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2013年プロ野球キャンプレポート・番外編 日本球界の育成システムは本当に優れているのか…(後編)

 キャンプイン直前の1月23日、WBC・侍ジャパンのスタメン候補でもある糸井嘉男外野手(31)がトレード放出された。将来のキャプテン候補・大引啓次内野手(28)を交換要員として失ったが、糸井を得たオリックス打線は脅威である。その糸井が『投手』でプロ入りした経緯は有名だが、その投手時代にこんな秘話もあった。「二塁に走者を置くだけでオドオドしてしまい、ボークを取られたことも」−−。

 メンタル面での脆さである。
 過去、投手から打者に転向して成功したプロ野球選手は少なくない。しかし、「打者に転向できるほどの打撃センス」がなく、そのまま消えていた“チキンハートの投手”は、もっと多い。メジャーリーグでは選手の能力を発揮させる方法として、また、育成の一環として、『メンタルトレーニング』に重点を置いている。

 「キャンプにメンタル・トレーナーがいるんです。メジャーリーグでは日常的にカウンセリングが行われ、シーズン中もカウンセラーを帯同させています」(元メジャーリーグスタッフ)
 精神面に重点を置く理由は、簡単だ。メンタルトレーニングが「選手の潜在能力を最大限に発揮させる方法」として位置づけられているからだ。
 メジャー式・メンタルトレーニングを紹介する書籍も発表されているが、スランプに陥った選手を励まし、前述の糸井のようなマイナス思考を払拭させるだけではない。たとえば、ルーキーリーグの若手には、こんなディスカッションも行われている。
 「(仮説の質問として)アナタは、デビュー戦で大活躍しました。感想は?」
 選手の回答は人それぞれだが、こうしたいくつかの質問に対し、楽観的アンサーが多い者、悲観的アンサー(慎重な回答も)が多い者に別れていく。一方を非難するのではなく、選手を精神面で成長させる手段として、その回答に応じてカウンセラーが助言を与えていく。

 チャンスに強いタイプ、追い込まれるともろいタイプかを指揮官が把握していれば、選手を追い込むような起用はしないはずだ。スランプでも試合に使った方がいい選手もいれば、その反対もいる。メンタルトレーニングによる成長と同時に、監督が選手の個性を把握するデータ収集にも応用されているのではないだろうか。

 また、メジャーでは専門のフロント職員との面談も定期的に行われている。その頻度は球団によって異なり、ファームディレクターが兼任担当する球団もあるそうだが、その『1対1』の話し合いのなかでは、球団に対する“不平不満”も出る。ロッカーの衛生面、食事メニュー、チャーター機や遠征先ホテルの状況、コーチへの不満、不仲選手に対する愚痴…。あるプロ野球解説者によれば、「契約更改の席でそういった話をすることが多かった」とのことだが、メジャーリーグの“度量の大きさ”だろう。こうした不満に対し、後日、必ず回答するそうだ。その言い分が正しければ球団が改善し、即実行できないことに関しても、その理由をきちんと説明しているそうだ。

 「ロッカールームなどの改善要求はほとんど出ない。いちばん多いのは自身の起用法に関する愚痴。何故、ライバル選手の方が起用されるのかといった…」(前出・元スタッフ)
 起用法についても、球団は誠意を持って、監督、コーチの評価を伝える。采配にエコ贔屓であれば、ゼネラルマネージャーが動くところだが、そういったケースはほとんどないだろう。『面談』の回答を、自身の技術的に足らないところを補う契機にするか否かは、「選手次第」となる。(とはいえ、話が一方通行にならない点は興味深い。)

 ルーキーリーグから3Aまでの選手数は、約250人。おおよそ、10人中1人だけがメジャーに昇格できる計算だ。細部に及ぶ選手育成のプログラムがあっても、10人中9人が消えていく環境を考えると、日本の野球選手は、自国のプロ組織で実力を養い、FAでメジャー契約を交わした方が得策かもしれない。
 メジャーリーグの育成ビジョンは見倣うべき点も多く、前編では二刀流を目指す大谷翔平のオタオタぶりも伝えた。「もっと、優しくしてやれよ〜」とも思ったが、全ては本人次第という点では、日米ともに変わらないようだ。(了/スポーツライター・飯山満)

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