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〈目からウロコの健康術〉 1950年までは日本の死因の第1位 古くて新しい感染症「結核」に要注意!!

 結核とは「結核菌」という細菌が直接の原因となって起こる病気で、結核菌が起こす「おでき」のようなものと考えていいのではないか、と専門家は言う。

 最初は炎症から始まる。肺なら肺炎のような病気で、肺の表面近くに病巣ができれば、胸膜炎となる。結核菌は肺に巣食うことが多いとされるが、人体のいろいろなところ(臓器)にも病気を起こすと言われる。

 東京在住の会社員男性(52)は昨秋、咳が止まらず、近くの医院を受診した。胸部X線と血液検査を受けた結果、肺炎の疑いがあると言われた。しかし、医院で紹介された先の病院で再検査したところ、病名は「結核」と診断され、即日入院することに。

「何で俺が」と理不尽に思ったが、感染経路は不明だった。数日たつと不安に襲われた。「職場の仲間や知人に感染させてしまったのではないか」。

 入院は約1カ月間続いたが、それより2カ月前から体調がすぐれなかった。だるく、多量の寝汗もかいた。
朝には痰も出た。いつもと違うと感じたりもしたが、夏の暑さや喫煙のせいだと思っていたので、まさかそれが結核とは思いもしなかった。

 この男性は入院期間中、毎日、粉薬と11錠の錠剤を飲み、他人に感染させる恐れがなくなった時点で退院した。
「結核は過去の病と思っていた。発見がさらに遅れ、誰かに感染させていたらと思うと恐ろしかった」
 と、後に振り返った。

 東京労災病院内科呼吸器担当・戸島豊博医師はこう語る。
「肺炎で初期の炎症が進むと、やがて“化膿”に似た組織が死んで腐ったような状態になります。この状態の時期が肺結核ではかなり長く続き、レントゲンなどに写る影の大半がこの状態の病巣です。その後、死んだ組織がドロドロに溶けて、気管支を通して肺の外に排出されると、そこは穴の開いた状態になります。これが空洞です。空洞の中は空気も栄養も十分ありますので、結核菌には絶好の棲み処になり、菌はどんどん繁殖します。空洞を持った結核患者が“感染源”になりやすいのはこのためです」

 そして、さらにこう説明する。
「こうした病巣から、菌が肺の他の臓器に結核の出店を作ることもあり、結核は肺全体、全身に広がっていきます。そして、最後には肺の組織が破壊されて呼吸困難になるとか、他の臓器の機能が冒されるとかして命の危機を招くことになります。とにかく結核は、全身の様々なところに病気を作るのが特徴です。侵食される臓器としてリンパ節が最も多く、とくに多いのが首の脇が腫れるもので、昔は“るいれき”と呼ばれていました。背骨に出来る“脊椎カリエス”、次に腎臓(腎結核)が多く、場所柄から膀胱などを巻き込むこともよくあるのです」

 結核は厚生労働省によると、国内の’17年の新規患者数は1万6789人。人口10万人当たりの新規患者数(罹患率)は13・3で前年より0.6㌽減ったが、約2300人が死亡しており、今でも日本の重大な感染症だ。罹患率も米国の約5倍、英・仏国の2倍弱にのぼる。

 新規患者は、前述した男性のように受診が遅れる場合がある。昨年の新規肺結核患者で症状がある人のうち、症状が出てから受診まで2カ月以上かかった人は20・8%もいた。’02年以降で最高の数字となっている。

★高齢者の発病が目立つ

 結核は1950年まで日本の死因の第1位だった。60年代半ばから約15年間は新規患者が年10%ずつ減ったが、その後、減少率が鈍り、年3〜4%程度が続いている。

 この中で目立つのが高齢者の発病だ。’17年の新規患者を世代別でみると80代が3割弱で最多、90代は増加傾向。結核患者が多かった時代に感染し、長い潜伏期間を経て、加齢により抵抗力が落ちることによって発病するとみられている。

 また、新たな問題となっているのが、外国生まれの患者の増加だ。新規患者は’17年は前年より192人増え、1500人を超えて患者全体の約9%、20代では新規の63%を占めた。フィリピンや中国、ベトナム、ネパールなどが多く、留学や技能実習などでの来日が増加し、日本語学校での集団感染なども報告されている。

 「今後は長期ビザを申請してくる外国人を対象にした入国前の結核検査を実施する予定。目標達成には総合的な対策が必要です」(結核予防研究所関係者)

 前述の通り、結核は結核菌による感染症だ。保菌者が咳やくしゃみをすると、空気中に菌が飛び散り、それを吸い込むことで感染する。その後、菌が増殖して体の組織を冒し、発病する。

 感染してもほとんどの人は免疫によって菌が封じ込められて一生発病しない。1割程度は免疫が落ちたときに発病するが、感染しただけや、発病しても菌を体外に排出していない場合は、周囲の人に移すことはない。換気の悪い環境では感染しやすいが、菌は外に出て紫外線に当たると急に感染力を失う。

 しかし、結核菌はしぶとい菌だ。ある程度の期間は薬で抑えないとぶり返す。また、その間に薬に慣れて抵抗性の「耐性」になるので、2種類以上の薬を一緒に使うのが鉄則だ。

 最新の方式は「リファンピシン」、「ヒドラジド」という2種類の薬剤を軸に最初4剤、続いて2〜3剤を合計6カ月使うというもの。

 結核菌の耐性を作らせないためには、
(1)薬をきちんと服用する(飲んだり飲まなかったりは最悪)
(2)十分強い薬を複数組み合わせて治療する。

 不幸にもこの原則が活かされず薬剤耐久性になった人から出た結核菌で感染した人は、発病した時から耐性なので治療はかなり厄介と言われる。大切なことは、耐性を作らせないために患者と医師が連係プレーをとることだという。

 結核の初期症状は咳、痰、発熱など、風邪と似ている。長年、結核治療に携わる医師は、こうアドバイスする。
「結核の対策として、感染予防・発症予防のどちらにも共通する重要なことは、体の免疫力を高めておくことです。これを高めるには、規則正しい生活と栄養バランスのよい食事、十分な睡眠、適度な運動などが必要不可欠です。普段から、夜更かしなどの不規則な生活や喫煙をせずに、健康的な生活を心掛けましょう」

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