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本好きのリビドー(245)

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提供:週刊実話

◎快楽の1冊
梅崎春生/荻原魚雷編 中公文庫 900円(本体価格)

★怠け者が綴るユーモアあふれる文章

 蟻の集団を、たとえば千匹囲って上から観察すると、巣作りに励んだり、エサ探しに奔走したりといそいそ働くのは7割で、残りの3割はほとんど動かずのらくらしているそう。では、勤勉な7割の蟻だけを選り分けて別にまた囲ってみれば全員が労働にいそしむかというと、やはり絶え間なく働くのはその中で7割にとどまり、残った3割が怠けだすのだとか。…著者も書名も忘れたが、若い頃に読んで妙に記憶に引っかかった話である。

 仕事も大してなく酒と本と映画に明け暮れ、水道橋博士氏に「高等遊民みたいな生活だナ」と呆れられた20代の頃、自分に怠け癖があるのは充分自覚しつつも(夏休みの宿題を8月30日になってから顔面蒼白、半ベソで片付けるタイプ)、後ろめたさはちゃんと持ち合わせていたつもり。

 ずっとこのままでいたいとはつゆほど思わなかったし、あの頃が積極的に懐かしいとも思えない。しかし、どの暇な役人が編み出したフレーズか知らねど“一億総活躍社会”などと聞くと生理的に反発を覚えるし、まともな勤め人になった経験など一度もないくせに、「日本の会社はなぜ生産性が低いのか」などとしたり顔で連呼されれば、内心大きなお世話だコノヤロー、と叫んでしまう。とはいえ“働いたら負け”だのと胸の部分にプリントされたTシャツを臆面もなく着て平気で街を歩いている奴を見るとブン殴りたくなる…本書はそうした心情の持ち主には消時の友として最適だ。

「黄昏とは、何といいものだろう。」「今大急ぎであおった酒が」「ほのぼのと発してきて、風景は柔らかくうるんでくるのだ。この時僕は始めて、自分を、人間を、深く愛していることに気がつく。それはひとつの衝動のようにやってくる。」素晴らしい。激しく同意。
(居島一平/芸人)

【昇天の1冊】

 新しい元号が公表される4月1日まで、いよいよあと1カ月を切った。そこで、元号が決まる舞台裏満載の1冊を紹介しよう。タイトルは『元号って何だ? 今日から話せる247回の改元舞台裏』(小学館/800円+税)

 改元とは、新天皇の即位に伴って行われる―現在の日本人にとってはそれがごく普通。だが、歴史上247回に及ぶ改元はかつては頻繁にあり、中には2カ月弱で変わってしまった「歴仁」(りゃくにん)なる元号もあったという。

 また改める理由も結構いい加減。奈良時代の715年には、甲羅に北斗七星の模様がある珍しい亀が天皇に献上されたというだけで「霊亀(れいき)」と改めている。もちろん長く続くワケもなく、3年もたずに変わった。さらに奈良時代には、「亀」の名がつく改元が4回あった。彗星が出現すると縁起が悪いからと改元したことも6回。

 雲が理由となった改元も3回。縁起のよさそうな雲が夕刻に出たと大はしゃぎして制定された「慶雲(けいうん)」は704〜708年まで。同じく伊勢に美しい雲を見たから「天応(てんおう/781年から約2年)」。

 元号が由来となったネーミングも各種。確かに「明治通り」「慶應大学」、さらに企業名やタレントの芸名などに使われた例は、今も存在する。「へぇ〜」とうなりながら楽しく読める。

 元号に向き合う絶好の機会。おそらく週刊実話読者のオヤジ世代にとっては生涯最後(?)となりそうな改元の日に備え、ウンチクを吸収しておこう。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

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