連日満員御礼だった名古屋場所は、千秋楽で鶴竜(33)が白鵬(34)との決戦を制し、どうにか横綱の、いや、大相撲の面目を保った。
場所前に再発した腰痛を克服。7場所ぶりとなる6回目の優勝を飾った鶴竜は次のように語った。
「この3年間、(名古屋で)ずっと途中休場して、ファンの皆さんに申し訳ない気持ちで、このままじゃ終われないとの思いがあった」
協会首脳も「さすがは横綱。よく責任を果たしてくれた」と、べた褒めだったが、当の協会側は「カネ返せ」という罵声を浴びてもおかしくない状況だった。
「このところ、土俵上は新旧交代の嵐が吹き荒れていますが、栃ノ心、豪栄道はその風に飲み込まれてしまいました。高安も若手に煽られたと言えます。右ひじのけがが直接の原因ですが、いまだ手にしていない優勝にこだわりすぎて無理したことが、けがの間接的要因ですから。近い将来、大関陣の総取っ替えがあるかもしれません」(担当記者)
おかげで、横綱の終盤の対戦相手がいなくなり、取組を編成する審判部は四苦八苦していた。このことは、優勝争いが一番盛り上がるヤマ場の13日目、両横綱の相手がともに前頭7枚目、妙義龍と友風、14日目の白鵬の相手がすでに7敗している東前頭5枚目の琴奨菊だったことでも分かる。他に相手がいなかったのだ。
ところが、この苦肉の策から大番狂わせが飛び出した。13日目に鶴竜が友風に、14日目には白鵬が琴奨菊に金星を献上してしまったのだ。このハプニングがなかったら、どうなっていたことか。
「さっぱり盛り上がらない優勝争いになり、協会は猛批判にさらされていたことでしょう」(協会関係者)
炎鵬、照強という人気の小兵力士の活躍はあったものの、大相撲界の役者不足は深刻だ。世代交代が叫ばれる中、これといった力士がなかなか現れない。