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【不朽の名作】とにかくコロナビールのイメージが強い柴田恭兵主演作「べっぴんの町」

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 今回は、1989年の神戸を舞台にしたサスペンスアクションドラマ『べっぴんの町』を紹介する。本作の主演は柴田恭兵だが、役名が一切出てこないただのオプ(私立探偵)となっている。一応元少年院教官という設定があるが、その他は一切謎だ。原作である、軒上泊著の同名小説から主人公は名無しであり、その設定を活かした形だ。

 作品のジャンルとしてはハードボイルド系のサスペンスアクションドラマだが、当時『あぶない刑事』などで、人気を博していた柴田のファン向けムービー的な要素も非常に強い。ちなみに監督は原隆仁、脚本も柏原寛司であぶない刑事シリーズと同じだ。

 また、シブがき隊を解散して間もない本木雅弘も、主人公の元少年院の教え子としてサポート役で登場しており、主にこの2人のスタイリッシュなやりとりを楽しむ作品と言ってもいいほどだ。なぜか、ボクシングのスパーリングをした後、2人でシャワーを浴びるシーンなども用意されており、その場面での半裸のカットは当時のファンにとって、かなりのサービスシーンだったのではないだろうか。

 ある意味アイドルムービーのような内容なのが、この作品の大きな特徴だ。同作の主人公はあぶない刑事で柴田が演じているユージのような三枚目ポジションではなく、どちらかというとタカのような二枚目キャラだ。当時の人気作で演じたキャラとのギャップが非常に良く活きている。まあ、今現在観ると柴田の演じた作品には二枚目キャラも多いので、さほど新鮮には映らないかもしれないが…。

 内容も主人公のキャラに合わせてなのか、強烈な暴力シーンなどは控えめにした、非常に淡々とした印象。話の流れは、神戸の町を駆け回り、家出少女を捜索している途中に、大型犯罪に巻き込まれるという流れだが、原監督だからと、派手な立ち回りや爆発込みのカーチェイスがあるかと期待していると肩透かしをくらう。タイトル通り、神戸で探索をしていると、シーサイドクラブのオーナー・田村亜紀子(田中美佐子)を始め、数々の“べっぴん”な女性に会うが、そういったシーンでも主人公は下ネタギリギリのキザなセリフを吐く訳でもなく、かなり模範的なモラルに則ったセリフを話す。前記したように暴力シーンも抑え気味なので、そういった意味では、ハードボイルド作品かというとちょっと疑問符がつきそうだ。

 どちらかというと、ハードボイルドというよりは、主人公が頭と足を使って事件の真相に近づいていくので、2時間サスペンスドラマなどにストーリーの流れとしては近いだろう。が、一応ハードボイルド路線も捨てきっていないので、唐突に酒場での格闘シーンや、本編にはさほど関係も深くない、誘拐強姦事件の解決などを挟むので、話が飛び飛びになりがちなのが難点だ。オチが一応どんでん返しのようになっているのだが、それほど印象に残らない。注意してシーンを追わないと「え、終わり?」と感じてしまうほどあっさりしている。この作品の10年後くらいに問題化した、援助交際にスポットを当てている点はそれなりに斬新な内容ではあるが。派手な印象のある80年代アクション作品の中ではかなり穏やかな部類だ。他には阪神・淡路大震災以前の神戸の町並みを確認できるという点で、この作品は今となっては貴重かもしれない。

 なお、作中に登場し、主人公が愛飲している「コロナ・エキストラ」ビールの宣伝映画としても、この作品は非常によく出来ている。プロダクトプレイスメント(劇中広告)なのかなこれ? 主人公は自宅でも事務所でもバーでも、コロナにライムを入れて飲む。その姿がかなり印象に残る。今でこそ、洒落たカフェや飲み屋には必ずある、海外ビールの代表格のひとつで珍しくもなんともないが、バブル時代の当時、ちょっと違う感を出すにはちょうどいい飲み物だったのかもしれない。酒が映画の雰囲気作りに大きな影響を及ぼした作品として、ジョニー・デップ主演の『フロム・ヘル』があるが、この作品でも同じく、作品の雰囲気作りにひと役かっている。

 『フロム・ヘル』は19世紀後半の切り裂きジャックにおびえる、ロンドンの怪しげな空気を高めるために、アヘンと西ヨーロッパでは20世紀初頭に禁止酒となったアブサンが効果的に使われていた。同作では、主人公のハードボイルド作品らしからぬ、爽やかな印象を出すために、普通ならばバーボンやらスコッチを飲むカットで、コロナが上手い使われ方をしている。コロナはいかにもなビールという感じの味ではなく、さらっとしたビールなので、主人公の性格付けをするにはちょうど良い酒なのだ。

 内容としては、所々物足りない部分もあるが、それでもコロナの演出や、役者の魅力を見せる作品としては、かなり良い部類ではないだろうか。主人公のコートのカラーとデザインが、時々バスローブのように見えてしまうのは、ちょっと変な感じだが…。80年代特有の、変にスレた、今となってなってはダサく思われてしまうような空気感やセリフ回しも、ハマれば楽しいかもしれない。

(斎藤雅道=毎週土曜日に掲載)

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