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創業の地から撤退を決断した大塚家具“お家騒動”から3年の崖っぷち

 2015年、経営権を巡る父娘の争いが大きな話題となった大塚家具が、創業の地である埼玉県春日部市にある大型店『春日部ショールーム』を5月末で閉店することを発表した。

 創業者で父の大塚勝久氏(当時会長)から経営権を奪取し、一躍脚光を浴びた大塚久美子社長だが、最近では経営不振により瀬戸際に追い込まれている。
 「春日部の店舗は、1969年に勝久氏が大塚家具の前身である桐箪笥販売店の『大塚家具センター』を立ち上げた場所で、同社の聖地とも言える。そのため、店舗面積1万772平方メートルという広大な面積を確保し、有明の本社ショールームに次ぐ大型店としてシンボル的存在を誇ってきた。それを閉鎖するというのだから、かなり追い詰められた状況なのではともっぱらです」(業界関係者)

 確かに同社の決算を見る限り、その厳しさが窺い知れる。'17年12月期決算は売上高410億円で、対前期比11.3%減、営業損失も51億円で、赤字幅は前年の45億円から拡大。2年連続の最終赤字となった。
 「大塚家具は3年前、預金115億円が話題になるほど、無借金経営と豊富な現金を保有することで知られた超優良企業でした。しかし、久美子氏が経営権を握ってから、その現金を次々に使い、'17年末には18億円まで激減。有価証券も71億円から27億円にまで減った。その原因は、やはり売り上げの減。新宿や銀座など都内の繁華街店舗はそれなりに順調だが、郊外の大型店での販売が低迷し、足を引っ張っている。春日部は潰すが、創業地の撤退は客層心理に影を落とし、経営に決してプラスにはならないのではないか」(経営コンサルタント)

 大塚家具はまだまだ広大な店舗を要しているため、その賃料も経営を圧迫している。そこで昨年からは、その賃借料の圧縮や資金繰りを積極的に進めてきた。
 「その最大の対策の一つが、貸し会議室大手のTKP社との資本・業務提携。TKP社は、大塚家具の発行株129万株6.82%を10.5億円で取得、第3位の株主となった。大塚家具は店舗内の一部をTKPに貸し、会議室や宿泊施設として運営。さらに有明本社ショールームを含め、売り場面積を圧縮する計画もあるという。また、複数の金融機関との契約で50億円を上限とした融資枠を確保して、その代わりにすべての在庫商品など141億円を担保に差し入れたのです」(経済誌記者)

 こうした、なりふり構わずの努力もあって、大塚家具は5月公表の'18年12月期第一四半期(1〜3月)での黒字が見込まれるという。
 「しかし、それも一時的な黒字という見方は消えない。というのも、'18年の1〜2月の既存店売上高は、前年同月比で10%前後のマイナスで、賃借料や人件費のコスト削減の効果を考慮しても、黒字化のハードルは依然として高い。そのため3月末、有明で開かれた株主総会には100人前後の株主が出席したが、キャッシュが18億円にまで減っているのに、1株40円もの高配当をどこから捻出するのだという疑問の声も出たのです」(株主関係者)

 大塚家具は久美子氏に経営権が移った当初、“3年間1株80円”を約束し人気を博した。29年度は、さすがに80円は無理な状況となったが、それでも40円をキープする。経営難のいま、高配当に疑問が出る一方で、80円から一方的に大幅減配するのであれば、社長は退くべきとの声も上がる。
 「久美子氏ら経営陣は、今後は東京五輪に向けホテルの建設ラッシュにより宿泊施設向けの家具予約が急増するため、未来は明るいと胸を張る。ただし、それは売り上げ全体の10%に満たない。こうした先行き不安の中、株主の間からは、“こうなれば勝久氏が'15年に立ち上げた『匠大塚』と再び合併し、父と二人三脚の道に戻ってはどうか”という声まで出ているのです」(同)

 しかし、その匠大塚も、厳しい経営環境だという。高級家具に特化する匠大塚は、'16年に春日部と東京・日本橋に開業した。
 「春日部店は久美子氏の春日部ショールームに対抗するように、西武百貨店跡地を改装して東京ドームの2倍の売り場面積を確保、攻めの姿勢を見せ“春日部父娘戦争”と話題になった。しかし、業績は非公表だが、苦しい状況が続いているという」(業界関係者)

 それに追い打ちをかけるように、このほど勝久氏が大塚家具の社長時代から経営を支えてきた大番頭2人が別企業に移籍したという話もある。
 「父は富裕層の客から見放され、娘は目標だった『ニトリ』の背中が遠くかすむ状況。大塚家具自体、このままいけば早晩経営に行き詰まり、国内外のファンド傘下に入る可能性さえある」(同)

 どこまで持ちこたえられるか。

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