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特選映画情報『ブルーアワーにぶっ飛ばす』〜夏帆が演じる“満たされない三十路女”は故郷で何を思うのか…

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提供:週刊実話

配給/ビターズエンド テアトル新宿ほかにて公開
監督/箱田優子
出演/夏帆、シム・ウンギョン、渡辺大知、でんでん、南果歩ほか

 個性派若手女優の夏帆は個人的にはずっと見逃せない存在だ。悪女も、ゲス女も、汚れ役もこなせるし、エロスでもテレビの『みんな!エスパーだよ!』(13年)でのパンチラ女子高生や、映画『友罪』(18年)での元AV嬢役で見せてくれた。今回のドツボ系の“痛い女”を演じても水を得た魚。本人も「今、一番やりたかった役」だとか。

 30歳の自称売れっ子CMディレクターの夕佳(夏帆)は東京で満ち足りた生活を送っているように映るが、心はすさみきっている。ある日、病気の祖母を見舞うため、大嫌いな故郷・茨城に帰るハメになる。そして、困ったときに必ず現れる天真爛漫な“秘密の友だち”あさ美(シム・ウンギョン)がこの旅に同行するのだが…。

 冒頭、仕事の合間を縫って、同じ業界のセフレと情事を繰り広げる(お相手はユースケ・サンタマリア!)。あまり具体的なエロス描写はないが、夫もいるのに平気で明け方帰宅しても悪びれない…。そんな短い描写に彼女の“痛い”部分が早くも垣間見ることができる。故郷・茨城が苦手なのは、彼女のコンプレックスの根源でもある。ここで、嫌いなはずの故郷に帰ったら、自分を見つめ直せた、なんていう、ありがちな“発見旅もの”にはならないのが何より。地方に戻ったら、自分を取り戻せたなんて、嘘くさくて。

 夏帆の映画はしばしば一筋縄にはいかないが、今回もそこがお値打ち。監督の箱田優子は実際に茨城出身で、ヒロインは限りなく自分に近いキャラクターだという。途中から、この映画が妙に“いびつ”で“面妖”なことに気付く。例えば“秘密の友だち”のあさ美って一体何者? 日本語が少々変だし…。今年の話題作『新聞記者』のシム・ウンギョンを起用した意味は? ボクなんか浅はかで、このヒロイン2人の親密ぶりに最初は2人がレズかな? と思ったりして…。どうやら、洋画のシャリーズ・セロン主演作『タリーと私の秘密の時間』(18年)と同じ構造らしい(ネタバレになるので具体的には言えない)。

 ともあれ、この“夏帆・シム”コンビの刺激的な化学反応が何より。映画全体から、偽善的でかわいい映画にしてなるものか、という決意が感じられる。監督が言う“現実と地続きの身近なフィクション”の感覚をシカと受け止めた。

 茨城を舞台にした映画に実は傑作が多い。往年の『米』(57年)、『さらば愛しき大地』(82年)、近年の『凶悪』(13年)、『月と雷』(17年)などで、この映画もその1つに数えたい。都道府県別魅力度では最下位あたりに定着しているが、いいっぺ“茨城映画”!
 《映画評論家・秋本鉄次》

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