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やくみつるの「シネマ小言主義」 安心して見られる、ザッツ喜劇!『カツベン!』

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提供:週刊実話

 周防正行監督の5年ぶりの新作映画。『シコふんじゃった』『Shall weダンス?』など、これまでの名作にも通じることですが、今、一番「王道の喜劇」を作れる監督です。周防ワールドに身を委ねる気分で安心して見られました。

 舞台は今から約100年前の日本。輸入され始めた無声の活動映画をより楽しめるように、当時は活動弁士“通称カツベン”が楽士の演奏に合わせて、映画の会話や筋を観客に語り聞かせていました。活動弁士の存在はもちろん知っていましたし、今も現役で活動されている方もいらっしゃるとは聞いていましたが、実際の仕事ぶりはこの映画で初めて理解できました。当時の弁士は、今をときめく声優かアイドル並みの人気者だったんですね。

 意外に思ったのは、語りの部分はそれぞれの弁士の自由裁量に任されている点。人によって全く違う解釈で演じるから、個性の勝負になる。自分はてっきり台本があり、声色だけを変えていると思っていました。

 そして、活動弁士そのものが日本固有なんですね。これほど表現力豊かな語り芸を生を見たくなったし、今ならではの活躍の場を考えられるのではと思いました。たとえば、無声のアニメーション全編を弁士さんに語ってもらうとか。

 さて、映画では小さい頃からカツベンに憧れ、オタク並みに詳しかったことからニセ弁士になった主人公を、映画初主演の成田凌が熱演しています。朗々たる語りはそれは見事で、少々エロネタっぽい脚色が個性となって、次第に人気を博していきます。

 映画の中の無声映画を見ていて改めて思うのは、つい100年前はこんなにたわいないシーンで人々は大笑いしていたのかということ。

 でも、本作の地の部分も、無声映画さながらにベタな演出たっぷりのドタバタ喜劇。面白可笑しい動作に笑わされているのですから、人間って100年経ってもあんまり変わらないなぁ、と。

 今の時代、CGで100年前の街並みを作り込むことも可能ですが、監督はロケハンに時間をかけて、昔さながらの実写にこだわったそうです。

 そして、シャーロット・ケイト・フォックスなど見知った顔が出てこなければ昔の映像をそのまま使ったのかと思うほど、完成度高く作り込んだ無声映画シーン。さらに、おなじみの竹中直人や渡辺えり他の芸達者な役者陣。「本物志向」が幾重にも重なって、老若男女が楽しめるエンターテインメントになっています。

 実話の読者の皆さんも、年末年始にご家族とぜひ見に行ってください。

画像提供元:(c)2019「カツベン!」製作委員会
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■カツベン!
監督/周防正行 出演/成田凌、黒島結菜、永瀬正敏、高良健吾、音尾琢真、竹中直人、渡辺えり、井上真央、小日向文世、竹野内豊 配給/東映 12月13日(金)丸の内TOEI他全国順次ロードショー。
■当時の人気職業であった活動弁士を目指す俊太郎は、隣町にあるライバル映画館に客も人材も取られ、閑古鳥の鳴く映画館・青木館に流れ着く。人使いの荒い館主夫婦、傲慢で自信過剰な弁士、酔っぱらってばかりの弁士、気難しい職人気質な映写技師といった曲者ばかりが残った青木館で、雑用ばかり任される俊太郎。そんな彼の前に、大金を狙う泥棒、泥棒とニセ活動弁士を追う警察などが現れ、騒動に巻き込まれていく。

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漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。
『情報ライブ ミヤネ屋』(日本テレビ系)レギュラー出演中

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