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英会話教室は好調 競争激化する教育業界の明暗

 学習塾や予備校、英会話教室や資格スクールといった事業を展開する教育業界に、ここ数年、異変が起こっている。

 矢野経済研究所の調査によると、日本の教育関連事業全体の市場規模は'16年度2兆5162億円。前年度比0.6%増加しており、専門家たちの間では、今後も上昇傾向が続くと予測している。

 しかし、民間の大手信用調査会社帝国データバンクの調査では、今年に入って8月までの倒産件数は65件。昨年の57件を上回り、2015年以降、3年連続で増加傾向だ。この勢いは、ここ3年では過去最高、リーマンショック直後をも超える勢いだというのだが、市場規模が拡大しているのに、なぜ倒産件数が増えているのか。教育関連事業の関係者はこう分析する。

 「件数自体は増えていますが負債総額は8月末で20億円を切り過去10年で最も低い。少子高齢化の影響で競争が激化し、規模の経済を活かせる大手に人が集まっているのに対して、資本力のない小規模の学習塾や資格スクールが淘汰されているのでしょう」

 実際、倒産した企業の資本金は、5000万円以下の小規模の会社が59件となり、全体の90・8%を占めている。大手企業はむしろ伸びているため、明暗が分かれる結果となっている。

 また、一時期は落ち込んでいた英会話関連の教室も、ここ数年は好調だと英会話教室の関係者は語る。

 「1980年代以降は、海外旅行ブームと企業の海外進出で英会話教室の需要が急激に伸びました。しかし、業界最大手の外国語教室運営会社NOVAの倒産やリーマンショックの影響で、2006年に約1364億円だった市場が、2010年には691億円、受講者も956万人から401万人にまで減少していました。ここ数年は、インバウンド客の増加や'20年に開催される東京オリンピックなどの影響もあり、英会話教室に受講者が殺到していますね」

 それは数値でも明らかで、矢野経済研究所の「語学ビジネスに関する調査」によると、外国語教室全体の市場規模は'12年度で3244億円、'16年度は3490億円まで伸びている。

 さらに日本の英語教育が見直されたのが追い風になっているという。

 「'20年度からは、英語教育は激変します。『外国語活動』の授業が小学3・4年生で必修化し、5・6年生では『英語』が正式な教科へと変わります。小学校からの英語教育が過熱し、英会話教室や英語に特化した学習塾は、今後も需要が増えることが予測されますね」(同)

 とはいえ、必ずしも安泰とは言えなさそうだ。最近の教育産業は異業種、特にIT企業の参入や連携が相次ぎ競争が激化している。

 例えば、IT大手のKDDIは、全国約250の英会話教室を運営する業界大手イーオンHDを傘下に入れ、通信やネット技術を融合させた最先端の教育サービスで新規事業確保を目指している。他にも、静岡県から中部地方を中心に全国展開する秀英予備校はeラーニンシステム開発のデジタル・ナレッジと提携し、AI(人工知能)を活用した英語教材作成機能を提供している。

 「従来の教室型の英会話スクールや学習塾は、このようなITを駆使した企業に押され気味。特にオンラインで授業を行うeラーニング市場がここ数年で大幅に伸びています。この潮流に対応できないと大手といえども取り残されてしまうでしょう」(業界関係者)

 競争が激化している一方で、教育業界を活気づける動きもある。それは2020年から全国の小学校でスタートするプログラミング教育だ。

 「プログラミング教育と騒いでいますが、現場では圧倒的に指導者が足りていません。そのため子供だけでなく、指導者予備軍である大人も民間教室に殺到しています」(同)

 これをビジネスチャンスと捉えた教育関係の企業の動きが活発化している。

 「最近では、ディズニーと提携することを公表したプログラミング教育を展開するライフイズテックが、指導者養成にも力を入れることを公表し注目が集まっています。また、IT大手サイバーエージェント傘下の小学生向けプログラミング教育事業のシーエーテックキッズは、2018年9月に、小学生のためのプログラミングコンテストを開催し業界の話題をさらいました」(同)

 少子化が進み、衰退化すると思われていた教育業界だが、今後も需要は拡大するだろう。一方で競争は激化し、中小企業は何かひとつでも“強味”を持たないと淘汰される気配が濃厚という厳しい現実を突き付けられているようだ。

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