準暴力団指定したチャイニーズドラゴンの実態すら、まともに掴めていないのが現状だ。今後、急増する外国人犯罪を、まともに検挙できるのか。多数の言語に対応する能力が警察にあるのか。警察にとっても想定外の状況が生まれてくるはずだよ」(同)
実は、すでに将来の日本を予見させるような事態が生じている。埼玉県某市を根城に活動するベトナム人ギャング集団の幹部が、本誌の取材に応じた。
(明日に続く)