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メジャースカウトが甲子園を視察する真相は…

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 日本のアマチュア野球選手は、基本的に直接メジャーリーグには挑戦することはできない。本人が「どうしても!」というのなら仕方ないが、日本とアメリカの間で「両国のドラフト候補選手には交渉しない」といった紳士協定も交わされている。2008年、社会人・ENEOSに在籍していた田澤純一投手が日本のプロ野球球団を経由せずにメジャーリーグに挑戦したことを受け、NPBは「当該球団を退団しても、社会人・大学生なら2年、高校生なら3年、NPBの球団とは契約できない」というルールまで設けてしまった。
 また、アメリカのドラフト会議は6月に行われる。MLB側の「世界規模でのドラフト会議」という構想に従うと、日本の有望な高校球児は夏の甲子園大会前に“プロ球団”と交渉し、契約することになる。高野連は学生野球憲章を示し、NGの回答を伝えている。

 前置きが長くなったが、日本の高校球児を直接指名できないメジャーリーグのスカウトも、甲子園のネット裏や現在行われているU−18アジア大会を視察しているのだ。指名できないのに、視察する目的は――。
 ア・リーグ中部地区の関係者がこう言う。
「今オフの米球界挑戦が伝えられる菊池雄星(=埼玉西武)を見に来たんだけど、こっちも見ておこうと思って」
 日本のスカウトも同じだが、「視察」には色々な意味があるようだ。大半のスカウトはその場でメモを取るのではなく、何かを考えながら見ている。時折、別球団や顔見知りの日本の関係者を見つけ、情報交換もしていた。
「今、米スカウトは大変なときだからね」(米国人ライター)

 メジャーリーグ30球団はデータ重視でチーム編成を行うようになった。選手の能力を数値化し、それで判断する。競技経験者、アマチュア野球組織に強いネットワークを持つ者、無名選手の将来性を見抜く眼力のある者などよりも、コンピューターに入力した数字を統計化できるアナリストのほうが重宝される時代になったのだという。
「昨季のワールドシリーズ覇者のアストロズは国内スカウトを10人も解雇し、海外担当も大幅にリストラしました。日本の学生野球は直接視察しなくてもいいとスカウトに通達した米球団もあります」(前出・同)
 それでも、あえて甲子園大会を視察した米スカウトはプロ意識が強いということか…。それだけではないようだ。

「米球界では日本のアマチュア投手は『投げすぎ』だと思っています。連投についても否定的です。日本の学生投手が将来、米球界に挑戦したとき、『10代でどれくらい投げていたか』を把握しておくため」(前出・同)
 日本国内でも投球制限の議論が始まっている。アメリカの学生・アマチュア野球では連投が禁止され、一試合での投球数の目安も年齢別に示している。医学的根拠もあるらしいが、肩や肘を故障する投手はゼロになっていない。米スカウトの甲子園視察は肩の故障を防ぐサンプルの収集も兼ねているのではないだろうか。

 年長のプロ野球解説者が日本のスカウト事情について教えてくれた。
「日本のスカウトの中にはネット裏に陣取っても、選手を見ていないケースがあるんです。正確に言うと、『見ているフリ』をしているんです。たとえば、チーム事情で左投手の指名を優先しようとしている球団が4番タイプの選手の視察に時間を費やしても意味がありませんから。でも、有名なドラフト候補を視察しなかったと分かれば、後々、その所属先(学校など)の印象を悪くします。それにドラフト会議の1位指名は入札・抽選制なので、クジ運次第なんです。ドラフト直前で球団の方針が変わっても、どうにでもなりますから」
 スポーツメディアは視察に訪れた球団数、スカウトの人数も伝えているが、数が多ければ良いというわけではなさそうだ。(スポーツライター・飯山満)

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