世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第325回 ポルナレフ国家

社会 週刊実話 2019年06月25日 07時03分

 最近の安倍政権の社会保障、少子化、消費税増税関連の動きを見ていると、荒木飛呂彦の名作『ジョジョの奇妙な冒険』の第三部の佳境の戦いで、ジャン=ピエール・ポルナレフがDIO(ディオ)と遭遇したシーンを思い出す。DIOのスタンド「ザ・ワールド」の攻撃を受けたポルナレフが、主人公の承太郎たちに、「あ…ありのまま、今、起こった事を話すぜ! 「おれは、奴の前で階段を登っていたと思ったら、いつのまにか降りていた」な…何を言っているのかわからねーと思うが、おれも何をされたのかわからなかった…」と語る、あの名場面だ。

 6月3日、金融庁の金融審議会市場ワーキング・グループが「高齢社会における資産形成・管理」報告書を公表。報告書では、高齢夫婦無職世帯では家計収支が毎月5万円の赤字になり、30年生きるなら2000万円の資金が必要とされていた。

 預金にほぼ金利が付かない現状、30代の日本人が老後までに2000万円貯めるには、毎月6万円ほど貯蓄をする必要がある。貯蓄とは、つまりは消費や投資の削減だ。「老後に備えて2000万円の資金が必要」との試算を公表する時点で、途轍もない「デフレ化政策」になる。

 ところで、現実問題として、子供を育てるにはおカネがかかる。ある試算によると、22年間で2655万〜6283万円が必要とのことだ。

 その状況で、政府(金融庁)が、
「高齢夫婦無職世帯では家計収支が毎月5万円の赤字になり、30年生きるなら2000万円の資金が必要」

 と、ぶち上げた。普通に考えて、「子供を作らず、老後に備える」ことが、合理的になってしまう。日本政府が、実のところ「少子化」を全く問題視していないことが、如実に理解できる。

 しかも、このタイミングで「実質賃金を引き下げ、国民を貧困化させることで、少子化をもたらす消費税増税」が、何と「少子化対策」という名の下で強行されようとしているのだ。まさに、ポルナレフの台詞「な…何を言っているのか、わからねーと思うが」である。筆者にしても、自分で何を書いているのかよく分からなくなってきた。

 ちなみに、消費税増税の理由が「少子化対策」であると説明したのは、安倍総理本人だ。

 日本の“主権者”たる財務省が緊縮財政至上主義の旗を掲げる我が国では、消費税増税という結論“だけ”は変わらず、推進の理由、あるいは「言い訳」だけが次々に出てくる。日常生活で、前言を何度も翻す人物がいた場合、普通に無視するところだが、残念なことに日本政府である。

 我が国は、「高い確率で発生が予測されている首都直下、南海トラフなどの大地震も財政破綻の引き金になり得る。これに備えるためにも地道な財政再建が必要」と主張する反面、「大震災に備えて消費税増税が必要」と支離滅裂を主張する財務省の御用学者、吉川洋が立正大の学長を務めているような国なのだ。過去の消費税増税の言い訳を見てみると、
「直間比率是正のために増税」
「プライマリーバランス維持のために増税」
「社会保障の安定財源確保のために増税」
「ギリシャのようにならないために増税」
「財政破綻を避けるために増税」
「国債の格下げを避けるために増税」
「国際公約だから増税」
「大震災のために増税」

 いっそのこと「太陽が東から昇るから、増税」と結論付けてしまえばいいような気がするが、とりあえず正解は「官僚や政治家や学者や国民が愚かだから増税」である。

 さて、安倍総理は6月5日、国会の答弁で、
「消費税率の引き上げについては、全世代型社会保障の構築に向け、少子化対策や社会保障に対する安定財源を確保するために、どうしても必要なもの」
 と、消費税率を予定通り引き上げる考えを示した。新たに「少子化対策で増税」が加わったわけだ。

 消費税増税の弊害は様々だが、最も露骨に分かる悪影響が実質賃金の低下である。何しろ、消費税増税は強制的な物価の引き上げになる。物価が増税で上昇したところで、実質の生産が増えるわけではないため、国民の実質賃金は一気に下落する。

 図は、日本の名目賃金と実質賃金について、半期ごとに対前年比を見たものだ。消費税増税により、’14年以降に猛烈な実質賃金の下落が起きたことが確認できるだろう。

 そもそも、日本の少子化の原因は二つ。東京一極集中と、若者の実質賃金の低下による婚姻率下落だ。実は、日本の結婚した夫婦が産む子供の数は、それほど減っていない。というよりも、すでに底打ちして上昇傾向にある。

 ところが、婚姻率の下落に歯止めがかからず、少子化が終わらない。そして、なぜ婚姻率が下がっているのかといえば、もちろん実質賃金が低下し、結婚適齢期(特に男性)の可処分所得が落ち込んでしまっているためなのである。

 特に、2014年の消費税増税は、「(増収分は)全額、社会保障安定化に使います」などと政府はPRをしていたものの、実際にはPB(プライマリーバランス)赤字の削減に使われた。つまりは、負債返済だ。負債の返済は貯蓄と同じく、消費でも投資でもない。財務省は消費税増税で我々から所得を奪い取り、その8割を需要(消費+投資)にならない負債返済に回してしまったのだ。結果、誰の所得も生まれず、おカネがブラックホールに吸い込まれて消滅した。国民の貧困化が一気に進んだのは、至極当然だ。

 安倍総理は「少子化対策や社会保障に対する安定財源を確保」などと語っているが、実際には10月の増税による増収分も、過半が赤字縮小に回される。何しろ、政府がPB黒字化目標を維持している以上、どうにもならない。

 結局のところ、大本の財務省の緊縮財政至上主義がある以上、日本政府は社会保障の安定化も、少子化対策も実現できないのである。何しろ、政府が「カネを使わない」という立場を堅持している以上、当たり前の話だ。とにもかくにも、緊縮財政を打破できない限り、我が国の衰退は終わらず、ポルナレフ国家のまま朽ち果てることになる。

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みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。

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