「普通、大雨は『面的』に発生するが、地形とか気圧の条件が揃うと『帯状』の降水帯が発生する。この時期の九州地方には梅雨前線が停滞しがちです。その結果、高気圧の縁を回る風の流れに沿って東シナ海から大量の水蒸気が流れ込み、山地とぶつかって積乱雲が発生するわけです」(防災ジャーナリスト・渡辺実氏)
一つ一つの積乱雲は上空の風に押し流されて移動するが、上昇気流が持続すれば、新たな積乱雲が同じ場所で次々に発生し、とてつもない豪雨が降り続くのだ。
「東南アジアのスコールも、豪雨が突然、降り出しますが、すぐに積乱雲が移動してしまうため、最近の日本のような惨事にはなりません。とはいえ、累積雨量が1000ミリを超えるほどの雨が日本で降り続く背景には、世界的に進んでいる温暖化の影響もあると思われます」(同)
梅雨が明けても油断はできない。台風に伴って発生する「線状降水帯」もあるからだ。
「昨年8月に発生した台風20号の場合、中心から数百キロも離れている関東に『線状降水帯』が出現しました。台風に向かって吹き込む南からの湿った風に沿う形で雨雲が発達し、神奈川県西部から東京都、埼玉県を通って、関東北部に達したほどです。『線状降水帯』という言葉自体は以前からありますが、最近は増えている印象ですね」(サイエンスライター)
こうした「線状降水帯」による被害で最も恐ろしいのは土石流の発生だが、とくに九州地方は注意が必要だという。
「鹿児島県は火山堆積物に覆われ、地質が軟弱なところが多いので注意すべきです。とりわけ山間部の斜面の表層部分が崩壊する現象が、多発的に起きる危険性があります」(渡辺氏)
すでに気候変動が起こっているとみられる現代の日本に住んでいる限り、こうした豪雨被害からは逃れられなくなっている。くれぐれも備えを万全に。