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08年 米国発「世界同時恐慌」の恐怖!

 米国には年明け5日間の株価推移がその年の相場を決めるというジンクスがあるそうだが、最近では、日本株のほうがこのジンクスが当てはまるという。9日、日経平均は70円上昇したが、今年に入って4営業日合計では708円の下落。そんな中、「教科書でしか知り得なかった世界同時恐慌が現実味を増してきた!」と、金融マンが震え上がっているという。
 その理由は、なんといっても信用力の低い個人向け住宅融資(プライムローン)のバブルが弾け、世界中で巨額の損失が発生しているためだ。火の手は日本の金融機関にも及び、大手銀行6グループは今年3月期で総額3000億円超の損失計上が避けられそうにない。
 だが、それ以上に深刻なのは震源地の米国。巨額の損失を被ったメリルリンチとシティグループではCEO会長が引責辞任に追い込まれた。中東マネーの支援を受けたが、「まるでドロ沼。損失額がどれぐらいの規模に膨らむのか、正確なところは誰も分からないのではないか」(大手証券幹部)という状況。
 米政府は邦貨換算で10兆円超の損失になると試算しているが、経済協力開発機構(OESD)は最大で約33兆円に達する恐れがある、と試算している。
 「ここまで市場が混乱するとは想定していなかった」。傘下のみずほ証券がサブプライムローン債権にドップリ浸かったことから3月期で1700億円超の損失を見込み、日本の金融機関では最大の被害を被る可能性が強いみずほフィナンシャルグループの前田晃伸社長が、そう言って唇を噛んだのも無理はない。
 逆にサブプライム・ショックでホクソ笑んだのが石油投機筋だ。ニューヨーク原油は2日、ついに1バレル=100ドルを突破。かつて小糸製作所の株を買占め、トヨタグループに挑戦状を叩きつけたブーン・ピケンズ氏が石油投機筋に変身した直後「1バレル=100ドルまで急騰する」と豪語したものの、当時は「例によっての大風呂敷か」と誰も信じなかった水準である。

 「米国は記録的な株安、ドル安だから一獲千金を目論む投機筋が手っ取り早い錬金手段として原油に群がった。その煽りで原材料が高騰し、ガソリン価格も高騰している。円高ドル安に加えて、ニューヨーク市場に歩調を合せるように株安の洗礼を受けている日本企業とすれば、まさにトリプルパンチ。米経済が立ち直らなければ日本経済はメチャクチャです」(経済部記者)
 ところが、米金融機関モルガン・スタンレーのスティーブン・ローチ、アジア太平洋会長は昨年暮れ、「米国の景気は08年になって後退する可能性が高く、米国を最大の輸出市場とするアジアの景気に深刻な影響を与える。中でも日本経済が受ける打撃は大きい」との見通しを語っているのだ。これ以上の円高ドル安が進めば輸出企業は大きなダメージを被る。
 日産自動車は通期の為替レートを1ドル=117円に設定しているため、1ドル=108円で推移した場合は400億円以上の減益要因となる。トヨタ自動車も例外ではない。同社は1ドル=110円で設定しており、現在の為替レートとの乖離分だけで150億円超の利益が消えてしまう。1ドル=100円を突破する水準になれば、悲鳴を上げる。
 だが、それ以上にダメージが大きいのが米国市場の低迷だ。原油高で燃費に優れた日本車が存在感を増すとはいえ、不況が蔓延して消費者心理が冷え込めば車の購買意欲は確実に低下する。国内販売で苦戦を強いられている一方、営業利益の7割を北米で稼ぐ「勝ち組トヨタ」にとっては死活問題に発展しかねない。
 「危機感を募らせているのは自動車メーカーだけではありません。米国では住宅投資への意欲が急速に冷え込んでおり、コマツは北米での建設機械の売上高が2桁、日立建機に至っては4割以上も落ち込んでいる。家電メーカーも戦々恐々としている。低価格とはいえ、米ビジオなどの品質では見劣りしないノーブランド商品が飛ぶように売れ、日本メーカーがシェアを奪われているのです」(大手証券マン)
 もし、米国発の世界同時大恐慌に発展しようものなら日本企業は次々と淘汰され、ビジオのような新興勢力が存在感を増すのは明らかだ。しかもモルガン・スタンレーの首脳によれば、米国は08年から“危険水域”に踏み込むというのである。
 「その場合、市場では平均株価が1万2000円を割り込むのではないかとの観測が燻っている。世界恐慌となれば底なし沼のアリ地獄に陥ってしまう」(金融筋)
 米経済が立ち直ってくれることを祈るばかりだ。

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