「仮に北朝鮮が太平洋上で150キロトン前後の威力を持つ水爆を爆発させた場合、爆心地から半径約3.7キロ前後を航行中の船舶や航空機は、熱線や爆風により一瞬で消し飛びます。また“死の灰”が周辺海域を広範囲にわたって汚染し、被爆による人的被害が発生する恐れは甚大です。もしも水爆実験が電磁パルス(EMP)攻撃だった場合は、米国および日本を含む環太平洋諸国の社会インフラが大打撃を受けるでしょう」(軍事ジャーナリスト)
10月15日、米国のティラーソン国務長官は「外交努力は最初の爆弾投下まで続く」と語った。つまり米国は、北朝鮮に侵入した爆撃機が爆弾を投下するまでは外交努力を続けるが、その間に北朝鮮が核およびミサイルを放棄しなければ、湾岸戦争と同様に宣戦布告なしに爆撃を開始すると言い放ったのだ。それを見せつけているのが、現在展開中の3打撃群なのである。
「原子力空母『セオドア・ルーズベルト』を中心とする第9空母打撃群が10月23日に西太平洋に入り、25日には『ニミッツ』を軸とする第11空母打撃群も加わりました。これに米韓海軍共同演習に参加していた『ロナルド・レーガン』を合わせ、西太平洋に米空母3隻が同時展開することになるのです。打撃群だけでなく戦略爆撃機も参加しており、ティラーソン長官が述べたように『いつでも最初の爆弾を投下する』ことが可能な状態です。北朝鮮にしても去る9月の国連総会でのトランプ大統領の演説を『宣戦布告と受け止めた』と世界中に発信したわけですから、言葉の上では米朝戦争は開戦しているようなものです」(軍事ライター)
韓国海軍からもイージス艦『世宗大王』や戦闘機、哨戒機が参加し、空母の護衛や北潜水艦への対応などの大規模訓練を近く行う予定だという。
加えて米韓関係筋は“正恩委員長斬首作戦”を実行する米海軍特殊精鋭部隊『ネイビーシールズ』が、共同演習に参加していると明らかにした。
「シールズは潜水艦やヘリコプターを使い、正恩委員長ら幹部の暗殺を想定した訓練を行っている模様です。シールズは10人前後の規模で行動し、航空機や潜水艦などで敵地の後方に侵入、要人の暗殺や味方の救出、敵施設の破壊工作などを行いますが、現在は『ロナルド・レーガン』などに乗船しており、10月13日には特殊部隊潜入用の潜航艇を搭載したオハイオ級原子力潜水艦『ミシガン』が韓国釜山港に入港しました。これらの動員状況から“Xデー”は近いとみられており、奇しくも湾岸戦争開戦日と同じく、新月に当たる来年の1月17日という説が有力視されています」(同)
米国による先制攻撃が行われた場合、北朝鮮は短距離弾道弾『スカッド』や準中距離弾道弾『ノドン』、中距離弾道弾『ムスダン』などを日韓の目標に向けて発射するだろう。これらを封じ込めることも重要なテーマだ。
「マティス米国防長官は軍事的選択肢の中に『ソウルが危険にさらされない方法もある』と発言しました。短中距離弾道ミサイルや非武装地帯である休戦ライン北側に展開する北の砲兵部隊を封じるには、指揮通信系統を機能麻痺に陥らせるためにサイバー攻撃を行うのでしょう。米国は、'10年頃にイランの核開発施設を数年にわたって不能にした『スタックスネット』のようなマルウェア(不正動作の意図で作成されたソフト)を、北朝鮮の指揮通信をつかさどる回線にすでに仕掛けており、それを起動させるという方法です」(前出・軍事ジャーナリスト)
北朝鮮が「やるぞ」と脅すEMP攻撃を逆に米国が使い、北朝鮮を機能不全に陥らせる方法も考えられる。
「北朝鮮には米国のEMP攻撃を無力化する能力がありません。その意味で、北朝鮮がEMPを口にしたのは単なる威嚇でしかないのです」(同)