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パ・リーグにあって、セ・リーグにないもの(2) チケット販売

 返金コーナーに観客が殺到…。5月1日、横浜DeNAは“異例のチケット販売”を行った。同日から6日までの本拠地6連戦で、“観客の満足度”によって『1枚4000円の一塁側内野席チケット』の代金返金に応じる企画を試みた(1試合50枚)。もちろん、前例はない。一部報道にもあったように、全額返金を求めたファンも少なくなかったという。

 試合結果だが、東京ヤクルトに『0対7』で惨敗。この時点で今季ワーストタイの6連敗、24試合目で『9度目の完封負け』と、ドロ沼の醜態をファンに晒してしまった。
 しかし、このチケット販売方法は「テストする意義があった」と言っていいだろう。プロ野球の観戦チケットは、たとえるなら、「保証書のない家電製品」のようなものである。購入した日の試合が「好ゲームになる保証」はなく、お目当ての選手が故障等で出場しない可能性もある。
 <横浜DeNAベイスターズが勝った場合はチケット代の半額まで、負けた場合は全額まで返金の上限とし…>
 横浜DeNAのホームページで、紹介されていた。同球団のキャッチフレーズは「熱いゼ!」。そのフレーズ通り、ファンのハートを熱くさせなければと、チケットを販売した後にも責任を取る“テスト商法”だ。

 パ・リーグ6球団は共存共栄の意識が強い。07年に共同事業会社『パシフィック・リーグ・マーケティング』(PLM)を設立し、リーグ全体の新たな収益源を開拓してきた。「ペナントレースはライバル、ビジネスはパートナー」の考えがあるからで、たとえば、09年のクライマックスシリーズや翌2010年ペナントレースのスポンサーを獲得、ライセンス供与による商品開発などを行ってきた。「ビジネスはパートナー」なる言葉の裏には、「球団経営の最大収支源はチケット販売収益」という理念がある。試合は相手があって初めて成立する。入場者収益を上げたいのなら、対戦球団にもチケット販売に協力をしてもらわなければならない。主催ゲームではない試合のチケット販売を手伝ってもらうには、その利益を還元できるシステムにしなければならない。パ・リーグはそういった共存共栄の意識を共有しているのである。

 巨人、東京ヤクルト、横浜DeNAによる3球団合同企画サービスが開催されている(3月19日発表)。3球団主催ゲームの対象32試合のうち、『3球場4カード以上』に来場したファンをスタンプラリー方式で先着1万人にデカ缶バッジをプレゼントするという。関係者によれば、横浜DeNAが同じ関東圏の巨人、ヤクルトに呼び掛けて実現したそうだ。セ・リーグ全体で見れば、共同会社を立ち上げたパ・リーグのような一体感はまだない。「缶バッジ」にどれだけの希少価値があるのかも、疑問だ。しかし、横浜DeNAは新規参入チームとして、パ・リーグのように観戦者収益を球団収支の主力柱として捉えているからこそ、ビジネスパートナーを求めたのだろう。また、横浜DeNAの呼び掛けに応じたということは、巨人、ヤクルト両球団も“頭打ち状態”にあるチケット販売収益を好転させたいと考えているのだろう。
 昨年の年間観客動員数で、ベイスターズは12球団ワーストの110万2192人。11位は116万8188人の東北楽天だが、本拠地『日本製紙クリネックススタジアム宮城』の収容人数は2万3026人。横浜スタジアムは3万人。『収容率』で考えれば、楽天の方が『上』であり、曜日、季節、対戦カードによってチケット価格を5段階別に設定する『フレックス・プライス』の商法を行う楽天の方が収益率も高いはずだ。

 セ・リーグ各球団はペナントレースの勝敗に左右される実状から抜け出せていない。横浜DeNA・中畑清監督も換金を求めるファンが殺到した事態は聞かされているはずだ。選手も勝利への決意を新たにしたのではないだろうか。チームの勝利も大切だが、パ・リーグのPLMを参考にすべきではないだろうか。(スポーツライター・美山和也)

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