【甦るリング】第13回・報道陣も恐れるほどヒールに徹したタイガー・ジェット・シン

スポーツ 2015年07月01日 12時00分

【甦るリング】第13回・報道陣も恐れるほどヒールに徹したタイガー・ジェット・シン

 プロレスは勧善懲悪の方が分かりやすい。ベビーフェイス(善玉)が光るためには、究極のヒール(悪役)が必要だ。日本ではタイガー・ジェット・シン、アブドーラ・ザ・ブッチャー、ザ・シークが外国人の3大ヒールとして、伝説に残っているが、なかでも、シンは特別な存在だった。

 ヒールといっても、それはリング上でのことであり、リングを下りたら話は別。ヒールをやっている選手ほど、ふだんは温厚な人物であることが多かったりするのだが、シンの場合はちょっと事情が違った。シンはリング上だけではなく、ヒールを貫くため、報道陣の前でも徹底的に悪役に徹していたのだ。試合後、マスコミはシンの後を追って、バックステージへ向かうのだが、シンはリング同様、サーベル片手に報道陣を追い掛けてくるのだから怖いのなんの!なかには、シンに手を出されるマスコミもいたほど。それが、ヒールに徹するシンのやり方だと分かっていても、それでも怖かったのだ。

 日本では全く無名だったシンは、新日本プロレス、そしてアントニオ猪木が育てたといっていい選手だ。ジャイアント馬場の米国修行時代の師匠だったフレッド・アトキンスから、正統派レスリングの手ほどきを受けたシンは、1960年代後半から、カナダ・トロントでベビーフェイスとして活躍していた。豪州遠征で知り合ったスティーブ・リッカードの紹介で、73年5月に初来日。観客席に座っていたシンは、試合中の山本小鉄を襲撃し、これをきっかけに、新日本のリングに上がるようになる。

 当時、旗揚げ間もない新日本は、オポジションの全日本プロレス、国際プロレスのように、大物外国人選手を招へいすることができなかった。だが、シンという究極のヒールの誕生で、流れが変わった。猪木とシンの抗争はヒートアップ。同年11月には、夫人(倍賞美津子)とともに買い物中だった猪木を、新宿伊勢丹前の路上でシンが襲撃。警察沙汰になる事件が起きた。猪木は「リングで制裁する」との理由で被害届は出さなかった。結局、新日本への厳重注意で収まり、ことなきを得たが、プライベートで猪木を襲ったシンの悪名はまたたく間にとどろいた。両者の遺恨は深くなり、74年6月の対戦では、猪木がシンの腕を折る事態にまで発展した。

 75年3月には、シンは猪木を破って、NWFヘビー級王座を奪取するなど、新日本のトップ外国人として君臨した。しかし、スタン・ハンセンの登場で、その立場は微妙なものになっていく。81年に入ると、新日本と全日本の仁義なき引き抜き戦争がぼっ発。同年5月に新日本が全日本のトップヒールだったブッチャーを引き抜くと、同年7月、全日本は報復としてシンを引き抜いた。シンは上田馬之助とのタッグで暴れ回り、ジャイアント馬場&ジャンボ鶴田からインタータッグ王座を奪取したこともあった。

 ただ、シンの全日本移籍直後の同年12月にはハンセンも全日本に移籍。リング上の闘いはハンセン、ブルーザー・ブロディ、ドリー・ファンク・ジュニアとテリー・ファンクのザ・ファンクスらがメーンとなることが多く、シンの影は薄かった。88年には全日本に出戻ったブッチャーと凶悪タッグを結成するも、主役に躍り出ることはなかった。

 全日本での役目を終えたシンは、90年9月、9年ぶりに新日本に復帰。猪木のデビュー30周年記念イベントで、恩讐を超え、猪木と一夜限りのタッグを結成した。その後も、新日本に参戦し続けたが、猪木より下の世代との対戦は大きなムーブメントとはならず、フェードアウトしていった。

 新日本を去ったシンに触手を伸ばしたのは、新興団体FMWの大仁田厚だった。大仁田は関ヶ原(ノーピープル)、横浜スタジアムで2度、シンと電流爆破デスマッチを行うなど、シンの再生に成功した。その後、第2次NOWを経て、IWAジャパンに参戦。IWAではVIP待遇の扱いを受け、ベビーフェイスの役回りを与えられ、グッズ売店でサイン会を行ったりもした。昔とはファンの気質も変化しており、ファンもベビーフェイスのシンを歓迎。ただ、ファイトスタイルが変わることはなく、バックステージで報道陣を追い掛けるのは相変わらずだった。

 晩年には、エンターテインメントプロレス団体ハッスルに参戦。小川直也、曙、ボブ・サップらとも対戦。ブッチャーとタッグを組んだり、一騎打ちを行うなどした。09年10月、同団体は活動を休止。シンが日本でファイトしたのは、これが最後となった。

 自宅のあるカナダ・トロントに戻れば、シンは実業家、慈善事業家として有名な地元の名士であり。そこでは、ヒールとしての顔はなく、私生活では紳士として通っている。とはいえ、シンは日本のファンにとって、永遠にヒールであり、報道陣にとっては、限りなく“怖い”存在だった。

(ミカエル・コバタ=毎週水曜日に掲載)

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