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呂律が回らない“浪速のジョー”をリアルに描いたNHKに称賛の声が続々と

 “浪速のジョー”こと、辰吉丈一郎。現在、47歳。一応、現役のボクサーだ。しかし09年3月、タイでの敗戦からリングに上がっていない。よって、無収入。それでも、上がれるリングがあるという可能性を信じて、一日たりとも練習をさぼらない。すでに国内ライセンスは剥奪されているため、次の試合は未定。8年もファイトマネーを手にしていないため、無職。出口が見えない迷路をいまださまよいながらも、練習を続ける往生際の悪さ。それこそが、ジョーなのだ。

 年上の妻・るみさんは何度も、「もう辞めて」と引退を勧告。すると、「おまえが悲しむことはしない。おまえが悲しむなら、辞める」と素直に応じるも、その数分後、練習道具を詰め込んだカバンを持って、家を出る。妻は、見慣れた夫の後ろ姿を見て、ニンマリする。ジョーがるみで、るみがジョー。伝説のカリスマプロボクサー・辰吉丈一郎は、辰吉るみでもあるのだ。

 そんな2人の今を伝えたのが、NHK総合の『ノーナレ』。タイトルどおり、ノーナレーションのドキュメンタリー番組だ。“ドキュメンタリーはナレーションありき”という映像業界の常識を逆手にとって、撮れた画、発した言葉をそのまま流す。ダイレクトに心に響くいっぽう、ナレーションなし、テロップに依存しないシンプルさは、不親切といえる。目を凝らして、耳をすませて、神経を集中させて身を投じなければ、理解できないからだ。優しくなりすぎた昨今の番組制作に異論を唱えるように、徹頭徹尾、視聴者を突き放す。

 それはさながら、辰吉の生き方でもある。頼らない。媚を売らない。社会不適合者。われわれがふと、「昔はよく観たなぁ」と20年以上も前のリングに思いを馳せるのは、不親切で不器用な男の生き方が、とてつもなくカッコよかったという残像があるからだ。

 12月18日には、「辰吉家の常識 世間の非常識」というタイトルで放映された。るみさんの親が経営する喫茶店で、2人そろってインタビューに答え、辰吉の練習、仲間とのBBQにもカメラが潜入。テレビ収録であるにもかかわらず、辰吉は遅刻。反省の色は、さほどない。眼窩下底骨折の悪影響か、両目の視線が定まらず、呂律も回らないパンチドランカー状態。日本国民を熱狂させた一流アスリートのその後としては、目を覆いたくなる実情だ。

 同番組は過去に、元やくざのうどん屋、ゲーマー夫婦、パーソナルスタイリスト、荒海で働く漁師、元棋士のひふみんこと加藤一二三、見当たり捜査員、北陸のすし職人ほか、多くの人間にスポットを当ててきた。今年最大のヒット回が、この辰吉夫婦。放送中・直後から、絶賛の声がツイッターや局に続々届いたという。

 定点カメラでその業界の3日間に密着する同局の『72時間』と同じく、人の魂が詰まっている『ノーナレ』。辰吉夫婦の回は、18年1月7日に再放送を予定している。魂が揺さぶられっぱなしになること、間違いなしだ。

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